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「ビニール傘」

こんなに不遇なものはあるだろうか。
そして、私ほどビニール傘に不遇な気持ちを抱かせている人はいるのだろうか。

私はうっかりミスが多く、その中でも忘れ物が特に多い。
ウケ狙いでもなんでもなく、小学校ではランドセルを持っていくのを忘れたことも、持って帰るのを忘れたこともあるという貴重な実績を解除している。
そんな私は、天気予報を確認したとしても傘を持って家を出ることが稀である。多少の雨の場合は濡れて帰ってもいいと思っているのだが、タイプの女の子とのディナーの予定が急遽入ったり、帰り道にダンボールに捨てられてしまった子犬を見つけてしまうかもしれない。そうした場合、いい男ではない僕は水が滴ると不男がバレてしまうし、会社の寮に住んでいて子犬を持って帰れないにしても子犬に傘をさしてあげられない。
だから私は傘を買う。

コンビニで買う傘は、毎回思っているよりも少し高い。
しかし、その日はとても輝いて見える。
私にとってのロトの剣。
これさえ持っていれば、タイプの女の子から「かっこいいわ。。。」子犬からも「かっこいいわん。。。」と思われること必死だ。

しかし、実際はそのようなイベントが起こることがないので、慣れた足取りで帰宅する。
ガスメーターを開くと、かつてロトの剣だったビニール傘たちと目が合う。
「いつか使ってやるからな。」
そう思いながらロトの剣をガスメーターに格納する。

購入日はすごく重宝されるのに、気がつくとただの骨つきビニール。
味があるうちだけ寵愛を受けるガム。とは少し違うかもしれないが、かわいそうに感じる。
そして、なんとかしてあげたいと思う気持ちもあるので、たまにビニール傘を持って家を出ることもある。

そういう日に限って外でなくしてしまうのだ。

現在、ビニール傘が7本と、本命のしっかりとした傘が1本。
ビニール傘が減ることは当分ない気がする。
ビニール傘に好かれているように映るが、おそらく嫌われているだろう。
いつ無くされるかわからない。
いつまでも本命になれない。
手に入れられた一瞬だけ寵愛を受ける。

こんな扱いを受けたら人なら壊れてしまう。(ポツポツ見かけますが、、、近くにいる方がケアしてあげましょうね。)
でもビニール傘は使い古されないと壊れもしないし、仮に壊れても修理なんてされない。新しいものと交換するだけ。

あぁ、ビニール傘を生み出した人は悪魔のような人だ。。。
(ダイナマイトと同じく使い手が悪いですよ。)

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