残る2割

最近、毎週金曜日の夜に友達に電話をするのが習慣になってきている。大体、僕のことを知っている人は「そんなに忙しくて大丈夫なの?」とみんな口を揃えて言う。けれど、僕はみんなが思っているより今のところ平気だし、自分で思うよりもおそらく僕のメンタルはタフなのかなと思う。

思い出話に花を咲かせたり、近況を報告しあったりして、あっという間に時間は過ぎる。少し前まで日常だったこの時間は、気がつけば新しい日常に覆い隠されてしまっていて、どうしたって戻らない時間を惜しむような気持ちと、これから先、友達からどんな話を聞けるだろうかという気持ちの間くらいをいつも彷徨う。

電話を終えたあと、1週間の疲れを引き摺って、ベッドの上に横になって、ふと、不思議だなあと思う。さっき、電話した友達と昔何を話したかなんて、2割覚えていればいい方なのに、今もこうして連絡を取り合っている。どうせ、今日話したことだって明日になればまた忘れているのに。

大学の隣の公園で夜通し飲み明かした留学前の夜、何気ない授業の間に過ごした時間、一緒に図書館で勉強したときのこと、繋ぎ止めていた場所を離れた日のこと。思い出なんてたくさんあって、絵としてそれは思い浮かんでくるけれど、それは音のない世界で、交わした言葉なんてほとんど忘れてしまっている。

それでも、また懲りずに僕らは忙しい毎日を縫うようにして連絡を取ったり、会いに行ってはまた忘れてを繰り返すのだと思う。それはきっと、消える8割のためにではなくて、残る2割のために。僕は、記憶に残った僅かな言葉を大切にしたいのだと思う。

オリンピックのある週、4連休を使って久しぶりに友人と静岡を旅行する。消えてしまうからこそ大切なものを、目一杯楽しめる時間を、前よりも大切にできる気がしている。

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