ダメ親でも、子供にできること

A、B、C、D、E 5人の学歴

 Aさんは、中学3年間不登校。高校は通信制を卒業した。通信制だがホームステイ制度があり2週間バンクーバーに行った。卒業後、やっぱ日本は馴染めないといってまた単身バンクーバーに戻った。語学学校に通いながら現地でバイトをして1年間を過ごした。帰国直後、新型コロナウイルスが蔓延し、海外に出れなくなった。日本にいる間、海外で就職するには大学卒業の学歴があった方がいいと、バイトをしながら通信制の大学の授業を受けている。
 Bくんは、確実に合格する安全圏内の公立高校に入り、現役で私立の大学に進学した。高校の成績は、3年間、学年で一桁を維持していた。大学は来年卒業予定。高校の教師を目指している。
 Cさんは、模試では毎回合格圏外の高校にガッツで合格した。だが学力で勝負するつもりはないようだ。「なんでもいいから、せめて大卒ぐらいの学歴はあった方がいい」というこれまでの世間の定説は、この先無意味になると踏んで進学しなかった。今年の4月から地元の企業で働き始める。
 Dさんは、高卒で子供の教育には一切関心がない。3者面談でも、進路について何も話せない。「子供はただ健康に生きていってくれればいい」と考える昭和初期のお母さんのような人だ。
 Eは、学力が低下した優等生がたまに自殺する地方のスパルタ進学校から現役で二流大学に入り、最終学歴は修士課程だ。大学入試本番中にノイローゼになり、白目を向きながら受験した苦い経験を持つ。

5人の関係 ダメ親(D、E)とその子供(A、B、C)

 A、B、Cの3人は、DとEの間に生まれた子供だ。あえてA、B、C、D、Eとしたのは、学歴に関するそれぞれの状況と価値観がバラバラであることを強調するためだ。
 A、B、Cの進路がバラバラなのは、親が子供の特性を見極めた結果ではない。ただ何もできなかっただけだ。
 30年前の親なら、3人への対応は違っていたであろう。
Aさん=力ずくでも学校に連れて行った。
Bくん=1点でも偏差値の高い高校〜大学に挑戦させた。
Cさん=どこでもいいから大学を受験させた。
 これをやってはいけない。ダメ親でもそれだけは分かっていた。でもどうしていいか分からなかった。もともとDは、教育について何も意見がない。その無関心さにEは、いつも腹を立てていた。一方Eも仕事ばかりで、Aの不登校を中学三年の夏まで知らなかった。お互い絵に描いたようなダメ親だ。

子育て期間を終えたダメ親がやりたいこと。

 今考えると母親Dは、これで良かったと思う。30年前の価値観で自分の学歴コンプレックスを子供に押し付けていたら相当やばいことになっていただろう。それにEは、受験地獄から開放されてもノイローゼを隠しながら完治するのに10年以上を要した。子供にこんな経験をさせたくない。
 「親が極限まで馬鹿だと、逆に子供は危機感を感じて自立する」というのは本当かもしれない。A、B、C、みな自分なりに何かに挑戦していることは、親として本当に嬉しい。子供に何のアドバンテージも与えられなかったが、ダメ親の被害は、最小限に抑えられたかもしれない。
 どんなに優秀な人でも、どんなに自分に合った道を選んでも、人はどこかで必ずコケる。これぐらいは、ダメ親でも分かる。そのときに「役に立てるか?」が大切だ。いや違う。「頼ってもらえるか?」の方が心配だ。そう考えると反省している暇はない。
 子どもたちが人生で大ゴケしたときに頼ってもらえる親としての3つの条件を考えてみた。
1 場所=帰ってこれる家(家庭)
2 人=受け入れられる夫婦関係
3 資金=起き上がるための燃料
 子育て期間は、終わった。しかし親としてやりたいことは、まだまだ残っている。「子育てが終わったぁ」と一段落している場合じゃない。
(以上フィクションをもとに、色々考えてみました)

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