街 2

学校に着くとちょうど休み時間だった。

ガラガラっと教室の戸をあけると数種類の香水が混ざりデパートの化粧品売り場みたいな匂いがした。

「クセーな、窓開けろ!本当センスねぇわ。」そういうと戸をあけるまでの穏やかな教室から一変、空気が凍りつく中窓際の生徒が必死に窓を開ける。

「久しぶりに来たかと思えばあれてるねぇ(笑)」そういったのは大岳。

「よくこんな生ごみくせーとこにいれんな・・・くさいわー」とわざとらしく鼻をつまんでやった。

「ホント最低!」っと小さな声で精一杯の反撃をしながら数名の女子生徒が教室を出て行く。

「お前・・・」そう言いかけたのはチャラ男の翔、片手で思いっきり首を絞めた。

「てめぇはいつから俺に”お前”呼ばわりできるほど偉くなったんだ?喉が潰れる前に説明してもらおうか?聞き間違いだといいんだけどな。」

「ご、ご、めん・・・」

「ん?まさか・・」

「ご・め・・・んな・さ・い・・・」手を離してやると涙目で咳き込んでいる。

「絶好調じゃん!チャラ眼鏡も調子乗るからや。」そういって床でゲホゲホしている翔の髪を掴んでどかす。

「駿!久しぶり!俺より早いなんて珍しいじゃん!」そう言いながら拳を軽く合わせる。

「今日は一時間目が教頭だったから・・・」

「アイツか・・・こないだ危なく停学くらうとこだったもんな。」駿は超文系だから数学は苦手だった、でもこないだの小テストで95点でクラストップになると真っ先にカンニングを疑われた。

結局何もでてくるわけもなくマグレで点とって調子乗るなと言われて殴りかかりそうになったが、ちょうど俺が登校してきて間一髪「クソ、ハゲ!まずは謝罪しろ、この精神ごみ教師が・・・」と言い切る前に俺が数人の教師に取り押さえられてる間に駿の拳は力が抜けていたので事なきを得た。

そのおかげで5連休(3日間の自宅謹慎+休日)でひさしぶりの学校になったわけだ。

「ごめん、俺のせいでいらない謹慎になっちゃって・・・」

「今日、昼飯持ってきてねぇからオムライスでチャラな!」

「ありがとう、ちゃんと食後にドリップしたコーヒーも付けるから(笑)」

駿は人当たりが良く、一部の教師からめちゃくちゃ可愛がられていたから進路指導室のドリップコーヒーを飲み放題だった。

そんなこんなしているうちにチャイムが鳴る・・・

ガラガラ・・・うわ、担任。34歳で中谷美紀に似ていて子供を3人産んでる美魔女。

俺が入学した時は俺みたいな生徒が初体験だったようで泣いてばかりいたんだけど・・・笑顔で一番後ろの俺の席にまっすぐ来る。

「今日はいつもより胸元開けちゃって一段と美人に磨きがかかってるね♡」

「・・・」無言でビシャっ!と教科書で顔面を引っぱたく。

やっぱり涙を流していた・・・

「ごめんって。」素直に謝った。

「本当に・・・退学に・・・な、なっちゃうからね。みんなで卒業するって約束したよね・・・あれは教頭先生が悪かったけど、もっと別のやり方があったでしょう・・・」こういうとこ可愛いんだよな(笑)

「そうだな。まあ駿が殴ってたら下手すら殺してたかもしんねぇべ。結果オーライってことで!」駿は198cmのラガーマン、まともに喧嘩したらかなうわけがない。

「全然笑えない・・・」まだへそを曲げている。

「コレはお詫び!」朝コンビニでかった260円の高級プリンを渡す。

「次謹慎になったら辞書で殴るからね♡」そう言うと笑顔でプリンを持って教壇に戻っていった。

ブー、ブー、ブー・・・左のポケットのケータイが鳴っている。

右のポケットの携帯は普通にプライベート、左はちょっと前の彼女と連絡用に買ったんだけど、別れてからはトラぶったやつがかけて来る緊急連絡先になっていた。

「由紀ちゃん、ちょっとうんこしてくるわ!すげーでけーのでっから長くなるから授業進めていいから!」

「こら!由紀ちゃんじゃなくて由紀先生でしょう!あとうんことか言わない!」

教室をでて屋上に上がる。

「はい。」

「わりーな、ちょっと妹がトラぶった。」鎌田だ。

「どうした?」

「昨日の夜中に親と喧嘩して家飛び出したんだ。」

「それはいつものことだろ?」

「そうなんだけど、なんやかんやあって直江組の若いチンピラのアパートにいるらしいんだ。さすがに妹をヤクザの女にはしたくない・・・」

「わかった。そいつの名前、特徴を言え。とりあえず場所だけはすぐに特定すっから。」名前は井荻 大紀、職業はスカウト、短髪の金髪で、左肩に過去の女の名前を彫ってるサイコパス。

「動いたほうがいいか?」

「いや、情報だけでいい。自分の身内のケツは自分で拭くから・・・」

声は震えていた・・・腐っても相手はヤクザだもんな。

「わかった。ちょっと待て。」

電話を切ると同時にミクシィのヤリ捨て被害の掲示板を見る。

BINGO!並木町のパステルハウス305号室に住んでるらしい。

すぐに鎌田に連絡した。「ありがとう・・・」そういうと電話は切れた。

今日はついてねぇな・・・別の学校の近藤に電話をかける。

「ワリー原チャ貸して。」

「セッターワンカートン。」

「わかった。何処にある?」

「目の前のコンビニに5分後。」

「わかった」

鎌田は昔からの連れだ。すぐブスと付き合うし、金は持ってねーし、見栄っ張りだし、すぐ人のタバコをあてにするけどイイやつだった。

「アイツがいなくなったら朝のタクシーがなくなっちまうからな。」

コンビニでセッター1カートンとコーヒーと爆竹セットと煙玉を買った。

時間ピッタリにきた近藤に報酬を渡す。

「コーヒーはチップだ」

「うむ、まいど!」

ここからなら飛ばせば15分もあれば着く。

とりあえず妹さえなんとかすりゃいいだけだからな・・・

震える手でタバコに火をつける・・・大丈夫だ。そう自分に言い聞かす。

最悪記憶飛ばすくらいボコボコにすりゃいい。

Dioに跨って目的地へ向かう。


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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