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当初は全く注目していなかったのに…

フォーミュラeを見ていて

 何の話かと言えば、先日2024年3月30日に東京のお台場エリアで、日本初開催となった、フォーミュラeである。
 これまでに、お台場では、駐車場を閉鎖して開催されたドリフト競技のD1グランプリが行われたことはあるが、今回は、誰もが普通に通行できる"公道"の一部を完全に封鎖して行われたこと、それが東京であることがポイントであるは、明白である。

 しかし、今回注目するのは、コースではなく、競技車両、つまり、マシーンに注力してみようと思う。と、張り切って書いてみたものの、実は基本的に競技車両への知識は薄いのである。そんな薄い知識の中、何を注目したのかを注していただけると、幸いである。


ブレーキに秘密あり

 前置きはこれくらいにして、本題に入ろう。私が注目したのは、ブレーキシステムである。おいおい、ブレーキかよ、つまらないなぁと感じたかも知れませんが、実はこれが驚きなんですよ。
 私たちが所有する多くの車両には、"メカニカルなブレーキ"が付いている。簡単にいえば、ブレーキペダルを踏むと、マスターバックからブレーキフルードに伝わって、キャリパーからブレーキパッド、そして、ローターに押さえつけられ、(それがタイヤに伝わり、路面とタイヤ間に発生した摩擦抵抗により停止)その摩擦により止まるというのが、一連の流れである。

ニッサン アリアニスモのタイヤ周り

 対する、回生ブレーキとは、どういうものか。
これまた簡単に言えば、駆動用のモーターを発電機として使うと同時にブレーキを掛けるというものであるが、決してモーターを逆回転している訳では
ない。もっとも、ブレーキを掛けた状態だと、制動と発電が同時に行われるため、走行用バッテリーに充電が可能となる。つまり、上手にブレーキを掛けると、燃費向上とエネルギー回収ができるのである。なお、この技術自体は、トヨタプリウスをはじめとするハイブリッドカーや、バッテリーEVのニッサンリーフにもすでに搭載されている装備であり、それ自体は昨日今日出てきたものではない。

 そして、プリウスやリーフを始めとする市販車に搭載されている回生ブレーキの制動力については、通常ブレーキと比較した場合、通常のブレーキの方が強く効く。よって、急制動時や停車寸前は回生ブレーキではなく通常のブレーキで制動する。(メーカーや車種によって制御や考え方の違いはある)
それを踏まえると(ブレーキだけにw)、回生ブレーキはそこまで強い制動が出せないということはご理解いただけたと思う。

フォーミュラeのブレーキとは

 で、今回のテーマであるフォーミュラeのブレーキである。
マシーンのリアタイヤをよーく見ると、通常のブレーキが見当たらないことに気がつくだろう。そう、これこそが回生ブレーキである。正確には、駆動用モーターに内蔵されているというか、機能として盛り込んである。
 フロントは、通常ブレーキはあるものの、回生ブレーキが搭載されている。前後回生ブレーキで制動を掛けるのである。
 どういうことか、言うと、四輪とも回生ブレーキだけで制動をしているとうことであり、ブレーキングのシステムがこれまでのレースとは、大きくことなるということが言いたいのである。

よ〜くみると、通常あるべきものがありませんよね?

 そして、このメリットとして、”通常のブレーキ”のように、ブレーキング時にブレストが出ない上に、これまで”無駄なもの”として大気中に放出されていた、熱エネルギーを回収して、充電に活用することができる。前者の利点は、街中でレースを開催できる理由の一つでもあり、環境配慮の点からも注目ポイントだろう。
 そして、これまでのレースにはなかった点として、回生ブレーキによる回生エネルギーからの電池残量回復だろう。これこそが電動車最大のメリットであると、私は思えるのである。走行中に燃料が回復するなんていうのは、これまでには、ありあえないのである。もっとも、回復すると言っても、レースにおいては微々たるものかもしれないが、レース戦略上の電池マネジメントにおいても、ブレーキングによる回復分も見込んでいることだろう。

 レースをテレビや直接ご覧になられた方は、お分かりかと思うが、レース自体は、”100km/hそこそこではない”のである。(当たり前か。)
 今回のコースでのトップスピード280km/hくらいだったと思う。先にも話をしたように、効きが弱いとされている回生ブレーキだけでレースを行うのは??と疑問に感じることだろう。また、マシーンの重量は1トンちょっと。大きいボディサイズに対して軽量なので、市販車よりも重量的には余裕があるのであるから、そのような速度からでも、5〜60km/hまで減速できるのだろう。その点もそこまで強く効く回生ブレーキは市販車にはないので、まさに実用できるように、実験をし、効果を検証しているのである。

レース活動の意義とユーザーへの還元

 ブレーキだけでなく、あらゆる部品や素材などなど、レース活動を通じて、各国の各メーカーは実験・検証を極限で繰り返しているのである。その姿形は市販の乗用車とは大きく違えど、極限の状態を最高峰のドライバーとエンジニアの手によって行われ、その後、我々が普段乗る、市販車にフィードバックされる。よって、これからのブレーキシステムは、油圧を伴わなず、ローターやキャリパー、パッドがないクルマが発売するかもしれないのであることを示唆している。もっとも、それが明日すぐに発売されるという訳ではないの致し方ない。

ニッサンハイパーフォースのようなのクルマが発売されるための布石が、レース活動の一環でもある。

 なので、単にスピードだけを争っているのはないということは、知っていただきたい。もちろん、速い方がいいのは、レースの世界においては間違いないが、それだけではなく、そのレースで戦っているその先に何があって、ユーザにどのようなメリットが生まれるのか。そのあたりを注目して観戦なり、見て見ると、車に対する考え方も変わってくるのではなかろうか。

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