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論文探しの方法

最近新しい研究を始めたので論文をいろいろと漁ってる.
その上でたまたま発掘中に同僚の先生から,「論文の探し方って大学でちゃんと教わらないよね」って話があり「確かに…」ってなったので,関連論文の探し方について雑記的に書いてみようと思う.これからレポートや論文に取り組む学生さんの参考にでもなれば幸い.

いきなりだけど注意書き!
※ここで紹介するのはあくまで「今井がこれまでやってきた方法」であり,これがベストでもスタンダードでもありません.ネットで探せば他の先生が同じようなテーマで書かれているし,指導教官や担任の先生のやり方もあるでしょう.いろんなものを参考にしつつ,自分が一番やりやすい方法を探してもらえたらいいと思う.

1. 研究・レポートのテーマを一番包括的に表すキーワードを決める
ココでスタートダッシュを決められるかどうかがその後の検索効率に大きく影響したりする.きちんと考えて決めましょう.あまり包括的過ぎるとあとあと検索結果が大変なことになるけど,狭めすぎると大事な論文を見逃しかねない.例えば今井の場合,新しく発見された恐竜の卵について調べたかったら…
・Dinosaur Egg Eggshell
あたりで調べるかもしれないけど,これだとGoogle Scholarで4000件以上もヒットして参考になる文献が見つけにくいので,分類群で絞り込むことが多い.例えば新しい卵化石が鳥類のものっぽかったら
・Dinosaur Egg Eggshell Avian

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これで1800件くらい.もちろんテーマによって先行研究の多い少ないはあるから,何件あったらちょうどよいって基準は残念ながら無い.

2. Google Scholarで検索検索
エンジンは色々あるけど,Google Scholarだと横断的に調べられるからとりあえずコレ使ってる.決めたキーワードを入れた?先行研究が多くて4000件ヒットした?OK.あとは頑張って探してね!

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ウソですごめんなさい.そんなんでは何のヘルプにもならない.ココから先は本当に人それぞれのやり方だけど,今井はなにするかというと,
「少し古めの論文(10~20年くらい?)かつ,自身の研究テーマとある程度一致していて,総論的な内容で,被引用数が多いもの」(以下,キー論文)を探す.

コメント 2020-09-02 133420

この例だとMikhailov(1991)っていう卵化石の記載には欠かせないキー論文がちょうど上位にヒットしてきた.被引用数(つまりこの論文を引用した論文の件数)はココでは赤線で示してある"Cited by”ってところで確認できる.

3. キー論文を引用している論文をくまなくチェック
数百件に絞れたらしめたもの.あとはひたすら論文の内容をタイトルと要旨で確認して研究に関連したものをダウンロードするだけ.ここから先は近道の無い根気の作業になる.OK.頑張って読んでね!

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4. 効率よく関連文献を読み込む
え?何百件もチェックして読むのしんどい?そこは頑張ろうよー….
じゃあ論文の目の通し方について.
A. 関連論文のタイトルと要旨は目を通す.
B. 自身の研究に特によく似てるテーマや内容のものは全部読む
C. 関連論文と言っても,「扱う分類群が関連している」「時代や地域が近い」「研究手法が似ている」など全体が必要ないものは該当部分だけ読む
ちなみに,上記の例外としてちゃんと読んでいてほしいのが,「扱っている標本の原記載や産地,地層」といった基礎データ.恐竜を始めとする古生物がテーマの研究なら,自身の標本に関する知識は絶対に必要だから.ある恐竜の神経系の分布まできちんと調べたのに,見つかった地質時代や古地理,当時その恐竜がどんな環境で暮らしていたか,なんかがきちんと答えられないのは非常にもったいないので.

5. その他の研究の参考になりそうな文献を探す
研究テーマに直接かかわりなくっても,地層のことや研究手法について参考文献が欲しいことがあると思う.そんなときも,キーワードを適当なものに変更して1~3を行えばだいたいヒットする.

6. 最後に
慣れてないと論文読むのは大変です.そもそも母国語じゃないし,単調だし,数は多いし,おまけにゼミの発表日は刻一刻と迫ってくる.
心折れてもう適当でいいやとなるときもあるかもしれない.
でも,きちんと関連文献を読み込むってことは,単純に知識をつける以上の意味があります.
何より,自身が書くであろう文章の完成系が見えてくる.
はっきり言って,よほど先進的な研究でなければ,似たような先行研究はどこかにある.その形式を真似することは何も悪いことじゃない.「研究結果の文章なんて自分でどう書いたらいいかわからない!」などと悩むくらいなら先行研究を参考にまずは下書きすればいいのです(もちろん盗用はダメゼッタイ).そういう「最も参考になる関連文献」を探す意味でも,論文は探しておきましょう.

マジメで長い文章になってしまった.
ここまで読んでくれてありがとうございます.参考になれば.
頑張って読んでくれた,これから研究を頑張るアナタには癒しを送ります.

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