オギヤマタクヤ | エッセイ・短編小説作家

物書きです。短編小説、エッセイを書いています。

オギヤマタクヤ | エッセイ・短編小説作家

物書きです。短編小説、エッセイを書いています。

マガジン

最近の記事

エッセイ:たくさんある水が怖い。

僕は昔から、「たくさんある水」が怖い。 「たくさんある水」が何かと聞かれれば、明確な答えは出しずらく、とにかく大量にある水が怖いのだ。 一番わかりやすい例は「海」だ。 海辺に行って砂浜を歩くのは僕も好きだが、海を泳ぐことは絶対にしない。そこには、子供の頃のトラウマが関わっているのかもしれない。 僕がまだ小さかった頃、家族でハワイに旅行していた。その時僕は大きな浮き輪の上に乗って空を見上げて、プカプカと浮かんでいた。しかし気がつくと、僕はいつの間にか沖の方まで流されていた

    • エッセイ:豆腐にハマった27歳男性。

      数ヶ月前から、豆腐にハマっている。 書いてみて思ったのだが、「豆腐にハマる」という言葉を使ったのは人生で初めてかもしれない。 「プラモデルにハマる」とか、「タピオカにハマる」とか、そういったものに『ハマる』のはまだ理解できる。ただ、その対象が「豆腐」となると、なんだか不思議な気持ちになる。 僕が豆腐にハマったのは今から4ヶ月ほど前のことだ。 当時、僕は風邪を引いていた。コロナではなかったのだが、熱が出るし、鼻水が出るし、とにかく体がだるい。ロクに動けないのでずっと部屋

      • 「自己啓発本」って意外と面白い。

        僕は「自己啓発本」が好きだ。 こんなことを言うと、まるで僕が「意識高い人」に見えてしまうかもしれない。毎朝6時からランニングと読書を欠かさず、仕事終わりには社会人セミナーに参加。週末は有名な起業家と一緒のバーベキューをして、Twitterでの情報発信を欠かさない…。 そんな人物に見えてしまったのなら、それは間違いだ。 いつも朝は自宅にいる2匹の猫に起こされて嫌々ベッドから起き上がるし、まともな運動はここ数年していない。夜は大抵お酒を飲みながらアマプラで映画鑑賞をする。そ

        • お気に入りの居酒屋を見つけたら、飲んだくれになってしまった。

          最近、家から15分ほど歩いた場所に安い居酒屋があるのに気がついた。 そこはまさに「大衆居酒屋」といった雰囲気で、かなり安くて通いやすい店だ。店内はいつもそれなりに混んでいて、主に大学生くらいの若者で賑わっている。その店の隅にはカウンター席もあって、そこにはいつも一人客がちらほら座っている。 その店はメニューがかなり豊富だ。焼き鳥、揚げ物、刺身、煮物、焼き魚、麺類などいろんな種類の料理が楽しめる。酒の種類もかなり多く、焼酎、日本酒、ビール、ワイン、サワー、ハイボール… など

        エッセイ:たくさんある水が怖い。

        マガジン

        • エッセイ集(オギヤマタクヤ)
          9本

        記事

          短編小説の文字数制限について考えたこと。

          僕は昔から趣味で小説を書いていた。「小説」と聞けば誰もが100ページを越えるくらいの長い物語を想像するだろう。僕も例外ではなく、僕にとっての「小説」はいつも「長編小説」のことだった。 これまで僕が読んできた小説も、全て100ページを超えるボリュームだったから、「小説とはそういうものだ」と思い込んでしまうのも無理はないだろう。 だがある時、「短編小説」というものに出会った。それは1万字前後で完結する物語がいくつか集められた文庫で、本屋で長編小説と間違えて買ってしまったものだ

          短編小説の文字数制限について考えたこと。

          図々しい猫

          近所の商店街には、よく野良猫が現れる。 最初に目撃したのは、僕が東京に引っ越してきた翌月のことだった。 まだ歩き慣れていないその商店街を歩いていた時、猫を見つけた。その猫がいたのは小さなオフィスビルの前だった。そこに我が物顔で寝転がっている。猫らしく丸くなって、なんだが心地良さそうにのんびりと過ごしていた。 白い毛に、所々灰色が混じった猫だ。その猫を見た時「こんな人通りの多い商店街じゃ落ち着かないだろうな」と率直に思った。その商店街は車こそ通らないが、通行人は数多く行き交

          AIに物語を書いてもらったら... 意外と面白くなった!!

          noteでAIを使って文章を書くことができるようになった。 キーワードを入力するだけでAIが自動で記事を書いてくれる機能のようだ。 今回、その機能が使えるようになったので、試しに使ってみることにした。 AIが「物語」を書ける!?僕が知っていたのは「AIが記事の見出しを考えてくれる」という程度だったのだが、実際にnoteで使えるAI機能を見てみると、驚くべき機能があった。 それが『童話を作る』という機能だ。 登場人物や話の流れを入力するだけで、物語を作ってくれる機能らしい

          AIに物語を書いてもらったら... 意外と面白くなった!!

          日常に潜む『虚無の時間』

          僕は日常の中に必ず『虚無の時間』があると思っている。 『虚無の時間』なんて仰々しく感じられてしまうけど、もう少しわかりやすい言い方をすれば『無駄な時間』ということだ。でも、大袈裟な言い方の方が面白いし、ここでは『虚無の時間』と言っておこう。 僕たちが生ている24時間の中には必ず『虚無の時間』があって、その間僕たちは何もできない。何もせずに時間が過ぎていくのだから、もはやそれは死んでいるのと一緒だ。 では、僕たちは寝ている時も何もできないわけだし、睡眠時間も虚無の時間なの

          Kindleでの個人出版についての備忘録

          個人的にKindleで本を出版することにした。 その本は僕がこのnoteで名乗っている名義とは別名義での出版になるのだが、こちらのnoteでKindle出版についてメモを残しておきたい。 Kindleなら個人で簡単に本を出版できる!!「Kindle(キンドル)」はAmazonが提供している電子書籍のプラットフォームだ。実際にKindleで電子書籍を買ったことがある人も多いだろう。 ものすごい数の書籍が並ぶKindleだが、その中には出版社などを通さずに個人で出版した本も

          Kindleでの個人出版についての備忘録

          毛まみれの毎日

          猫と暮らすようになってから、僕の毎日は毛まみれになった。 うちには2匹の猫がいるのだが、2匹ともとにかく元気だ。普段はのんびりと窓際やキャットタワーの上、お気に入りのベッドで寝ているのだが、ふとした瞬間に野生の本能が目覚めて突然走り出すことがある。1匹が走り出すと、それに釣られてもう1匹も走り出す。そのあとはもう、ドタバタ騒ぎだ。 お互いを狩りの獲物に見立てて乱闘を始めたり、一緒に家中をものすごい勢いで走り回ったりする。どちらもオスだから男としての本能が騒ぐのだろうか。そ

          エッセイ:危険なおじいさん

          数ヶ月前、僕がフードデリバリーの仕事をしていた時のことだ。 足立区の北の方まで配達をしている時、ある駅の前を通った。僕が軽快に自転車を走らせていると、少し前方に買い物帰りと思しき高齢の女性がいた。自転車のカゴに大根などの野菜を入れて、ハンドルに小さな買い物袋を下げている。それ自体は何の変哲もない、よくある昼下がりの光景だった。 しかしその数秒後、目を疑う光景が飛び込んできた。 かなり勢いをつけて走ってきた自転車が、その女性の自転車の前方に衝突したのだ。「ガーン」という大

          「400字詰め原稿用紙〇〇枚分」って古くないか?

          ある日生まれた小さな疑問タイトルの通り、ある日僕はこう思った。 「400字詰め原稿用紙〇〇枚分」って古くないか? それはちょうど僕は短編小説の文学賞に応募しようとしている時だったのだが、募集要項に「文字数:400字詰め原稿用紙30枚以下」との記載があった。 僕は最初、単純に「ああ、400字×30枚で、12,000文字ね」と思い、応募用の原稿の文字数を調整していた。 でもなんだかその周りくどい言い方が気になったので、調べてみることにした。 結論から言うと、『400字詰

          「400字詰め原稿用紙〇〇枚分」って古くないか?

          「ふるさと納税」は、新しい趣味との出会いの場だった。

          先日、初めて「ふるさと納税」というものをやってみた。 ご存知の方も多いだろうが、ふるさと納税は日本全国の様々な地域自治体に寄付ができる制度で、寄付した金額分だけ翌年支払う所得税や住民税が少なくなる。つまり、来年払う税金を今年払っておける制度と言うわけだ。しかも、寄付する自治体を自分で選べるから、自分の出身地や昔住んでいた町などに寄付をして地域を応援することもできる。 そして、このふるさと納税の最大のメリットが、寄付した自治体からもらえる「返礼品」だ。返礼品には、地元で採れ

          「ふるさと納税」は、新しい趣味との出会いの場だった。

          風呂上がりに前歯が吹っ飛んだ話。

          僕が社会人2年目の時の話だ。 当時僕はIT系の会社に勤めていて、いつも夜遅くまで仕事をしていた。その日も夜まで仕事をしていて、かなり疲れた状態で自宅に帰ってきた。当時の僕は仕事終わりにコンビニかスーパーで弁当を買って帰るのが日課になっていた。今思えばなんとも不健康極まりない習慣だ。 その日もいつもと同じようにスーパーに寄って、安売りになっていた弁当を手に取った。その時、見慣れた銀色の缶が僕の視界に入った。「ドライ」「生」「辛口」と書かれたその缶を見て、僕の喉が唸る。 きっ

          風呂上がりに前歯が吹っ飛んだ話。

          美味しいものが多すぎる。

          東京に集まる「美味しいもの」僕が東京に住んでから1年が経過した。以前から都内には何度も訪れていた僕だが、やはり住まなければ分からないこともある。僕にとってこの1年間は刺激的で、新鮮な毎日だった。 都内に住んでみて気付いたことはたくさんある。意外と住み心地が良いことだったり、地域によって街の雰囲気が全然違うことだったり、あまりにコンビニが多すぎることだったり、いろんなことに気がついた。 だが、僕が都内に住んで気付いたことの中で一番驚いたのは、「東京には美味しいものが多すぎる

          短編小説 『junk memory』

          その日の朝、目の前から差し込む明るい光に、僕は思わず目を細めました。明るさに目が慣れた頃、僕の前にはいつも通りピシッとスーツを着込んだ彼が座っていることに気が付きました。いつものようにシャツの袖をまくり上げ、そのまま背中を後ろにぐいっと伸ばす。そして、大きく息吸って、吐く。これは、彼が仕事を始める前の毎日のルーティンなのです。これを見る度に、僕も今日一日が始まったんだなと感じます。 彼は軽快にキーボードを操作し、メールのチェックを始めました。今日は25件の新着メールが届いて