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言葉に引っ張られる、2

言葉と実体が違う、ということがあるよね、という内容を、

『言葉に引っ張られる』というタイトルでnoteに記した。

すると、それを読まれた糸井重里さんが、ツイッターでこのようなリアクションをくださった。有り難いことだ。

う~ん、鋭い。そして面白い。

川は源流から始まるけれど、源流もまた雫(しずく)の集積だ。雫は雨や雪あってこそ。まるで空気中の水蒸気のように「目には見えない発想の部分」に焦点があたった流石の疑問だと思う。

「アンディ・フグがどうやってこの技を発明したか?」

究極的には「本人に聞く」しかないのだが、それは叶わない。

いや、仮にそれが実現したとしても「発明した時期の本人解説」と、「あとから振り返った時期の本人解説」は全くの同一情報として言語化されるわけではないだろう。

しかも極真カラテ時代、正道カラテ時代、K1時代・・・現役選手が「どこまで手の内を明かすか?」は微妙かつ繊細な話である。しかもたいていの一流アスリートは「メディア用の答え」をもっている。

勝負師とはそういうものだ。この前提の上で、この話をすすめていく。

まだK1に出る前、極真カラテ時代。彼の日本での呼称は「アンディ・フグ」ではなかった。彼がスイス代表で世界大会に初めて出たのは第3回世界大会。その時、極真カラテの機関紙であるパワー空手には「ハグ・アンディ」と記されている。HUGなので、むしろ発音的には近い気もする。

ハグ・アンディ(とカタカナ表記されていた)時は、かかと落としは蹴っていなかったし、そういう技はフルコンタクトカラテの世界にはまだ無かった。


続く第4回世界大会、彼はその蹴り技を日本で披露し、一気に決勝まで駆け上がった。その時は「カカト落とし」という呼称はまだなく、当時のTV放送の解説でも「カカト落とし」とは表現していない。

ハグ・アンディから呼称が(勝手に)変わり、カラテの世界では一躍スターになったアンディ・フグ。その後の機関紙「パワー空手」のインタビューで「あの技」について質問された。

彼は、

「みんな頭の上が開いている、そこを攻撃できないだろうか?と考えた」といった内容の発言をしている。

もちろん、あの技はテコンドーの「ネリチャギ」と言われるものを参考にした可能性はゼロではないだろう。

だが、それをポイントを取るためではなく、ノックダウンルールに持ち込み、ダメージを与えるため、ガードを上げさせて次のローキックで倒すための必殺技まで高めた。

しかも、レッグプレスで300キロを挙げる圧倒的な筋力で。←これだけでも簡単なことじゃない。

世界大会準優勝という結果を出し、技はスタンダードな蹴り技として定着、カラテ技術、K1、キックの技術のイノベーションが進んだ。

そして、源流以前の「雫」の部分。

ごく当たり前のファイディングポーズ(構え)を見て、「ガードが固い」と思うか「頭の上は空いている」と思うか。

誰かがそれをやってしまえば、みんな気づくけれど。
あとからオレもそう考えていた、と言うことはできるけど。

気づきを必殺技まで高める。これはどう考えても簡単じゃない。
発想を形にする行程は、険しい山脈を登るようなものだろう。一歩、一歩、おろそかにはできないはずだ。

だからアンディ・フグは凄いのだ。

これは、最大限の自戒を込めて。

言葉を読んでわかったような気になったり、言葉を発して完結したつもりになったり、言葉にまとめることで終了したような気になったり、してしまうことがあるけれど・・・・

言うだけなら簡単だ。

言葉に引っ張られ過ぎないように。もっと身体と会話して、五感を信頼し、汗に問う感覚を大切にしようと思う。



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