見出し画像

ハンナリーズ・アイデンティティとは何か。 〜声が出せないのに応援することの意味を沖縄で本気出して考えてみた〜

京都ハンナリーズの2020-2021シーズンがアウェイ琉球戦をもって終了しました。

「本当にこのチームは最高!」

こんな感情が最後の最後に湧き上がるなんて、シーズンが始まった当初は想像もできなかった。
だからより感慨深いですよね。

いや、これは自分の感情なんですが、ハンナリーズブースターのみなさんもきっと同じように感じただろうと決めつけてます。

もちろん、シーズン最後の試合を勝って終われたからという結果の話ではなくて、本当に大変なシーズンだったから、
だけど最後までみんなの力で走り抜けたから、

そしてそれをずっと見てきたからこそ、
今シーズンのハンナリーズをそう「評価」してしまっていいと思えるんです。

(最終戦はライスを除いたメンバーで臨むことができました)


少し振り返ります。

ホーム最終戦だったはずの4/17、18の三河戦は、選手、スタッフに感染者が出たことが前日に判明し、急遽中止になりました。
次々陽性結果が出て、その後の試合が開催されるかもわかりませんでした。前節に対戦した信州にも感染者が出てしまった…。

そもそも今シーズンのリーグは過去に例のない形式での開催を強いられました。観客数制限、マスク、消毒、声を出しての応援の禁止…。無観客試合も行われました。
開幕時は外国籍選手が揃わず、特例で多くのチームが短期契約の選手でスタートしました。

ハンナリーズもライスとハーパーは間に合わず、最初はフェイゾンがプレシーズンゲームから出場しました。また内海の故障で菅澤もシーズンの最初から加入、ハーパーも加入後すぐに負傷し、ローソンが途中からチームに合流。會田も怪我で開幕に間に合わず、出たと思ったらまた負傷で長く欠場しました。鉄人のサイモンの序盤の負傷欠場も痛かった。あとスタッフも同じで、ホルムが来日間に合わずしばらく井堀ACが1人ぼっちでした(なぜかうっちーがコーチみたいだったけど)。
とにかく最初は全然揃いませんでしたね。

(まだルーティーンも定まってなくてなんとなくぎこちない開幕戦)



最初から苦戦が予想されたシーズンではありました。昨シーズンのメンバーからはベテランをカットし、村上が引退、エースのマブンガや中村が移籍、選手は大幅に入れ替わり、チームは若手主体にシフトしました。
何より9年続いた浜口HC体制の終焉が衝撃でした。
新しいGMが新しいHCを据えて、誰もがゼロからのスタート、そして苦難のシーズンとなることを予想しました。

これまでの京都のバスケは無くなってしまうのか?新しいハンナリーズはどうなってしまうのか?(そのへんの苦言は実は前のブログで書いてます。)

(「とにかく勝てば良い、結果が大事。過程なんて誰も見てない」みたいなこと書いてますけどね…)


ちなみに直近のブログ更新は11/3でしたが、そのとき未勝利だった三遠に負けて2勝8敗で9位とありますね。

(これはネタですからね←)

毎試合、第1Qで25点くらい取られてて、おいおい…という感じで、ディフェンスは崩壊、リバウンド取れない、外国籍選手の個人技に頼むという未熟なチームでした。
でも、少しずつですがスタイルを築いていったように思います。

苦しい中でしたがゾーンディフェンスの駆使し、強力なオフェンス力を持つライスを活用するために2ユニット制を採用しました。
若い選手は苦しみつつも成長し、故障選手の復帰とともにチームの形ができてきました。

「ディフェンス、リバウンド、ルーズボール」。
個々の能力が劣るチームではこれを遂行しなければ勝つことはできません。小川HCが繰り返しチームにとって重要であることを主張したものの、どれも成せずに負けた試合もたくさんありました。

しかし、シーズン最後の琉球戦では、このチームがシーズンを通して取り組んできた努力が結実しました。

(第1戦ではベテラン石崎、若手の牧の活躍が琉球の強さに上乗せされて敗戦)

第1戦では、やはりリバウンドで劣勢になり敗れましたが、第2戦で修正して見事勝利。小川HCはリバウンドとルーズボールで優位に立てたことを要因に挙げました。

決して精神論だけではなく、チームの修正力も高かった。
第1戦でも、粘り強く戦い、相手の勢いに圧倒されてズルズルと離されるのではなく、ビハインドから逆転に持っていける辛抱強さも終盤では出てきました。
見事な逆転劇を見せた信州戦ではそういったチームとしてのメンタルの強さを感じました。

(信州戦での逆転勝利でインタビューに答える小川HCと猫と歯)

ところで小川HCは試合後のコメントは、精神的な部分に言及することが多いですが、技術的なことには(ちょっと不自然なくらい)ほとんど触れず、あえて避けているのではとさえ感じます。選手起用や戦術部分は明らかに意図したものでも特にコメントはせず(聞かれないからというのもあるでしょうが)、誰にでもわかりやすいコメントでお茶を濁しているように思えるのはわたしだけでしょうか…。

琉球の強みであるP&Rに対するディフェンスはかなり練られたもので、対応した選手が素晴らしかったこともありますが、かなり自信を持って望んだように思います。
具体的にはボールマンに対するディフェンスはチェイスすると見せかけてコーナーに向かって走り、誘い出してパスをスティールする、というのが2日間驚くほどハマりました。(さらに言うなら會田のスティールはパサーの死角に入って「隠れて」後ろからボールを奪うというディフェンスの技術が詰まった逸品だったわけですが長くなりそうなのでこれくらいで…)

第2戦は14点差を追い付かれるという苦しい展開でした。一度狂った歯車を何とか元に戻そう手を打ってもことごくと裏目に出て…というゲームもシーズンにはありました。

だけどこの日は違った。

ミスからボールを奪われても不運な笛があっても岸本のスリーが嫌なところで決まっても最後には絶対勝つという強い意志と集中力がありました。

タイムアウトのタイミングも良かった。
リードが縮められて流れが変わろうとするところで後半1回目のタイムアウト。このときそう簡単には勝てない、点差はないものと考えろというメッセージがあったんじゃないかと想像します。

そしてリードが溶けて点差がなくなってからのオフィシャルタイムアウト。完全に劣勢なのに、まるで待っていたかのような、すべてシナリオ通りのようなタイミング。
オフィシャルタイムアウトはもちろん意図したものではないですが、コートで思うようにいかなくても追い付かれても大丈夫、ここからだ!という勢いを感じました(気のせいかもしれませんが現地ではそう感じました)


シーズン序盤、接戦を落として、残り数秒の攻防でのタイムアウトのタイミングに対する批判も思い出したりして…
成長するのはもちろんコートで戦う選手だけではないですよね。(偉そうにいってますがすべて個人の感想です←)

実際どんな意図や指示があったかわかりませんが、そこからの競り合いで持ち直しました。
そして一進一退の攻防が続き残り1分37秒で再び同点。見てるだけで呼吸が苦しくなる展開で、ハンナリーズはエースのサイモンに繋ぎます。このときは、負け試合でよく見られた他人任せではなく、最大の強みを最大限生かそうと全員が動きました。ファールを引き出しフリースローをしっかり沈めるデイヴィッドは、今シーズンは過去のシーズンと比べてこのフリースローで苦しんだときがありました。しかし最大の勝負所でエースの仕事をしました。


さらに、これで決まったか…!と思った直後にスリーを射抜く岸本、残り46秒、動かない琉球、アメフトのように攻守のワンプレーごとに選手を入れ替える京都。
琉球はタイムアウトを取り、京都は最後のひとつは使わずに…
琉球残り26秒のポゼッションは2度のセカンドチャンスをものにできず、リバウンドを掴んだ満田がフリースローを獲得。

満田は、久しぶりの試合となったこの日はシュートタッチが悪く、オープンのスリーが0/3でした。それでも緊迫の2ショットで1本はしっかり決めました。

ハンナリーズに来る前は、能力はあるけど安定感のない中堅選手という印象だったのが、この1シーズンでチームで1番のディフェンスの名手という評価を得ました。45試合にスタートから出場し、堅実なプレーヤーに変貌した、最も成長した選手だったと思います。

最後はエアボールとなった琉球のシュートをハーパーがガッチリ掴んで試合終了。

この試合でハーパーはターンオーバー後にコートを倒れ込み床を叩いてテクニカルファールを吹かれましたが、余計なファールではありましたが、振り返るとあれが意外に琉球の流れを切ったようにも思いますね…。クールなハーパーでしたがときには熱くなることもあり、チームに良い影響をもたらした選手だったと思います。

(競り合いを制して京都ハンナリーズ勝利!)

この勢いで全選手にコメントしたいところですが、自制して締めに入ります←

そう、ハンナリーズのアイデンティティは、ディフェンス、リバウンド、ルーズボールというチームの方針ではなくて…

チームとしての成長。

そしてそれが今シーズンのハンナリーズの最大の魅力でした。個々の成長、チームの成長、またブースターも成長が促されたとも思います。

ブースターにとってももどかしい1年でした。
そもそも声が出せないという状況では、ハンナリーズブースターは羽をもがれた鳥のような、牙を抜かれた獅子のようなものでした。

「このタイミングで声を出した応援ができたらもっと後押しできるのになあ」と今シーズン何度思ったか。

劣勢になればなるほど燃料が投下されて火を噴くのがハンナリーズブースターなのに…と。

ファン、ブースターはチームによって特色があって、キングスブースターはコールリーダーがいるわけでもなく、定番の応援があるというわけでもなくて、リードされてるときなんかはお通夜感があったりするんですが、劣勢を跳ね返して逆転したりするような場面では、爆発的に盛り上がる。

話は逸れますが(逸れるんかい)、沖縄アリーナはもちろん初。沖縄アウェイ観戦は4回目くらいかな?いつも京都と琉球は、(現状色んな面で差はつけられてますが)ライバルといって差し支えない好ゲームが多い気がします。

(わたしも(ふるさと納税で)出資した沖縄アリーナ)

沖縄アリーナは観客である私たちにとっても、プレーする選手にとっても良いモチベーションになる素晴らしいアリーナでした。

京都にとって今シーズン最後のゲームに相応しい相手と場所だったように思います。

沖縄アリーナももちろん観客数制限の中での開催。これがフルハウスならば恐ろしい…!

(演出も派手派手!!)

ただ、今シーズンを通して、黙って手を叩く応援をしている中で気付くことはありました。

これまで声を出して、必死にチーム名を叫んで、選手とチームに力を送っていると思っていました。

だけど違った。

チームを応援しているようで、選手を鼓舞しているようで、実は自分を奮い立たせているだけだったんだと。応援しているのは「自分」だった。

好きなチームがいる、応援したい選手がいる、それだけで元気になれませんか?1週間がんばれませんか?それは全部自分に返ってきていたことに今さら気付けました。

声を出して応援できないのに、コロナ禍で旅行なども制限されてる中で、遠くまで試合を見に行く意味あるのか?と自問自答した末に決行したアウェイ遠征。(エンジョイアウェイは自粛しましたが)。行っても心から楽しめないかも、という気持ちもあり悩みましたが、その意味を考えていました。


声を出せない応援の意味。届けたい、届いているのかな、でもそれは間違いなく「あなた」に戻ってきている。
ブースターとしてのアイデンティティはそこに在りました。全部自分の話ですが、そう決めつけます。

今シーズンのラストゲームを見届けて、先に梅雨に入った沖縄で土砂降りに見舞われましたが、胸が一杯になって帰路に着きました。

チャンピオンシップには進出できませんでしたが、勝ってシーズンを終えられたのは、チームの成長を実感できたハンナリーズにとって良い締め括りができたのかな、と思います。
日曜日に勝つと次の試合までがんばって生きられるという理論が成立するならば、シーズン最終戦に勝つと次のシーズンの開幕までがんばれるはずです。
応援は自分に返ってきてるから…

最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた〜

この記事が参加している募集

Bリーグ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?