見出し画像

結局どっち!?「量より質」VS「質より量」

◻️多作?寡作?

「量より質」か、「質より量」か、早く上達するためには結局どっちがいいの?と 考えたことがある人は多いと思います。

今日はこのよくある質問について、僕なりの回答を考えてみました。

かれこれ15年ほど作品制作に携わってきて、結構な数のアドバイスもさせていただいた中で考えた答えなので 、制作を始めたばかりの方や、どっちがいいのか迷っている方などの参考に少しでもなれば嬉しいです。

早速ですが結論です。

◻️質の方が大切です。


正直どっちもめちゃめちゃ大切なのです。でも、どっちかというとぼくは質の方が大切だと考えています。

これから、それを詳しくご説明していきます。

◻️どちらも同じ場所に辿り着く


質の重要性を語る前に、まず「どちらも大切」がどういう理由からかを説明します。

それは、量を重視すれば質の大切さに気がつき、質を重視すれば量の大切さに気がつく。ことになるからです。

これは「量派」「質派」どっちからスタートしてもだいたい同じことが起こります。

わかりやすく伝えたいと思って作ったのが以前投稿したツイートです。


これは質と量の思考の流れをなるべくわかりやすく図にしてみたものです。

この図のように量を重視すると質の大切さに気がつき、その逆もあります。

このように考えると「量」と「質」は両輪のようなもので、どちらか片方が欠けるとなかなか前に進むことが難しいものだということが見えてきます

そして、どちらの側からスタートしても最終的には質の高い作品を作れる最高速度を模索するようになります。

これが、ぼくがどちらも大切といった理由です。結局は同じ場所に行き着くと思うのです。

◻️作品の質=作家の信頼

その上で、なぜ質の方重要なのか。それは、作品の質が作家の信頼に直結するからです。

以前展覧会に誘われたときに印象的だった言葉に「作品・作風は問いません、あなたの作る作品のクオリティを信頼いたします」というものがあります。作家に全面的な信頼をいただけたようで忘れることのできない言葉です。

作品をいくら量産しても、質が伴わなければ需要は生まれません。

「質」と言っても色々あります。デッサン力、色彩感覚、構成力、練り上げられたコンセプト、それらすべてに質が伴います。なにか一つでも他の数ある作家さんの中で自分が輝ける質の高さを磨き上げることが、人の心を掴む作品を作る第一歩になると思います。

理想を言えば質の高い作品を安定してつくれれば良いのですが、それが叶わなくても質を重視して制作した方が、結果的に多くのファンの方に楽しんでいただけるはずです。

作品の質を高めることは作家の信頼に直結する
そう考えると、作品の質はすごく大切なものに感じられると思います。

◻️量を重視するメリット

では量を重視するメリットは何か?大きなメリットの1つ目は多くの作品をつくることによって、作品の制作スピードと作品のクオリティの関係を学べることです。自分がどれぐらいのペースで描くと作品の質はこれくらいになるという見通しが、最初はなかなか立てにくいものです。しかしがむしゃらに作品を作ってみたり展覧会出展という名の締め切りを設けてることによって自分がどれくらいの期間があれば納得のいく品質を保つことができるかということがなんとなく見えてきます。

また、二つ目は周りから一目置かれやすいという点が挙げられます。たくさん制作している人はその年代、その地域のコミュニティでは目立ちます。美術をやっているとその世代のスターみたいな人が必ずいます。こういう人は、質はもちろん多作なことも多いです。注目を集めれば、様々な人に知られ、展覧会の誘いも増えてきます。そうすることで、発表の場を自分で切り開いていくきっかけを掴みやすくなります。

3つ目はPDCAサイクルを回しやすいこと。着想▶︎発表▶︎反省▶︎次回作へというサイクルが早く回せるため、様々な制作のアイディアを試しやすいというメリットもあります。ただし、いかに面白いアイディアであってもクオリティが伴わなければ、その魅力を十分に発揮できない作品が出来上がってしまう可能性もあります。

このようにたくさん制作するメリットも多いです。自分の限界よりちょっと上の目標に向かってがむしゃらに努力する体験と言うものもとても大切だと感じています。

◻️【体験談】自分は量▶︎質派に変化しました


話を想像しやすくするために、少し自分の過去の話をします。

ぼくは高校まではコツコツと作品を描いていましたが、美大に入学して「年間500号は描きなさい」という大学の先生のダイナミックな教えに影響を受けて「とにかく量を沢山描けばいい絵が描けるようになる!」と考えて1〜2メートル級の巨大な作品をくる日もくる日も描き続けました。当時はとにかくデカければいいと思っていたくらいです。大学3年生からはグループ展に出展したり、個展を開くことが増え、昼夜を問わず描きまくるのが日常でした。

正直、多少クオリティが低い部分があっても「大作だから」と心の中で言い訳をして「次の反省点にしよう」と考えるようにして解決を避け、とにかく次々作品を描きました。それは、社会人になった後も。実は2年くらいまえまではそのような制作サイクルでした。

結果として、作品を描くのはすごく早くなったと思うし、アイディア作りや作品制作もかなり上達したと思います。でも、ある時期から、自分の想像する作品のクオリティにどうしても到達できないという悩みをもちはじめました。

今思えば、ここが量と質が混ざり合う交差地点だったように思います。

ちょうどその頃から、作品が誰かの手元に届くことが増えてきて、作品に手を加えられなくなる状況が増えてきました。今自分が最高の状態に仕上げなければ、手元を離れてもう2度と作品と向き合うことができない。そんな考えが生まれてから、作品にかける時間と手数が増え、より計画的に作品を仕上げていこうと意識が変化しました。

結果として、制作スピードは少し落ちたけれど、作品の質は明らかに向上して、自分の作り上げたイメージにより近いクオリティの作品を制作できるようになりました。

いまは、展覧会やご依頼のスケジュールも自分のクオリティが下がらないよう制限を加えて、品質を維持することを重視しながら活動しています。

◻️同じ道に行き着いた先が重要

今のは僕自身の経験したストーリーです。このように作家にはそれぞれのストーリーがあり、迷いながら自分なりの活動方法を探していくものなのだと思います。でも、きっと最終的には質の高い作品を作れる最高速度を模索するようになるはずです。そうしなければ、納得のいく作品を安定して作り続けるのは難しいからです。

大切なのは、ここからです。
質の高い作品を作れる最高速度を模索する。そのために自分ができるベストな方法とは何か。これを探すのが、この先の課題です。

第一線で活躍されている作家さんは、これが確立されています。

ベストな制作時間、依頼を受ける期間、展覧会の回数、毎日のルーティンなど、いろいろなものをカスタマイズして、より高い品質の作品を安定してつくれる環境を模索しそれを実践されています。そして、現状に満足せず、それを常に改善・改良しようと工夫を重ねてらっしゃるはずです。

ぼくは、なんとかこの自分なりの方法を確立したくてもがいている最中です。まだまだ、ベストな方法は模索中ですが、アップデートを重ねて皆さんにいつもワクワクしていた開けるような作品を描き続けていきたいと考えています。

おわりに

いかがでしたか?
今回は「量より質」か、「質より量」かという普遍的なテーマについてぼくなりの答えを書かせていただきました。

この文章が今作品を制作している方のお役に立てれば、誰かの背中を押すことができたら幸いです。

これからも、素敵な制作ライフを送っていきましょう!

お読みいただきありがとうございました🤲

TAKUYA YONEZAWA


学びを深める📚

シャルル・バルグのドローイングコース

あの有名画家ピカソも小さい頃練習用に活用していたというデッサンの手本集。超絶美しい&上手い石膏デッサン例がたくさん載っている手本集(ほぼ画集)です。

質を高めるための方法は色々ですが、一番わかりやすい質の高め方は描写力を高めることかなと思います。"描く力があるかどうか"は誰が見てもわかりやすい基準。だからこそ鍛えがいがある。「上手い絵」と「いい絵」は違うので、必ずしも上手ければいいという訳ではありませんが、「上手さ」と「よさ」は両立できます。

正直本を読めば上手くなるということはありませんが、魅力的なお手本があればテンションが上がるし、しっかり模写すれば確実に描写力がつくはずです。(自分は画集として買いましたが、それでも満足しています。とにかくお手本が美しい。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?