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呟く映画巡り

 例によって先月から今日までの映画のことを。
11・18、19『宇宙からのメッセージ』『里見八犬伝』(シネ・ヌーヴォ)
 梅田でゴジラトラックを見てから、九条シネ・ヌーヴォへ。

 場所はグランフロント大阪。39年と一日前、ほぼ同じ場所でサイボットゴジラと写真を撮ったのだ。

今回の超大怪獣は『宇宙からのメッセージ』『里見八犬伝』の深作SF時代劇二本立て。キャスト、スタッフがほぼ一緒。

 確かに『メッセージ』は赤いプリントだったが、それ以上を知っているせいか、あるいは、退色以外は状態が綺麗だったためか、目が慣れてきたからか、あまり気にならない。宇宙の脅威に民衆+αが立ち向かう!

 里見八犬伝をベースにヤクザ映画と時代劇とほんの少し貴種流離譚をミックスして宇宙の太秦撮影所で作ったSF映画。冒頭のロクセイア12世の、およそSFらしからぬ『小気味よい』でこの世界に引き込まれる。トゲトゲついたヘルメットの宇宙暴力団ガバナスがかっこいいじゃないのさ。

 ビックモローの、いやその吹き替え、若山弦蔵の渋くいい声で救われるのだ、と今日見て思った。そしてベバ2号の甲高い声とのコントラスト。帰宅してDVDを見直したら、しっかりと色がついていた、当たり前だ! ハンス王子の星ってフィルターで赤くなっていたのか!

 『里見八犬伝』を劇場で見るのは今回が初めて。まるで宇宙刑事をスケールアップさせたような巨大セットに集まる妖怪&武者軍団、そしてボスキャラ。『宇宙からのメッセージ』とほぼ一緒のキャストとスタッフ。しかし5年の歳月は、撮影方法も、日本映画の立ち位置も大きく変わった。

 深作映画はガチャガチャとカメラが動いてナンボ。薬師丸ひろ子のキュートさに40年経って気付くのは遅いぞ。男装もサマになってるけど、尻の振り方でそれを見抜く真田広之。東映大伝奇映画、そして角川超大作路線の最後、かな。派手さとアクションで押し切るクライマックス! 『里見八犬伝』は真田広之、最後の短パン時代劇になるのかな。千葉真一は大百足にニィヨス! と斬りこむ。『宇宙からのメッセージ』と続けてみると、さすがに成田三樹夫のお殿様のところで世話になりたくないな、と思う。

11・21 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(TOHOシネマズ泉北)

 それまでも『ゴッドファーザーpart2』や『新・明日に向かって撃て!』等々の前例はあるもののいわゆる前日譚、プリクエルが世間的に大流行し、猫も杓子も過去を語るようになったのは『スターウォーズ/エピソード1』からだと思う。ちなみに続編漫画ブームに火をつけたのは『キン肉マンⅡ世』だと思う。

 で、最新の前日譚映画『鬼太郎誕生ゲゲゲの謎』を見る。おおぅ、これは! なるほど! 『ゲゲゲの鬼太郎』6期をベースにした劇場版と謳いながらも、貸本版『墓場鬼太郎』の初期も絡め、鬼太郎の誕生を含めその両親がなぜあぁなったのかを丁寧に描いている。そこに横溝正史作品のような因果まみれの山村に妖怪譚をミックス。戦後を舞台にしたGの付く映画が二本、ぶつかる。ゴジラとゲゲゲ。どっちも面白いが、喫煙率の高さとナチュラルさではゲゲゲだった。入場特典の謎は、鑑賞後開封して初めてわかる。これは人に寄ったら涙腺爆発しそう。あの世界線では血液銀行の水木さんは地獄送りに遭わないのか。

11・23『首』(イオンシネマ大日)

 昔、ビートたけしが緒形拳と対談して『強面が面白いことすると、更に面白くなる』とか言ってたり、『戦国時代を撮るなら、昔のような小さい馬に乗らないと』とか言ってたのを思い出しながら、某所からの帰り道、ふらふらと『首』を見る。昨日誰斬った? みんな~殺ってるか! であり、狂血の戦国絵巻であり、死屍累々の風雲たけし城。男たちの生と性をいつもながら淡々とクールに描く。何かにつけ『俺は百姓出身だから』と一歩引いた眼で武士社会を見つめる豊臣秀吉。タイトルの『首』の解釈も違ってくる。しかし、今年はよく本能寺が燃える年だなぁ。コントの間と映画の間について考えてしまう。ちなみにイオンシネマはブラックフライデー割引で、ちょっと得する。

 パンフレットによれば、あのスーパークレージーな織田信長を演じるにあたり、加瀬亮さんはテンションを上げるため、『アラレちゃん音頭』を聞きながら現場に挑んだそうだが、その選曲のセンスこそがすでにスーパークレイジーだな、と思った。信長とアラレちゃん(鳥山明)、どっちも愛知県ゆかりだった、とあとで気付く。

11・25『ゴジラ‐1.0(4DX)』(イオンシネマ四条畷)

 

 三度目のゴジラ‐1.0は4DXで。もう、ドラマのことなんかどうでもいい、とにかくシートが揺れる、水が出る、光る、回る! 乗り物が出れば静かに揺れ、ゴジラが出ると、大きく振動する。何度ゴジラに踏みつぶされたことか、そして安藤サクラに小突かれ、浜辺美波に蹴られ、青木崇高に角材で殴られる!

 縄張りを作るためにやってくる、凶暴なゴジラ。劇中何度か『恐竜のような怪物』といわれているのが新鮮。これまでゴジラはゴジラとして存在していることが多いから、他の何かに例えられること少なかったなぁ、と。そしてこれは4DXがしっくりくる、アトラクション映画なのだな。とにかく銀座が揺れる。

 4DXは、ウトウトしていても、突如、シートがガタガタ揺れて目が覚める。銀座、海神作戦は揺れっぱなしで、水被りっぱなし。ついでにゴジラのよだれも浴びた気がする。劇場はちびっこや親子連れもちらほら。マイゴジはイケメンだなぁ、と今更思う。

11・27『007サンダーボール作戦』(MOVIX堺)

 寒い、車で出かければよかった。と、バイクで海の近くの映画館で、海が舞台の『007サンダーボール作戦』を見る。寒い日はね、ジョン・バリーのダイナミック楽曲とトム・ジョーンズのぶっとい歌声と英国スパイの殺人観光ツアーで世界を救う話を見ればいいんだよ! 寒くない日でも見る!

『007サンダーボール作戦』は冒頭のジェットパックが映画の全てをさらった、かもしれない。お話も、悪の組織スペクターが原爆盗んで世界を脅迫する壮大なスケールなんですが、とにかくプレタイトルの人間ロケットがその後の映画、テレビにどれだけ影響を与えたか。ライオン丸のロケット変身もたぶんそう。

 いつもの如く観光しつつ、美女をナンパしつつ、ゆるゆると敵の懐に潜り込むボンド。それもこれも任務なのです。ボンドといっても犬の名前ではないよ。任務に失敗すると鮫プール、隻眼の敵役ラルゴのむっちした悪役っぷりがいい。ミサイルバイクの悪女フィオナがボンドに言う『抱いたら改心して寝返ると思うなよ!(意訳)』は前作のプッシー・ガロワのことを指しているのかね。『サンダーボール作戦』はクライマックスの水中船がもたもたしてしまう印象でしたが、4Kレストア画面では海の青さもくっきりでした。そして行われる赤チームと黒チームの水中眼鏡外しっこ大会! 

 『サンダーボール作戦』は予算もふんだんにあるのか、海中に実物大戦闘機沈めたり、水中翼船が分離したり、メカ描写満載。敵の水中戦車もかっこいい。水中の乱戦には鮫も乱入してどうやって撮影しているの? となる。冒頭のジェットパックに続き、ボンドは最後にも強力な水中ジェットで海を飛ぶ!

11・28『007リビング・デイライツ』(MOVIX堺)

 今週で終了、#𝐁𝐎𝐍𝐃𝟔𝟎𝐉𝐏 どれだけ見れるか? と昨日に続いて『007リビング・デイライツ』を。輸送機で始まり輸送機で〆る、ダルトンボンド初登場作品。秘密兵器は万能キーホルダーとアストンマーチンのみで、肉体アクションとサスペンス、初期作品に倣った内容。ロマンス多め。

 『リビング…』は劇場で最初に見た007なので思い入れも大きい。高島屋の007展にも行きました。スタントと分かっているけどクライマックスの輸送機バトルはハラハラしてしまう。公金横領の穴埋めにアヘンを売りさばく悪人は、ちょっと小物感。公開時の字幕は『ブーツとんだ』が『ぶっとんだと』に。

 そして今回見て気づいたのは、マリアム・ダボもうっすらアゴが割れていたこと。キスするとダルトンのアゴと連結してしまう、しない。4k映像をなんとなく見てたけど、たぶんあの橋や輸送機の爆破シーンって、巨大なミニチュア使ってるんだなぁ、さすが007。

11・30『007ドクターノオ』(なんばパークスシネマ)

 今日で上映が終わる、最後の最後に見ておこう、となんばパークスシネマで『007ドクターノオ』。世間一般の思い描くスパイのイメージを一変させた記念すべき作品である。奇しくもなんばパークスシネマではもう一本、義手の中国人が所有する島に潜入する映画『燃えよドラゴン』も上映されていた! 
 
 『ドクターノオ』後ろ暗いスパイという存在を、飲む打つ買うが大好きでおしゃれな奴、という認識に変えてしまった映画。あと数々の秘密兵器も。ツルツルしたショーンコネリーにプロポーション抜群のウルスラアンドレスは4k画像でお人形さんっぽく見える。表情が変わらないドクターノオも怖いお人形のようだ。

 ショーンコネリーのスーツ姿がバシッと決まってカッコいい。きびきびした動きと非情さ。ちょっとした言動が予断を許さぬスパイの雰囲気を醸し出し、前半は見えない敵の探査に奔走する。そして後半、ドクターノオの広大な秘密基地、というか原子炉! 第一作でこのシリーズの方向性が固まりつつある。

 妨害電波を使ってアメリカの宇宙開発を邪魔するノオ博士。そしてその口から語られる巨大組織スペクターの存在。しかし、シャワーと洗浄で放射能が落ちるとか、原子炉で妨害電波作業とか、最後の島大爆発は原子炉が……まあ、いいや。やっと原典を劇場で見れたことに感謝です。

12・1『エクソシスト 信じる者』(イオンシネマ四条畷)

今年もあと一か月。今年はすごかった。まさか本能寺の変と悪魔祓いを年内に三度も見ることになるとは。バチカン、午前十時の映画祭ときて三度目の悪魔祓い映画『エクソシスト信じる者』を。映画の日にふらっと映画館に入って、見た。途中で、あぁこれって50年前のオリジナルからのシリーズなんだなと。
 
 この世に数多あるエクソシスト映画ではなく、ちゃんと本流のエクソシストだったか。あまり内容については書けないでもサブタイトルの『信じる者』の意味が分かる。怪獣総進撃であり、ゴジラ‐1.0並みに吐く映画でもある。パンフに載っていたキャサリン役のプロフィールがちょっといい話になっていた。『エクソシスト信じる者』は、宗教に疎いからパンフレット読んでからなるほど、と思うところもあり、サブタイトルの『信じる者』の意味が分かってくるというか、キリスト教各宗派が集まってくるアベンジャーズなんですな。 そして、最後の最後に『あぁ、やっぱり50年前と繋がってるのか!』となった。
 
12・3『マタンゴ』(シネ・ヌーヴォ)

 

 シネ・ヌーヴォ名画発掘シリーズリクエスト特集Vol.3、数々の作品の中ににょっきり生えた東宝特撮『マタンゴ』を。その奇妙なタイトルそして和製ホラーの傑作といわれているためか、特撮、怪獣映画好き以外にも根強いファン、そしてキノコ好きにもファンが多いといわれているマタンゴ。プリント良好。

 浮かれた若者たちがヨットで遭難して……キノコを食えば助かる、でも食べてしまうと……。極限状態の中、どんどん人間の理性のタガが外れていく。そんな人間たちの右往左往をあざ笑うように森の中で待っているマタンゴたち。たまに人間にちょっかい出して怖がられます。

 マタンゴって基本的に人間襲ったりしないんですよ。襲ってるように見えるけど、あれはひょっとしたら『ここで飢え死ぬよりも森においでよ』と誘ってくれるように見える。仲間が増えて楽しいからフォフォフォと笑ってる。でもそこが人間からすれば怖い。ちらっと横歩きするマタンゴがかわいい。

 ゴジラは見たことなくてもマタンゴは知ってるという人もいるはず。いわゆる特撮映画という括りで語られない作品、というか世間的にはやっぱりホラーなんかな。食料がどんどん尽きてきて人間性が露わになっていく様子は、マタンゴよりも怖いですね。自分ならどうする。すぐキノコ食べてしまいそう。

 『マタンゴ』見たらお腹が空いてしまう。キノコを食べて恍惚の表情でトリップする土屋嘉男の気持ちがわかる。鑑賞後、知人夫婦と一人前を頼むと二人前ぐらいの量が出る中華料理屋へ。まずは唐揚げを、そして締めにゴマ団子を頼みなさい、と山岡士郎の気分で京都から来た二人をもてなすのでした。

12・4『ブラック・レイン』(TOHOシネマズ泉北)

 月曜日がだいたい休みの男、今日はリドリースコットの映画を観ました。ナポレオン、ではなく『ブラック・レイン』を。道頓堀から十三まで徒歩20分で移動するマイケルダグラスとアンディガルシアアメリカン刑事大阪珍道中。いつか見た大阪の風景が懐かしい。しかしよく道頓堀を封鎖してロケしたなぁ。



 ただ封鎖しただけじゃない、奥のビル群にもばっちり照明を当ててグリコの看板が鮮明に見える。照明とフィルム感度のおかげなのか、すごいなハリウッド映画って30数年前の映画だけど。松田優作の静かに狂った演技は言うでもなく、令和のシネコンに若山富三郎の『ぶち殺したろかこのガキャ』の声が轟く。

 バイクの公道レースに勤しむ不良刑事、マイケルダグラスのもっさりした顔はこの役柄にぴったり。ハーレーでスズキのバイクを負かす彼も日本に来ると、スズキ車に逆襲されてしまうという皮肉。リドリースコットの映像美と日米キャストの熱演よりも、ついロケ地が気になる映画。あと島木譲二探しも。ブラック・レイン』は男だらけの世界なんですが、ヒロインポジションのケイト・キャプショー(スピルバーグの嫁)は実際に大阪のクラブで四時間ほどパートで働いてから撮影に挑んだ。とパンフレットに書いてあった。コレデパンデモカッテ、の橋は今はもうない。

以上、この二週間あまりで10本の映画を観たことになります。多いのか少ないのか、しばらくは見たい新作はなさそうなので、ヌーヴォや名画座に行くことが多くなりそう。


 




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