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首が回って腕が飛ぶ、残暑に見た映画

  そろそろ書かないと、と思って振り返ると、最近見た映画は三本のみ。もう洋画の大作にも飽きたのか、残暑が落ち着いて家で過ごすことが多くなったからか、別の用事が増えたのか。まあ、その辺が色々重なって、映画に行く機会が減ったな、と思うのです。見た映画といえば三本とも昔の映画でした。家にソフトがあるのに、あえて劇場で見るのです。

9・6『エクソシスト』(TOHOシネマズ泉北)

 9月6日はカラスの日なので、カラス神父の活躍する午前十時の映画祭『エクソシストディレクターズカット版』を、エクソシストシャツで見る。エクソシストもメガロと同じく50周年。でもディレクターズカット版だから公開23周年か。時々すごいショットがあると思ったら後でデジタル加工していたのか

『エクソシスト』はフリードキン監督らしいドキュメンタリーっぽい絵作りがあるから、悪魔憑きの怪異がとても生々しく見えるんですな。公開の翌年メカゴジラがオマージュする首回転もブリッジで階段降りるのもアリだ。『バチカンのエクソシスト』でも触れてた悪魔憑きのほとんどが精神的なものということがこの作品でも言及されている。冒頭に登場した悪魔パズス像とリーガンにとりついた悪魔との関係が曖昧になっていること、本当にあれは悪魔なの、カラスは勝ったの等々、観客に考える余地を与えてくれる映画。色々あるけど最後は拳骨で決着。牧師ングということか。牧師と神父は違いますが。

 いつもクライマックスのメリル神父とカラス神父の悪魔祓いの途中『休憩しましょう』で、こっちも休憩してうとうとしてしまう。で、その間にメリル神父が死んでいる。どうやって、なぜ? が描かれないから余計に怖い。でも最後は暴力で解決です。奇しくもこれがフリードキン追悼になってしまうのかね。

 悪魔は信仰をバカにして、無垢なもの、信仰心の強いものに執拗に攻撃を仕掛ける、と思う。だから物語前半でセレブな女優一家と対比して描かれる、母の看病と貧苦に耐え信仰を捨てかけた男、カラス神父が最後に勝つのだ、しかも拳&ダイビングで。パンフに記載の今年のブーム、50年後も一緒ですよ。

50年前はドラゴンとオカルトブーム
50年後もドラゴンとオカルトを見た。フィルムから4Kに変わりましたが

 今回見直して、先日某所で聞いた、イラク南部(古代バビロニア)の遺跡から現れた化け物が人間にとりつく、というくだりだけだと『エクソシスト』は『妖怪大戦争』に似ているという話になるほど、と思うところあり。カラス神父が油すましのポジション。で、『ブレイド3』のドラキュラもバビロニア出身。

 しかし、今更だけど、十代の子役にメイクとかゲロとか下ネタとか、とんでもないことさせてるな、エクソシストは。でも病院の検査のシーンが一番痛そうだなぁ、と思ったりします。次回の午前十の映画祭はフランケンシュタイン対少女『ミツバチのささやき』です、タコは出るの?

 9・11『隠し砦の三悪人』『用心棒』(シネ・ヌーヴォ)
 
 見たい映画がある。しかし、今日が最終日、ワンコイン、フィルム上映の魅力に抗えず『裏切り御免』で、シネ・ヌーヴォへ。2023優秀映画鑑賞会・没後25年黒澤明監督特集『隠し砦の三悪人』『用心棒』の二本を。新作映画続々公開中というのに、何度目よこの二本。しかし安定の面白さ。場内ほぼ満席。

『隠し砦の三悪人』映画にテーマとかメッセージとかどうでもええねん! 百姓の思わぬ一言が生んだ敵中突破時代劇。とにかく逃げる、隠れる、時々斬る! もう何度も書いてるけど、袖なし短パンだらけの時代劇。痛快ではあるけど『盗人にまで落ちぶれたくねえ』と言いつつ、米を盗んでる百姓コンビに戦国の世の無常さを見る。やっぱり何度見ても真壁六郎太がスペクトルマンっぽく見えるよ! オープニングの佐藤勝の大マーチで血が沸騰する! 50年以上前の映画でもギャグシーンではきちんとみんな笑ってる。すげえ。フィルムセンター所蔵のフィルムの状態も良好。あぁ、面白い。

 あぁ、戦国時代劇だけどチャンチャンバラバラで終わらない、大脱出劇で終わるのがオモロイんだ『隠し砦の三悪人』は。と、入浴中に思い出す。樋口監督のリメイク版はチャンバラやってたなあ。

 『用心棒』。これももう何度見たよ、フィルムで、ビデオでデジタルで。でもおもろいんですよね。中三の冬、市民映画鑑賞会でこれを見た時、後頭部をガーンとやられてしまった。佐藤勝のメカゴジラ並みにカッコいいオープニング曲、ずいぃと現れる素浪人の後ろ姿。今まで見た浪人=悪い奴のイメージが軽く吹っ飛んでしまった。強くて賢い三十郎が無法街をのらりくらりと泳ぎ回って壊滅させる。大セット、殺陣、台詞、すべてにしびれたあの頃。もう初見時の感動はないけど、おもろいものはおもろいので、ゴジラや怪獣映画と同じく『映画館でかかったら必ず見る映画』の一本なのです。

『用心棒』はヤクザ同士の抗争、お互いが『勝ちたいんや!』と鎬を削る知能指数の低い戦争に知恵者の三十郎が割って入るけど、なかなかうまくいかないという構成の妙。『椿三十郎』の武家同士の争いとはまた違う。ヌーヴォの壁面にはメッセージいっぱい。とにかくよかった。雨中『あばよ』と去る

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