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雨の日のバラと恐竜

 今週シネ・ヌーヴォに何度通ったよ? 今回は大映4K映画祭ではなく『さらば、永遠の映画少年追悼大森一樹』特集の『ゴジラVSビオランテ』『ゴジラVSキングギドラ』の二本。このミニシアターでゴジラ映画を観る、というのも不思議な感覚ではあります。と、今更思うのです。

 そういえばこの二本を続けて見たことなかった。平成VSシリーズの基礎を固めたといってもいい大森ゴジラですが、王道に見せかけ新しい試みをじゃんじゃん入れたビオランテが基礎編で、そこからさらにタイムスリップやら新設定のリメイク怪獣やらを出して一足も二足も飛躍していった応用編が『キングギドラ』だと思いました。

 

 バラのオブジェが入り口を飾るシネ・ヌーヴォでバラの怪獣が暴れる映画を観るのも決して悪いことではないと思うんですよ。当時流行の遺伝子工学とゴジラを組み合わせ、さらに人間ドラマも軽快な『ビオランテ』は、何度見ても、白神博士の言動が支離滅裂で、世紀の大事件を前に、諸悪の根源たる本人はまるで他人事のように終始うっとりとしておりました。

 でも、G警戒態勢が流れる中、すぎやまこういちから伊福部昭の音楽メドレーで始まるオープニングはいつ見てもワクワクしてしまうのです。大森監督と特撮の川北監督、二人の若い才能がゴジラに新しい可能性を与えてくれたのです。当時は『そうそう、これこれ!』となりました。せりふ回しがどうにも説明臭くて気にはなりましたが。

 でもそんな説明台詞も、設定が無茶苦茶な『キングギドラ』になる時にならない。さらに軽やかになっているといった印象。だって未来人は来るわ、太平洋戦争だわ、メカキングギドラだわ、情報量がものすごいですから。

 日本の経済を根底から覆すために怪獣を送り込むという大胆な設定。その経済発展の礎になったのは第二次大戦に旧日本軍を助けた恐竜、そしてそれがまたゴジラになって日本を壊しに来る……。大森監督はこれでもかとばかりに大ぼらを吹きまくり、観客を翻弄していく。旧日本軍と恐竜という、ありえない組み合わせがたまらなくいい。南洋での怪異譚としても異色であり、それがまたぞくぞくさせてくれる。

  今見直すと、ゴジラ登場まで長いのですが、それでも飽きさせず、ゴジラが出てからは北海道戦→新宿決戦まで畳みかけるような展開。都庁でメカキングギドラが出現した瞬間、隣に座っていた高齢の女性がググっと身を乗り出していた。あのキングギドラをメカにするという、無謀かつ斬新なアイデアは公開30年経っても人を魅了するのだった。

 そして上映後は、超大怪獣でおなじみ怪獣談話室タイム。あっという間に久慈は売切れ、関係者でもなんでもないおっさん二人のトークが延々続くのでした。

 すべて終了し、外に出てみると、朝から降っていた雨がすっかり上がっていた。ビオランテがまた出てきそう。

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