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【575/1096】恵みの雨嵐

きみが亡くなった日
いつになく大雨になった
大声で泣いても
その声をかき消すほどの嵐

わたしはひとり病室で
何度か開かない窓を開ける
ここから落ちたら死ねるかな

呆然としながら一夜をすごす
ときおり看護師さんが
様子を見にドアを開ける
ベッドの上の膨らみを確認して
また去っていく
その様子をぼんやりと
天井を見上げながら感じていた
雨足は強くなるばかり
いまでは
あのときの雨はきみからの
メッセージで
形を失ったきみは雨になったのかな
なんて都合好く考えている

春は嵐が多い
節目時の出かけるときに限って
大雨がふる
また雨か
そう思いながら
きみからの祝福ではないか
なんてまた都合好く思う

触れることも伝えることもできないから
自然の力で
とくにきみは水が好きだったし
いまは雨になって
こちらへなにかを
伝えてくれている
きみは嵐のように去って
また嵐のように現れる
悪くない 悪くないよね

そう思えば春の嵐もいいものだ
きみからのメッセージ
祝福の雨
春の嵐はまだつづくようだよ
おかえり
庭の緑も喜んでいる
そしてまた晴れる

いつもありがとう
残された者の日々