40年越しで完結した、レナルド アンド クララ〜ローリングサンダーレビューmovie 1975を観た

一番、生で体験したかったディランが、 見事に、記録された2時間22分! 最初は、81年のミックジャガーのステージ衣装に勝るとも劣らない、何かの罰ゲーム的な、寝てる間にスタッフにペイントされたとしか思えない白塗りのディランなんだけど、コンサートが進むにつれて、バンドのマジックというか、その場でディランが発している気のようなものが、尋常でないテンションだったのが伝わってきた。後半には、メイクが少しずつ取れて、色々な意味で、ディランの 素顔が見えてくる展開になっているところが、その希少性を明らかに高めている。 「あれはディランなりのグラムへの回答だ」と、かつて渋谷陽一も話してたが、今回、ディラン自身の言葉で、あのメイクは、日本の歌舞伎や某KISSの影響だったことが白日の下に晒されたのに爆笑した。 ディランの60年代の傑作群(特に「激しい雨が降る」のバンドアレンジは最高!) 「ハッティ・キャロルの寂しい死」は、明らかにスタジオ版を軽く超越する出来だし、ツアーの直前にリリースされた「運命のひとひねり」「ハリケーン」に代表される、実際にあった事件を歌にした、いわゆるトピカルソングがライヴの場で、ぐんぐん切れ味を増して、ディランの歌と、バンドの演奏が凄まじい化学反応を起こしていく様が、ドキュメントされている。 このツアーのフィルムは、かつてディラン自身がツアー後に編集したが、一部に公開されただけで、お蔵入りになった「レナルド&クララ」がベースになっている。76年当時は、「タクシー・ドライバー」のいち監督に過ぎなかったマーティン・スコセッシが、新たに提供された素材を加え、短い制作期間の中、見事にまとめ上げた。実質的な決定版はこれ、と声を大にして断言したい。 2019年のディラン自身を語り部に据えるという、これ以上ないアイデアで、1975年秋から冬にかけての、アメリカ建国200年の前年に行われた、このツアーの秘密を解き明かす。 更にジョーン・バエズや、スカーレット・リヴィエラ他、当時を知るバンドメンバーやスタッフから細かにコメントをとり、適切なタイミングで挟まれいく。ネタバレ防止のため 今は名前は伏せるが意外なあの女優も、親子でディランファンで、ツアー初日を観ていたことに驚いた。当時の写真も含めて、知られざる秘話をコメントしているのも必見。 後は、ずっと長い間、観ていると先に視覚が白旗を上げてしまうような劣悪なイリーガル素材を泣く泣く観ていた、いちファンにとっては、夢のような場面が、きちんとリストアされた映像にブラッシュアップされて、収まるべき所に収まった印象。少々メンヘラ入ってるみたいな、会場に乱入したパティスミスのポエトリー・リーディング、「カディッシュ」を朗読するアレン・ギンズバーグ、どっこい生きてたランブリング・ジャック・エリオット。ジャック・ケルアックの墓参りをするディランとギンズバーグ。超絶イケメン、サム・シェパード。その他諸々。 惜しいのは、ツアーバンドの事実上の音楽的リーダーだったと思われるミック・ロンソンと、ロブ・ストーナーの2人からも、現在の視点からのコメントを訊いてみたかったこと。 時間的な制限もあったのかもしれないが、日本語字幕が、ありえないぐらいの誤植の山だったので それを完全なものに差し替え、途中からコメンタリーが挿入されたライブ曲も含めて、全曲の完奏版をコンプリートしての リリースを望みたい。あ、後は第2期1976年の「激しい雨」のTVスペシャルも、、時代を感じさせるテレビ東京放送版の垂れ目の字幕も見られたら、最高だな!             

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