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【税金Q&A】決算賞与を通知して未払計上する

<質問>期末までに支給しなければ、決算賞与は損金に算入されませんか?


<答え>

 決算賞与は、期末までに支給すれば問題なく損金に算入されます。ただ、資金繰りや事務処理の都合で翌期に支払いがズレ込むこともあります。      
 業績が良好な当期決算にかかる賞与は当期の費用として計上することで、収益と費用を対応させ、納税額も軽くしたいですね。そこで当期末までに、すべての従業員に支給額を通知し翌期1か月以内に通知どおり支給すれば、未払いの決算賞与を損金算入できることとなっています。

(注)損金算入・・・会計で費用損失として経理した項目につき税務も認める(文句を言わない)こと。反対に、会計で費用損失として経理した項目を、税務では認めないことを損金不算入といいます。

◆ 法人税法の基本

 法人税法では、賞与の未払計上や賞与引当金繰入額の損金算入を認めず、支給日において損金に算入されます。
 未払金や引当金を認めるということは、その分の費用や繰入額が増えて、利益(所得)が減少します。所得が減少すれば、国の税収も減少します。
 そのため、法人税法は未払金や引当金の計上には否定的なのです。
 税務は「現金主義」の立場をとっているといえます。

 具体的には、従業員に対する賞与および使用人兼務役員の使用人としての職務に対応する賞与は、原則として、現実に賞与を支給した日の属する事業年度において損金算入されます。
 

◆ 決算賞与は未払でも損金算入される

 ただし例外として、次の3つの条件を満たしている場合に限り、従業員に賞与支給額を通知した日の属する事業年度(当期)の損金に算入されます。

(1)その支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること
(2)通知をした金額を、その通知をしたすべての使用人に対し、その通知日の属する事業年度終了の日の翌日から1カ月以内に支払っていること
(3)その支給額につき、通知をした日の属する事業年度で損金経理をしていること(賞与 ×××/未払金 ×××)

 損金経理とは、確定した決算において費用または損失として経理することをいい、このケースでは賞与として費用計上することを要求しています。

 たとえば、3月決算法人が3月31日までに従業員全員に決算賞与の支給額を通知して、翌期1か月以内(4月30日まで)に通知どおりに支給すれば、当期において未払計上により損金算入されます。


◆ 給与規程を要チェック! 

 決算賞与の未払計上については、ひとつ注意点があります。
 給与規程において、支給日に在職する従業員のみに賞与を支給することとしている場合に、その通知は「すべての使用人に対して支給額を通知する」という条件を満たさないものとされてしまいます。

 つまり、通知をした支給額について、退職者には賞与を支給しないこととしていたときは、期末日に債務が確定しているとはいえず、未払賞与を損金算入できません。
 支給額の通知後に退職した人に賞与を支給しなかった場合だけではなく、退職者がいなかったため、結果的に通知額を全額支給した場合も未払賞与は損金算入できませんのでご注意ください。

 通常、賞与は支給日に在職する従業員に支給する会社が多いと思います。
 たとえば給与規程で、

1.夏季賞与の支給対象期間は11月1日~4月30日とし支給日は7月10日
2.冬季賞与の支給対象期間は5月1日~10月31日とし支給日は12月10日

 と明記するとともに、かつ、支給日に在職する従業員に対して支給することを定めているケースです。
 このような場合には、支給対象期間の末日まで勤務していたが、その後、支給日までに退職した人に賞与は支給されません。会社の立場からすると、この退職者に対しては賞与を支払う義務がないということです。

 そのため、「決算賞与についてはこの限りでない」あるいは「決算賞与は期末日に在職する従業員に対して支給する」などの文言を追加しておくことが望ましいといえます。
 決算賞与について何も定めがない場合にも、「夏冬の賞与と同じように、支給日に在職する従業員に対してのみ支払う義務があるのではないか」と、未払計上を否認される恐れもあるので要注意です。



 この他、就業規則などに定める支給予定日が到来している賞与について、資金繰りの都合などで支給が遅れている場合は、その賞与の支給予定日または従業員等にその支給額を通知した日のいずれか遅い日の属する事業年度の損金に算入されます。

 決算賞与を支給する場合は、業績の良い当期に損金算入しましょう!


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