見出し画像

5.一時金の得する受け取り方


給付金の受け取り方は3つ


 iDeCoで運用している資産残高は、受給権が発生する年齢(原則60歳)から75歳までの希望する時期に老齢給付金として受け取ることができます。
 ①一時金、②年金、③一時金と年金受け取りを合わせた併給のいずれかの受給方法を選択できます。

一時金は退職所得に分類される



 一時金による受給では、いったん運用資産の全てを市場で売却したうえで受け取ります。
 そのため、事務手続きで決められる売却日が、運悪くマーケットの暴落時にぶつかると、受け取り額が大きく目減りする恐れがあります。
 手続き開始の少し前に、運用中の投資信託を元本確保型商品に預け替えスイッチング)しておくと安心です。

 一時金の受け取り額は、所得税での「退職所得」に分類され、退職所得には「退職所得控除」が適用されることで税負担が軽減されます。

 退職所得は収入金額から退職所得控除額を差し引き、さらに2分の1と
した金額を課税対象とします。他の所得と分離して所得税は超過累進税率
により、住民税は一律10%の税率により課税されます。

退職所得は他の所得と分離して課税します



 管理運営機関またはその委託先に裁定請求書類、印鑑登録証明書、前年
以前19年内に受給した退職所得の源泉徴収票などとともに「退職所得の受
給に関する申告書」を提出することで所得税と住民税が源泉徴収されます。 
 原則として、確定申告の必要はありません。


加入年数20年ならば、800万円まで非課税


 退職所得控除額は勤続年数(iDeCoは加入年数)に応じて、表のとおり、計算します。20年なら800万円、30年なら1,500万円という具合に、加入年数が長いほど退職所得控除額が増えることにより税負担が軽減されます。
 勤続年数(加入年数)の1年未満の端数は切り上げますので、たとえ1日でも1年として計算します。

加入年数が長ければ退職所得控除額も増えます



他の退職金がある場合の留意点



 iDeCoの一時金とともに他の退職金を受け取る場合、または過去に受け取っている場合には、勤続年数が重複する期間(1年未満の端数は切捨て)の退職所得控除を二重に差し引くことがないように調整がなされます。

 他の退職金には、会社の退職金のほか、企業型DCの一時金、小規模企業共済の老齢給付金も含みます。


 同じ年にiDeCo一時金と他の退職金を受け取る場合と、異なる年にiDeCo一時金と退職金をずらして受け取る場合の留意点を見ておきましょう。


同じ年に2つの退職金がある場合


 同じ年に、他の退職金とiDeCoの一時金を受け取る場合は、両方を合計した勤続年数から重複期間を除いた期間、つまり、それぞれの勤続年数の「いずれか早い日」から「いずれか遅い日」までの期間を勤続年数として退職所得控除額を計算します。

 ただ、同じ年に受け取る退職金は合算して課税されるため、収入金額が退職所得控除額を超える可能性があり、また適用される税率も高くなります。


年をずらして退職金を受け取る場合


 違う年に2つの退職金を受け取る場合にも、一定年数以上の間隔が空いていなければ退職所得控除額の調整が行われてしまいます。
 具体的には、2回目の退職金受け取りの前年以前4年内2回目がiDeCoの一時金である場合は前年以前19年内)に支払を受けた他の退職金がある場合、重複期間に対する退職所得控除額は使えないという調整がなされます。

 そのため、前回の退職金の受け取り時に退職所得控除額の全額を使い切っている場合(退職金が退職所得控除額よりも大きかった場合)は、今回のiDeCo一時金受け取り時には、重複する勤続年数に該当する退職所得控除額は使えないこととなります。

 ただし、前回の退職金受け取り時に退職所得控除額を使い切っていない場合(退職金よりも退職所得控除額が大きかった場合)には、使い残した(控除しきれなかった)退職所得控除額を今回のiDeCo一時金受け取り時に使えるように、調整(前回の勤続期間と重複期間を計算し直した)したうえで、退職所得控除額を計算します。


退職所得控除をフルに活用するには


 退職所得控除額は、2回目の退職金受け取りの前年以前4年内(2回目がiDeCo一時金である場合は前年以前19年内)に支払を受けた他の退職金がある場合に、重複期間に対する調整が行われてしまいます。

 他の退職金を受け取ってから20年後にiDeCo一時金を受け取る、あるいはiDeCo一時金を受け取ってから5年後に他の退職金を受け取れば、重複期間の調整はされず、2回とも退職所得控除額のフルに適用できます。

 たとえば、会社の早期退職金を55歳で、iDeCo一時金を75歳で受け取る、
あるいはiDeCo一時金を60歳で、他の退職金を65歳で受け取れば、重複期間
はなく退職所得控除額をフルに活用して税額を軽減させることができます。



重要★  iDeCoの運用資金を老齢給付金として一時に受け取る場合は、元本確保商品に預け替え、他の退職金と勤続年数の重複を確認しましょう  


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?