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【お散歩日記】世田谷代田〜下北沢②

世田谷代田駅から下北沢駅まで続く道は最近再開発されたため、綺麗に舗装された道が続く。ここに住んでいる人はきっとお金持ちなんだろうなとか思いながら、近くにある住宅街を眺める。途中であった保育園はガラス張りでまちにひらけていて、園児のつくった作品が外から見られるような形で置かれていていいなと思う。

再開発と聞くと、それまであった街の風景が失われたことがあったのかなということに想いを馳せて少しだけ悲しい気持ちにもなる。この前お散歩した高円寺では、住民の根強い反対がおこる再開発計画の事情を少しだけ知った。今ある文化や人々の生活と再開発に至る理由や事情との折り合いの付け方は難しいのだろうなと思う。
事情も知らない外の人間がとやかく言う権利もないけど、だからこそ無責任にあの散歩の街並みやサブカルなカルチャー、まちの人の日々の関わりが変わらず残っていたら嬉しいなとぼやく。

歩いていく道中で、素敵なお店を見つけた。

月日(つきひ)という日記を取り扱ったお店。
落ち着きのある綺麗な店構えで、静かに店員さんが注文の入ったコーヒーを注いでいる。

いらっしゃいませ〜

意識しないと店員さんにも基本人見知りな私は目を合わせられず、そのまま店内に目を配る。入ってすぐ右側には、今まで見たことない日記がずらりと並んでいる。

一番印象に残った日記はこちら。

月や太陽の自然な時間の循環に合わせた時間感覚を提供してくれる手帳。どうやって使うのが楽しいのかなと考えながら、いつのまにか自分に染み込んだ社会的な時間の捉え方から少し浮遊できそうな時間を与えてくれる予感のする手帳とそのアイデアが魅力的だと思った。

そして、日記の隣には色々な人が書いた日記やエッセイが並んでいる。スケッチブックに書かれた日記、遠い昔の文学としての日記、外国の方のエッセイの翻訳…。
人の物の見方や感じ方を追体験できるエッセイは本の中でも好きなジャンルだが、私の触れたことないエッセイはこの小さなお店の中だけでもこんなにあるんだなあ。
私の人生まだやることいっぱいあるぞ!笑

今日は詩集だけ持っている作家さんのエッセイの古本を330円で購入。立ち読みした時に入ってきた文章と、古本ならではの年季の入った紙の匂いと質感に惹かれた。

「これお願いします。」
「330円です。袋は大丈夫ですか?」
「いえ、袋お願いします。」

チェーンじゃないお店は袋もオリジナルな場合が多いから、あえて袋やカバー付きを選ぶ。ちなみに、高円寺の雑貨屋さんでは可愛い紙袋にホチキス止めで紐をつけて持ち手にしてカバンの形にしてくれたり、神保町では古いチラシをブックカバーにつけてくれたりするんです。

ラッピングを待っている間、レジ下にあるまだ見ていなかった本棚に気になる本があったので、その場にしゃがみ込んで見てみた。客が急にしゃがみ込んだら驚かせちゃうかと思ってすぐ立ち上がったのだが、店員さんが声をかけてくれた。

「その本、うちのお店でワークショップしている写真家さんの本なんです。自分のおばさんにひたすらカメラを向け続けて、向き合った記録で。」

なんと…!こんな人見知りで陰な雰囲気を纏っている私に話しかけくれるなんて!笑

「そうなんですね〜!みてみます」
そう言って買った本を片手に抱えながら見入ってみる。
ページを繰るにつれて、少しずつ痩せ細っていく様子に気づき、写真を通してこの方と向き合ったこの写真家さんの時間を感じる。

店員さんに、この方はどんなワークショップをしているのかと尋ねると、「日記を書くワークショップを3ヶ月くらいやってたんです。今はやってないけど、今年か来年またやるかも知らないからもしよかったら!」と教えてくださった。

いいなあ、日記を書くこともそこに書かれる内容も、極めて個人的な営みだけど、それを誰かと共有しあったり少し覗きあったりしてるのかなあ。そういうのが好きな人のコミュニティもなかなか面白そうだし、人それぞれの日々の大切にする仕方を知りたいな、なんて思う。

その写真集の巻末には日記が書かれている。
店員さんの抽出したティーをボウルにためた氷水で急冷しているカラカラとした涼しい音を聞きながら、もう少しの間この空間に入り浸る。

「引き止めちゃってすみませんね、!」

「いえいえ、話しかけてくれて嬉しかったです。素敵なお店だなと思って入ってみたら、色々見入ってしまって。またきます」

「じっくり店内見てくれて嬉しくてつい声かけちゃったんです、また待ってます」

何となく最近みた映画Perfect Days を思い返す。
主人公が古本屋で本を買う時、店員さんがその本の魅力的なところを一言だけ呟くんだよねえ。その一言になにか返すわけじゃないんだけど、それを嬉しそうに主人公は聞いて店を出る。日常のただそこにある些細なコミュニケーション、時間って何より豊かで愛おしく思える。

紙袋に包んでくれた本

その後も下北沢に向けて足取りを進める。

青い空にとぶ飛行機、意外と近く見える
駅前で畑作業、地域の人の集ういばしょでもある

下北沢駅についたけど、もう少し出発の電車の時間までゆとりがあるので周辺を散策する。
少し歩くと、こんなパン屋さんを見つけた。

外装かわいすぎないか?

内装もスヌーピーなどの色々なキャラクターで、黄色や赤をを基調にアメリカンで明るい雰囲気をまとう。

わードーナツも美味しそう(@ ̄ρ ̄@)

左上の白い「揚げないドーナツ」をふたつ買ってお店を出る。

ちなみに、最後のドアノブなのですが…

『ノブ右手ダメ✖️左手で。』

なんで右手がダメなのかあんまりわかんなかった…何でだろう。戸がギシギシするから右手だと開けにくかったりするのかな?

2時間にも満たない時間の散歩だったけど、今日も晴れていたし、豊かな時間だったな。そんなことを思いながら歩くとすぐ下北沢駅に着く。下北沢周辺にはおしゃれ好きな若者の姿が多くなる。さすが古着のまち。カルチャーのまち。

最後に、
駅前にある花屋さんの花に目が止まった。

カスミソウ

この花のポップを書いた人は絶対silent好きだ!と思った。最後の方、奈々が春尾に渡す花束から「おすそわけ」といって湊人に渡したカスミソウ。「おすそわけ」が互いにまわりまわって、最後はポッケやカバンの中からちょこんと白い花々が顔を出しているのがかわいらしい。
そっか、花言葉まだ気にしたことなかったけど、カスミソウの花言葉は「感謝」とか「幸福」だったんだ。なんて素敵なおすそわけだ。

二つ買ったドーナツも、これからおすそわけしよっと。


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