【マーケティング解説③】中小のマーケティング

・前回、マーケティングの戦略として以下6つの要素を統一感を持って決める方法をご説明しました。
1提供価値:どのような価値を提供するのか
2顧客:誰に提供するのか
3競合:顧客に対する提供価値が競合する先はどこなのか
4差別化:顧客が競合ではなく自身を選んでくれる理由は何か
5強み:競合が自身を模倣することができない理由は何か
64P:戦略を実現する4つの手段。プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション

・ですが、実際のところ、どれだけ経営資源を保有しているかによって戦略はある程度決まってしまいます。
・具体的には、差別化の方向性として、①提供価値を若干犠牲にして手に入れるハードルを下げる、②提供価値の高さ、③提供価値のカスタマイズがありますが、①で勝負できる先は経営資源が豊富な大企業に限られると言えます。
・つまり、経営資源の限られた中小企業が選ぶ方向性は、攻める顧客の範囲を絞り込み、経営資源を集中させて②提供価値の高さ、または③提供価値のカスタマイズ、で差別化を図る必要があります。

・以上の観点から、ここでは中小企業の立場に立ったマーケティング戦略の立て方のポイントについて説明したいと思います。

顧客

・経営資源の限られた中小企業は、対象とするマーケットを絞り込み、経営資源を集中させる必要があります。
・では、どのように絞り込めばよいのでしょうか。以下の3つの方向があります。

①マーケットの一部を取り出す
・ある程度規模感のあるマーケットの一部だけに特化するものです。
・例えば、お寿司業界であれば海苔巻きだけに特化する、美容・理髪業界であればカットだけにしてパーマ・カラー・シャンプーはなしにする、といったものです。

②マーケットの一部の属性を変えて新しいマーケットを作る
・ある程度規模感のあるマーケットの一部の属性を変えて新たなマーケットを作るものです。
・例えば、ハンバーガーのパンをお米にかえてご飯バーガーにする、どら焼きの中身をあんこからアイスクリームに変える、というものです。

③地域に特化する
・ある程度規模感のあるマーケットのうち、地域を絞り込むものです。
・例えば、北海道限定のコンビニチェーンを展開する、茨城の水戸周辺限定のQRコード決済サービスを提供する、といったものです。

差別化

・顧客にとって選ぶ理由を作ることが差別化ですが、先ほども申し上げた通り、経営資源が限られた中小企業にとっては、②提供価値の高さ、または③提供価値のカスタマイズが方向性になります。

・そして、この差別化は、顧客の頭の中で認識されてはじめて機能するものです。
・この顧客の頭の中で認識されるイメージこそがブランドです。
・ブランドを確立するためには、顧客が認知しやすいような仕掛けが必要になります。例えば以下のような仕掛けがあります。(前回同様、自販機のおしるこで考えてみます)

①体験・消費できる場所・時期・数量が限定されている(自販機で買えるのは冬季限定)
②情緒に訴える(温かさをイメージできる湯けむりがたったおしるこの写真をパッケージに使う)
③値が張る(定価の120円で販売する)
④独自性がある(砂糖がいらない糖度を持つおしるこ専用のあずきを使用)
⑤ストーリーがある(原料のおしるこ専用のあずき開発の10年かかった)
⑥受賞記録など第3者からの評価・認証がある(海外のセレクションで金賞受賞)

・こうした仕掛けを通じて、同じような提供価値を提供する商品の集団(商品のカテゴリ)において、一番に顧客が思い出す企業になる必要があります。
・というのも、一度顧客の心に定着したブランドを変えることは難しいからです。(コーラと言えばコカコーラ、ハンバーガーといえばマクドナルド)
・逆にいうと、一番手ではない企業の場合は、提供価値に戻り、一番手企業が提供するものと反対の属性を提供することで、相手の差別化要素を無効化する戦略もアリといえます。
・例えば、自動車市場において、高級から大衆向けまでフルラインナップを展開する一番手企業のトヨタに対して、テスラはトヨタが手薄な電気自動車と搭載ソフトウェアに注力することで、新たに電気自動車市場を生み出しました。
・一方で、実はトヨタもかつてはテスラと同じ立場でした。1960年代の米国で、やはりフルラインナップを展開する一番手企業のGMに対して、小型車に特化することで市場を開拓しました。

まとめると、中小企業のマーケティングにおける戦い方は、①提供価値と顧客を絞り込み、②顧客に差別化を認識してもらえるような仕掛けを通して、選んだ戦場(商品カテゴリ)の中で一番手企業になる、というものです。


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