【3分解説】サイクル投資③(投資候補となるETF)

・前回は、長期的に利益成長が見込まれる業界とはどのようなものかご説明しました。

・具体的には、先進国でグローバルに展開する資本力のある企業で、生活用品・ヘルスケア・ITプラットフォームを展開する企業群としましたが、では、どのようなETFが投資候補となるのでしょうか。ここでは、SBI証券や楽天証券等、国内の証券会社経由で手軽に購入できるETFを取り上げます。比較対象としては、世界の景気サイクルに最も大きな影響を与え、かつ資本市場からの要求水準の高い米国の上場企業の代表的指数であるS&P500指数を使います。

生活用品
①ブラックロックの「iシェアーズ グローバル生活必需(KXI)」(経費率0.43%)
②バンガードの「バンガード米国生活必需品セクター(VDC)」(経費率0.10%)

・まずは過去のリターン・リスクを見てみましょう。以下の図の通り、どちらも累計リターンはS&P500を下回りますが、リスク、特に2008年のリーマンショックの際など景気悪化時の株価の下落が抑制されていることが確認できます。
・逆にいうと、景気回復時のリターンはS&P500に若干劣後しています。
・運用パフォーマンスでみると、VDCが経費率も低く、シャープレシオも高いことから優秀な成績と言えます。

※ここでのリターンは累積リターン(年率)、リスクは標準偏差(年率)を用いています。標準偏差とはバラツキのことを指します。例えば、平均のリターンが1%、標準偏差が5%のETFがあるとすると、そのETFのリターンは2/3の確率で、-4%(1%-5%)~6%(1%+5%)になるということです。逆にいうと、このETFのリターンが-4%を下回る確率は1/3以下ということです。このように、標準偏差を用いることで、どのリターンが出現するか定量的に表現できる、ということになります。
※また、標準偏差の見方を変えると、標準偏差が大きいほど、ばらつきが大きくなりますので、マイナスのリターンだけでなくプラスのリターンを確保できる可能性がある、ということになります。つまり、標準偏差が大きいことが必ずしも悪い、というわけではないです。
※シャープレシオとは、ETFの運用成績を図る指標です。標準偏差を基準として、リターンがどれだけ稼げているかを示すものです。標準偏差が大きくても、この数値が高ければ標準偏差(リスク)見合いでリターンも稼げていることを意味しますから、優れた運用をしていると言えます。
※ただ、シャープレシオが高くても、投資家の好み(リスクの大きさをどれだけ許容できるか)によっては、リスクが高ければ投資はしない、という判断もあり得るということです。例えば、上の例で言えば、リスク10%以上は許容できない、となれば、そもそもどのETFも投資対象にはなりえない、ということになります。

・次に、ETFの上位組入銘柄内容を見てみましょう。
・以下の通り、どちらも組入上位銘柄はほぼ同じ銘柄で、営業利益率はウォルマートを除き2桁・売上成長も堅調な優良企業で占められています。ウォルマートは企業の方針(マージン確保より顧客還元)がありますし、また絶対値(売上高はナント60兆円強)が大きいです。
・VDCは米国企業に特化する形ですが、KXIは欧州企業(ネスレ・ユニリーバなど)も組み入れられています。近年の業績はネスレ・ユニリーバが他の銘柄(米国企業)に若干劣後(それでも営業利益率2桁の超優良企業ですが、、、)していますが、見方を変えると、先ほどのVDCとKXIのリターン格差は米国企業のほうが業績が良好だったことに起因していると言えます。

ヘルスケア
①ブラックロックの「iシェアーズ グローバル・ヘルスケア(IXJ)」(経費率0.43%)
②バンガードの「バンガード米国ヘルスケア・セクター(VHT)」(経費率0.10%)

・まずは過去のリターン・リスクを見てみましょう。以下の図の通り、IXJの累計リターンはS&P500を下回りますが、VHTは大きく上回っています。
・2008年のリーマンショックの際など景気悪化時においては、どちらも株価の下落が抑制されていることが確認できます。
・一方で、期間中はVHTのリターンがIXJをほぼ上回って推移していることが確認できます。
・運用パフォーマンスでみると、VHTが経費率も低く、シャープレシオも高いことから優秀な成績と言えます。

・次に、ETFの上位組入銘柄内容を見てみましょう。
・以下の通り、どちらも組入上位銘柄はほぼ同じ銘柄で、営業利益率はユナイテッドヘルスを除き2桁・売上成長も堅調な優良企業で占められています。また、VHTのほうが売上が2桁成長した企業が多いことが確認できます。
・VHTは米国企業に特化する形ですが、IXJは欧州企業(ロシェなど)も組み入れられています。先ほどのVHTとIXJのリターン格差については、売上成長の大きくパフォーマンスも良好な上位銘柄への集中度がVHTのほうが高いことによるものと考えられます。

ITプラットフォーマー

①ブラックロックの「iシェアーズ グローバル・テクノロジー(IXN)」(経費率0.43%)
②インベスコの「インベスコQQQ(QQQ)」(経費率0.20%)
・まずは過去のリターン・リスクを見てみましょう。以下の図の通り、IXN、QQQともに累計リターンはS&P500を大きく上回っています。
・2008年のリーマンショックの際など景気悪化時においては、どちらもS&P500と同程度に株価の下落が見られます。
・また、期間中はQQQのリターンがIXNを大きく上回って推移していることが確認できます。
・運用パフォーマンスでみると、QQQが経費率も低く、シャープレシオも高いことから優秀な成績と言えます。

・次に、ETFの上位組入銘柄内容を見てみましょう。
・以下の通り、IXNはGAFAのうちアップルしか入っておらず、カード会社(ビザ、マスターカード)、半導体関連(エヌビディア、TSMC、サムスン電子、ASML、ブロードコム)の組入が確認できます。
・一方で、QQQはGAFA全て組み入れられていますので、先ほどのQQQがIXNをリターンで大きく上回ったのは、QQQのほうがGAFAの成長を取り込めた結果といえます。

・以上、具体的な投資対象としてのETF銘柄の候補をご説明いたしました。
・次回は、これらのETFに対して、具体的にどのようなペースで投資サイクルに沿って売買すればよいのかご説明いたします。


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