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7月1日 バカンス④~酒と豚とお喋りと~


 バカンスも四日目。朝皆で起床をする。海に行こうか、という案が前日出ないでもなかったが、もう一回海へ出て泳ぐには僕たちの肌はあまりに弱すぎ、体力は無さすぎ、また、それぞれの住む場所へと帰った後の生活をなげうつ覚悟も若さも無く断念。
「だって座間味まで来てるんだぜ、やっぱり海にいかないと」などという強硬派が今回の旅行に混じっていなくて本当に良かった。「やっぱり海」派の気持ちもわからなくはないだけに僕も了承していた可能性があるが、やはりそんなことをしては後々しんどくなってしまっていたであろう。
 とにかく9時半チェックアウトということで各々散らかした荷物を片付け、シャワーを浴び、着替え、派手な髪色の女将さんに港まで車で送ってもらう。といっても我々が乗り込む予定の高速船は14時出発である。まだ随分時間がある。こうなるともう雑談である。

 まずは皆との程近くにある「なぎさ」という商店でマグロとカジキの刺身盛を購入。さらに「こみね商店」でオリオンビールとから揚げを購入し、ビジターセンターのテラスで一杯やり始める。
生みから吹き上がってくる風が大変気持ちが良い。話も弾む。お互いの中学校の珍先生、珍同級生について話をする。

港。無人島への渡し船やダイビング船がひっきりなしに出入りする

 1時間半ほど喋った後に、歩いて数分のところにあるオープンテラスの店に場所を移す。ここがアメリカンと言うかメキシカンと言うか、ともかくアメリカ大陸風のしつらえで雰囲気が変わって非常に良い。座間味の異国情緒に慣れてきたこの時期に新たな異国情緒。お客さんも外国人ばかりで異国情緒はいや増していく。

風があって案外涼しい
こういう写真を撮るものだ、ということで、撮る

 ここで僕はジャックダニエルをロックで二杯。アメリカンな気分で気持ちが大きくなってしまった感はある。ここでは難しい言葉を使いたくなるよね話をする。普段から「立錐の余地」とか「軽挙妄動」とかそういう言葉を使いたくなってしまう話。玉木青がそういう言葉を使って魅力的に喋るのだ。僕もすいすいと出るようになりたい。当然の如く上岡龍太郎師匠の話などにもなる。世界史の話は面白かった。中国王朝・宗の話、イスラム教の話。といっても全然真面目な話ではなくたいていまぜっかえしのばかっぱなしに収束していく。
僕は陳腐化する、という種類の会話がたいへん好きなのでこういう、まぜっかえしていい関係性、信頼、みたいなのがあると非常に楽しい会話になる。大いに盛り上がる。

 2時間ほどこの店にも滞在し、ちょっと混みあってきたこともあり席を立つ。次は昼飯だ、と島内歩き回るが目当ての店がいっぱいだったり、休日だったりしてなかなかいい店が見つからない。

昼飯がみつからない

最後に見つけた店でタコライスを食べる。玉木青はまたぞろビールを飲んでいた。
玉木青の頼んだサーターアンダギーが来ないうちにだんだんと高速船の時間が近づいてくる。僕は土産物を買いたかったので、先に港近くの土産物屋へ。
とてもかわいらしいクリアファイルと、プリントじゃない注染のウミガメ手ぬぐいがあったのでこれを購入。こういう観光地で高座で使えるような、非プリントの手ぬぐいを販売しているというのは非常に嬉しいことである。

 追いかけてきた玉木青、横山清正と合流。揚げたてのサーターアンダギーは持ち帰りにしてもらったようである。高速船に乗りこむ。

 行きの高速船は寄港地があり70分の航海であったが帰りの高速船は寄港地なしの那覇直行。この20分のおかげで随分短い航海に感じ楽であった。
高速船の船内ではテレビが流れている。YouTubeの動画を流して、それがフェイクかリアルかを設問したりする番組であった。今はテレビがYouTubeをレコメンドするようなことになっているのだ。YouTubeの力はすごい。どういう契約でテレビに動画が流れているのかが気になる。動画を作った人にはどういう形で使用料などが払われるのか。YouTube自体にもある程度支払いをしなければならないのか。支払いをするのならばそれはテレビ局がするのか、それとも動画作成者がテレビ局から金銭を受け取ってその中から何パーセントかをYouTubeへの支払いへと充てるのか。調べようとも思ったが、いつかそういうテレビで取り上げられた時に知ればいいか、と思って調べるのを辞めた。あと、調べたら船酔いしそうだったし。YouTube、登録ヨロシク!

 那覇についてタクシーで牧志・国際通り方面へ向かい、この日の宿に投宿する。リゾート、という名を冠している割には、こう、なんというか、不穏というか、なにか、こう、うらぶれ感のある、そういう宿で一同に動揺が走る。部屋に入ってみると二段ベッドが2台ある。エアコンは1時間100円。3時間まで連続稼働できる。どうにも立て付けも隣の部屋との仕切りやドアにベニヤ感がある。
しかし驚きの一泊800円。これはドヤってやつじゃないか、と思いなおすとかなり広くていい部屋に思えてきた。
しかし玉木青は東京アーバン業界男なのでこのドヤ・リゾートにぎょっとしたのか別にカプセルホテルを予約、そちらに泊まるという。
関西泥男衆である僕、横山清正は「一緒にいようぜ」と誘うが聞く耳は持つものの芯が強くカプセルホテル泊を譲らない玉木青であった。

沖縄には猫が多い

 ドヤ・リゾートについたのが16時前、17時にはここを出て、まず玉木青のカプセルホテルへ。さらにそこから翌日の「水曜どうでしょう新作ライブビューイング」の会場である桜坂劇場へ行く。僕もチケットを取ることができた。横山清正も。

いい雰囲気の劇場

 電車に乗って旭橋へ。駅から少し歩いたところにあるあぐー豚を食べさせてくれる店へ。
この店が非常に美味しく感動的であった。あぐー豚のしゃぶしゃぶを食べたのだが、ロースが大変な美味しさである。脂が甘く、それでいてしつこくない。かみしめると溶ける脂と肉のうま味で両目をつぶって頷かざるを得ない。またこの店のオヤジさんが良い人で、無茶苦茶喋りかけてくるタイプではないんだけれど、料理を持ってきてくれるたびに、押しつけがましくない感じで「美味しいでしょ」「締めはソバだよ」「レタスはさっとね」「出汁は鳥でね。最後は豚の出汁もでるからね、美味しいよ」「ねえ、美味しいでしょ」「あくもでないよ、美味しいよ、いい脂」「甘いしょ」などと一言づつ残していく。
この人は自分の出している料理のことを美味しいと思っていて、それを美味しい美味しいと言って食べられるのが嬉しいんだろう、という感じが強くする。調理実習で習った料理を家族に振舞った時の喜び、みたいなものを押しつけがましくなく、サービスとして洗練させながら、味も洗練させながら、稚気として持ち続けているような接してくださり方で涙が出そうになる。実際非常に美味しかった。満足をした。一同感動であった。

あぐー豚



 そこからカプセルホテルに逃げ込もうとする玉木青を説き伏せてドヤ・リゾートに戻ってくる。ドヤ・リゾートは三人分の料金を払い済みだから彼は居ても全く問題ないのである。

今井議員


 近くにりっかりっか湯、というみょうちきりんな名前のスーパー銭湯があるというので出かけて行く。非常に混みあっていて僕は込み合っている風呂というのが大変苦手なのですぐに出てしまったが、強烈すぎるジェットバスは一浴の価値ありと断じる。

りっかりっか湯。豪傑ジェットバス



カプセルホテルに再び逃げようとする玉木青に「寂しい」「いて欲しい」などと部屋に留め置き、そこからはもう恋愛の話を始めてしまって、そこから会話の在り方、我々男は女性にとって恐怖ではないのか、自分の人生の不全感や寂しさ、についての話になる。
不全感や寂しさ、となると僕が完全に当事者と言う感じなる。
結論としては・誘いたい人を怖がらずに誘う・行きつけのバーを見つける、という二科目を為していくべし、という結論となった時には午前2時。一体どれくらい喋ったんだ今日は、というくらいの雑談をかましての一日の終わり。3時間で止まる冷房に不安、どこかからあまりに響きすぎて来る、ホテルの一室としては考えられないデシベルのカラオケの歌声、を感じながら前日の日記を書いているうちにウトウト。なんとか書き終えて眠りにつく。

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