見出し画像

大好きな家を出た

19歳2ヶ月10日にして大好きな家を出た。
生まれてから、もしくは生まれる前からずっと私の事を大切にしてくれた人たちの元を離れるという。私は家族のことをずっと大切に思えていた訳ではない。困らせようとわんわん泣き続けたり、したい事のために屁理屈をこねたり、そんなことばかりだった気がする。

夜行バスは新宿から出発する。
お父さんとお母さんが車で送ってくれた。私は箱入り娘だ。レンタカー入り娘だ。
キャリーバックを車から降ろして、ガードレールの向こう側へやった。続いて私もぴょんと乗り越えた。鉄パイプをワイヤーで組んだようなやさぐれガードレール。その向こう側はまさに夜の新宿だった。

お父さんとお母さんに
「ありがとう!ありがとね!」
とカラッと挨拶をした。これが娘を送り出したモーメントとして両親の記憶に残っても差し支えないように、爽やかさを意識した。
なかなかいい挨拶だったのでは?

新宿の歩道、歩く道とは名ばかりの飲酒喫煙スペースだ。年齢国籍不明のダルそうな人々の間を歩く自分にどこかたくましさを感じた。数年前だったらおしっこを漏らしていた。絶対に漏らしていた!

キャリーバックがガラガラ音を立てていた。校庭に白線を引くアレみたいだった。
車を降りたところからまっすぐ伸び続けている。そのガラガラ音が今日までの生活と、これからの生活に線を引いているようで、一歩進むごとに涙が出てきた。号泣だった。
(全然カラッとしていない)

バスの中で電子音声のアナウンスが流れた。
大人しく座っているだけで、だんだん家から離れて、だんだん新しい生活に近づくんだなぁと思った。バスのフロントガラスの真ん中で交通安全お守りがキラキラ揺れていた。

「新生活頑張れますように」とお願いをした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?