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Meshell Ndegeocello~at Billboard Live Tokyo 2024.02.14

Funk、Jazz、HipHop、R&B、アフロビートなど様々なジャンルを横断し、唯一無比の世界を作ってきたマルチアーティスト/ベーシスト、ミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)。ずっと観たかったのですが、ジャズフェスティバルなどでは近年も来日していたものの、単独ライブの方がいいなと思い機会を逸してましたが、待望のビルボード東京でのライブ。
新作は、Jazzの名門Blue Noteからの「The Omnichord Real Book」。
Robert Glasperなど新世代のJazzと言われる気鋭のアーティストともレーベルメイトとなったわけですが、どうも彼女はJazzという言葉が好きではないらしく、ジャズミュージシャンは、ドグマ=守るべき教条にとらわれすぎるらしい。また、両親の死をきっかけにアフリカ系アメリカ人のルーツを見つめなおし、リシャやローマなどの西洋の物語とは違う、自分だけの新たな神話を作り出そうとしたそうです。
新作のタイトルは、「The Omnichord Real Book」。オムニコードというは、最近再発された日本のメーカーが80年代に開発した自動伴奏機能付きの電子楽器で、もちろんテクノロジーとはつながらないアナログなもの。

そしてリアル・ブックとは、70年代初頭にジャズミュージシャンが、スタンダートなど有名曲を採譜してまとめたジャムセッション用譜面


つまり、彼女がこのアルバムで表現しようとしたのは、現代では、普通に行われるコンピューターを介しての音楽制作から離れ、演奏するミュージシャンが自由に解釈できる楽曲のベースを作り、西欧的価値観が、崩れていくなかで、それぞれの神話を作る試みと言えます。

今回のライブでも、最新作で抱く印象そのままに、照明を暗くしたなか、サングラスをした彼女が、簡単な挨拶だけで、演奏を始め、それは、会場や我々の中に少しずつ、少しずつ深く沁み込んでいきます。そして気鋭の若手ミュージシャンたちによるスピリチュアル・ジャズが現代につながるような演奏は、徐々に熱を帯びてきますが、その音楽は、雄大で深く沈み込みながら、未来に開かれたもので、観ていている僕は、身体ではなく、まず脳がそして心が、熱くなる感覚を持ちました。ちなみに2曲目に演奏されたベースのリフは、オルタナ音楽を思い起こさせるものでしたが、曲が進むにつれ、それはCanの「Vitamin C」のカバーだとわかりました。先日、亡くなったダモ鈴木さんへの日本のファンのための追悼なのでしょう。

開演前のステージ。ミシェルはKORGの前で座りながらベースも弾きました。


ライブの後も「The Omnichord Real Book」繰り返し聴いており、それがより自分に沁み込んでいくのではないかと思いますが、David BowieがNYのMaria Schneider界隈の気鋭ジャズミュージシャンを録音した遺作「Blackstar」も思い出します。

アフリカにルーツを持つ人たち(奴隷として連れてこられた故、自分たちのルーツがわからず、同時の神話を持たない)が、宇宙や未来主義に自らのアイデンティティを探すというのは、サン・ラやP-ファンクそしてアース・ウインド&ファイアなどの人たちから、デトロイトテクノのアーティストまで、共通しており、最近は「アフロ・フーチャリズム」という言葉とともに、書籍も出ています。

最後に柳樂光隆さんによる素晴らしいインタビューを参考にさせて頂きました。


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