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静岡県の外国人材事情

「日本へ行ったら、富士山に登ってみたいです。」

これは、技能実習生面接の際によく耳にする定番フレーズだ。

そんな美しい富士山の風景と広大な茶畑で知られる静岡県は、豊かな自然と工業が共存する場所とあって、さまざまな業種において大勢の外国人労働者が活躍している。

中でもとりわけブラジル国籍者が多い点は目を引く。県内の外国人労働者の三割近くを占め、全国では愛知県に次ぐ第2位である。

これは、静岡県が、トヨタやホンダなどの自動車メーカーの関連企業が集まる地域であったことと、日系人への在留資格認定によるものとされている。

近年は、フィリピン、ベトナムからの技能実習生受け入れも活発で、県内の外国人労働者は約6万8千人(2022年10月時点)と8年連続で最多を更新した。

新型コロナウイルス感染拡大による2年間もの入国規制をものともせず、外国人労働者が増え続けているのはなぜだろうか。
外国人就業やビザ取得に詳しい人材コンサルティング会社、株式会社dialog取締役 森翔平さん(写真)に静岡県内の外国人材事情について話を聞いてみた。

都内に本社を構える同社は、今年3月から静岡県と静岡市から企業誘致の助成を受けて、サテライトオフィスを開設した。

テストマーケティングの好適地ともいわれるこの地で、現在さまざまなリサーチを精力的に行っている。

「静岡県は海外から労働者を招へいするための好条件が揃っているんですよ。」と森さん。

まず、幅広い分野で全国トップのシェアを占める製造品が多いことをあげる。

全国シェア100%のピアノを筆頭に、医療用機械器具装置、錠剤やカプセル等の栄養補助食品、お茶やワサビ、温州みかん等、生産量や出荷額で全国第1位の工業製品や農水産物を数多く有している。

そうした中、日本の人手不足に拍車がかかったことから、外国人にとって、職業選択の自由度が高いホット・スポットとなっていったようだ。

加えて、最低賃金は全国第9位と、割高感がある。地理的には、東京まで新幹線で1時間という、都会へのアクセスの良さも若者の心を掴んだ。

さらに、年間を通じて温暖な気候に恵まれ、身体に負担がかかる寒暖差が少ないのも人気の理由だ。

まさに、外国人にとって暮らしやすい条件がめじろ押しである。
そして、森さんは、今後は外国人労働者の採用ニーズがさらに他業種でも加速するとみている。

例えば、宿泊業、外食産業などの特定技能人材への広がりだ。

県内でもインバウンドが復調の兆しを見せており、特に富士山の周辺観光は顕著で、「宿泊客は、コロナ前の1.2倍」ともいわれているそうだ。

「新しい分野において外国人材の受け入れを推進することが、県全体の経済発展につながるはず」と、熱く語る森さんの言葉には、自身の故郷への深い愛情と責任感が満ちあふれていた。

(※このコラムは、ビル新聞2023年6月26日号掲載「静岡県の外国人材事情」Vol.49を加筆転載したものです。)

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