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【フランス国内巡礼路③】めざせ労働革命⁉ マダム・エリスの牧場の家 〈前編〉 

私が歩いたフランス国内のカミーノ・デ・サンティアゴの巡礼路では、オープン2年目という「巡礼者の家」もありました。

フランスでの巡礼路も30日目まできたころ。
ポンというローマの史跡がある町の無人駅で降りて、そこから歩いて8キロ。まもなくワインの産地ボルドーというブドウ畑の真ん中にある「巡礼者の家」でした。送電線の柱の脇を通ってぶどう畑の間を抜けて小高いところに牧場がありまして、敷地は柵で囲まれています。

ポンのローマ時代の史跡 ここでのエピソードは2巻で紹介します


見えるものは西部劇の牧場のそれで、馬、大きな納屋やトラクター。「家」とはどの建物であろうか。入口の柵はチェーンで戸締りされていて、小さいプレートに「巡礼者の家」と書いてあるので、間違ってはいない。書いてある電話番号に電話しても出なかったのですが、30分ほど木陰で待っていると、折り返しがあって開けてもらえました。

宿主はエリス。中を案内してくれました。私は室内より安く泊まれるテントでの宿泊を選んでいました。グランピングのイメージで来てみたのだけど、そんな想像ははるかに超えていました。馬2頭、ロバ2頭、ヤギ数えきれない、鶏も数えきれない、猫は7匹。これらが放牧されている敷地内にテントが大小3つあり、シャワーと洗面台も屋外の小屋に一番近いテントに私が泊ります。

エリスが住む母屋のリビングにキッチンや冷蔵庫があって、缶詰やドリンクなども安価でわけてもらえます。エリスはチェックインで私のパスポートを見る時、老眼鏡を使っていたので私と同じくらいの年齢だろうと思われます。

キッチンは使っていいし、食べ物も使ったら、ボードに書いておいてね、あとで清算のセルフ方式よ。

それにしても女性一人でこの広い牧場の動物の世話をするのは、なかなか大変そうで、リビングには電動ドリルやら電気コードやら工具用の厚い手袋やら長靴が転がったままです。窓を開け放しているのでハエもブンブン飛んでくるし、大きなボウルに入った果物の上でハエがお休みしていています。

シャワーの小屋はきれいなカーテンで仕切られているものの、畑の方向からの風が強くて目隠しカーテンの意味はなく丸見え。畑は誰も通らないからいいのですが。トイレはおがくずで生物的な分解する方式。

洗濯物の確認にきたロバ

テントの中にいると覗きにくるロバ。敷地以内にはすべての動物の落とし物が散乱しています。私の洗濯モノを干した台の周りを歩いて興味深く眺めるヤギたち。なるほど、ここはアイディアにはあふれている。いろいろと無理があるが、しかしこれが、彼女が選んだやり方なのでしょう。日本人の客なら絶対に文句をいうし、サイトに書き込むだろうな、とも思います。

この日はエリスの仲良しのローサが来ていてバカンスの打ち合わせをしていたそうです。エリスは英語がペラペラ。ローサの英語は片言未満。

晩ごはんは庭でムール貝のバーベキューです。エリスは母屋のテラスにあるバーベキューコンロに大量のムール貝を入れて大胆に焼き始め、だいたい貝の口があいて火が通ったところで、ソースをかけます。オリーブオイルに刻んだ玉ねぎ、パプリカを入れるシンプルな味付けでした。殻付きの食べ物のときは世界共通で3人とも少し無口で、やや食べておちついてからからおしゃべり全開になりました。

はじめは、動物たくさんいるね、のような軽い話からです。

鶏は卵を取るために飼っていますか?

そうよ

冷蔵庫の中に日付が書かれた卵がたくさん並んでいるのを見せてくれました。

鶏肉を取るために飼っている人もいるけど、私は無理。かわいいこの子たちの卵だけもらうの。

ほかの動物もペットとして飼っているという理解になりました。

あくまでもペットである可愛い鶏 手前の緑の布部分は私です。

女子3人の話はだんだん進んみます。

なぜカミーノ・デ・サンティアゴなのか?クリスチャンなの?

いや、たぶん死んだときの葬式は仏教でやると思うからおおむね仏教徒。フクシマとして知られる大きな地震のあと四国をお遍路として歩いた。それは仏教の道だ。

私が四国を歩いた時のお話(画像からアマゾンで販売中・リンクしています)


仏教の葬式とはどんなものか。

僧である司祭が仏教の聖書を読んで、参列者が花を供える。ろうそくもある。

火葬か。

火葬だ。日本は狭いから土葬だとお墓ばっかりになっちゃうよ。

2人は会社をやめなければ巡礼のような長い旅にでられない日本のバカンスの短さについての議論が始まりました。

ちょっと訊くけど、あなた30年以上働いて夏休みは10日しか取れないの。そんな人生ありなの?

じゃあ、フランスでは休む人がいるとき誰がその仕事をするの?

それを考えるのはボスで私ではない。ボスがそれを考えて、誰もカバーできなければ、別な人を雇う。

日本人は休む権利があることをもちろん知っている。一応、文明国だし権利は知っている。だけどカバーしてもらうことで仲間の仕事が増えることを自分で許せないと思うものなのよ。他人にお願いすることができないのよ。

エリスは、オーマイガーの表情です。

日本の女性の働き方やあり方についても延々語り合う。以前、エリスが関わった若い日本人の女の子が、フランスで一人旅を続けると言い出し、彼女もそれに賛成し日本の親に報告したらたいへんな騒ぎになって、彼女の責任のようなことを言われた経験があるあらしいのです。

親は親よ。自分は自分よ。レボルーションよ、なぜ戦わないのよ。

すぐレボルーションが出てくるところはさすがフランス人です。

ローサは以前、日本でも人気のLとVのモノグラムで有名なカバン屋さんの中の方のスタッフで働いていたそうで、そんな彼女もバカンスは6週間だったそうです。

そのバッグは日本の若い女の子は大好きですよ。

知ってる。そして、シノワもそうだよね。だけど高いよ、私は買えなかったよ。

だんだん日仏の物価の話題などに変わっていきました。
マダム・エリスの牧場の家 〈後編〉へつづきます。

この話は発売中のAmazonkindle電子書籍には入れなかったエピソードです。電子書籍ではフランス巡礼路での巡礼者の家への予約の方法、宿泊の段取りを紹介しています

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