みんなでつなぐマイレール。国鉄から最初に転換された三陸鉄道は
地域住民の熱意によって路線を伸ばしてきた。各地に点在する３本
の盲腸線をつなぐ未成区間の建設を推進して、盛ー釜石間と宮古ー
久慈間の南リアス線と北リアス線の開業にこぎつけた。リアス海岸
の鉄道が１本につながることで、地域交流の活性化が期待された。

昭和期においては経済の安定成長期も相まって、黒字経営の実績も
後に各地で登場する同様の路線を勢いづけた。平成に入ると、ご多
分にもれず少子化や高齢化社会へのシフトによって乗客が減少し、
盛り返しに奮闘するも厳しい状況が続くようになってきた。一方で
地道に取り組んできた観光客の誘致や話題づくりについても、少し
ずつ実を結ぶところが見えてきた。地域自治体も連携して路線を守
り抜くべく、さまざまな施策や対応を繰り広げてきた歴史もある。

類い稀なる大地震と大津波によって三陸海岸も甚大な被害を受け、
例外なく三陸鉄道も複数の区間で被災した。そのような状況でも、
輸送再開が可能なところから復活を進め、大震災に打ちのめされた
沿線住民や自治体を元気づける原点となった。被災地域の復興計画
に基づき、被災した路線施設の移設や再構築も進むようになった。

未曾有の被害を被った路線は三陸鉄道だけではなく、周辺の各線も
ダメージを大きく受けた。盛以南の大船渡線はＢＲＴとなったが、
レールによる復旧を断念して早期復活を選択した結果だった。一方
その選択を取らなかったＪＲ山田線は、あくまでも鉄路での復旧を
目指し、時間はかかったが復旧工事をＪＲ東日本が行い、三陸鉄道
に移管される道筋をつけた。そして南リアス線と北リアス線が合体
し、第三セクター路線の中で最長距離を誇る路線にまで成長した。

渡り行くリアス海岸の入り江を繋ぐように進む路線であるために、
レールはどうしても高台やトンネルを結ぶように進みゆく。静かな
波の出入りが車窓からも時折見られるが、復興道半ばのように感じ
られるところもある。それでも沿線各地の三陸鉄道への熱意は限り
なく強く、たくましい。単に３０余年支えてきただけのものではな
く、幾度の自然災害にも屈することなく復活を果たしている力強さ
に、ぜひとも現地で触れて、リアス線の魅力を広めてもらいたい。