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【百線一抄】032■花をなでる風とともに走るー山形鉄道

山形県南部の置賜地区は最上川の上流域にあたる。その流れをとり
まくように赤湯から北西へ延びていく、第三セクターのローカル線
が山形鉄道フラワー長井線である。終点の荒砥へ行く途中の今泉で
はJR米坂線と接続し、さらに南部の米沢や飯豊山地の北を抜けて
新潟県の坂町へつながる。あとは最上川左岸を一路北上していく。

開業時期は大正期。今泉で接続する米坂線より先に開通している。
全線開業後の変化は大きくないものの、昭和末期に展開する合理化
の流れで貨物輸送が縮小に至り、分割民営化によりJR東日本に移
管されたのち、山形鉄道の路線として再出発することとなった。他
県の第三セクター路線と同様に、新駅の追加や駅名の変更が行われ
たが、初期は米坂線との直通列車もあり、米沢へも乗換なしで行け
るようになっていたことが、この地域ならではの特徴ともいえた。

施設改良も駅舎の改築や運行システムの更新などと積極的に進めた
が、一方で奥羽本線の改軌による沿線状況の変化も小さくなく、限
られた地域範囲での集客も難しく、利用状況は減少の一途を辿る。
自らの再建は限度があり、沿線市町が鉄道用地を取得して鉄道会社
は事業運営に専念する上下分離方式を採用して経営改善を進めた。

長井線は戦前の計画において、荒砥からさらに北へ針路を進め、北
側で同様に延びてきた左沢線とつながる流れもあったが、達成はさ
れなかった。荒砥と左沢を結ぶバス路線は設定がなく、乗り継ぐに
も系統そのものがないため、公共交通機関ならばタクシーが唯一の
足となる。両駅間は約30キロあり、歩く距離でもない。山形市内
へ向かうバス系統はそれぞれに設定があり、実際の流動について手
ぬかりはない様相も見えてくる。内陸部らしい実情が垣間見える。

もとよりイベントがらみの話題は多い路線だ。沿線に点在する花の
見どころは路線名にそのまま直結している。例えば、ビール列車や
地酒列車のような食事が楽しめる列車の運行や、春季であれば地元
ならではの雛回廊めぐりも楽しめる。近年の取組では貸切列車内を
リングに見立てたプロレス大会の開催も目新しい。最新の話題は、
建設が完了した長井市役所と併設になった長井駅のお披露目。更に
利用しやすくなる駅とともに、今後の花ざかりな活躍が楽しみだ。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

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