見出し画像

【百線一抄】013■名山を遠く眺めて蒸機が走るー真岡鐵道

通勤や通学で日頃利用する駅から反対方向へ向かう列車に乗って、
空気感の異なるまちに行く。上野より北や東から都心へ通う人なら
ば、案外と近くを走るローカル線をめざす旅がおすすめである。羽
根をのばすというよりは、ちょっと日常と違う時間の過ごし方や世
の中の喧騒から少し離れる、それぐらいの感覚で出かけてみよう。

水戸線の小山寄りに位置している下館駅には2路線の私鉄が軒を連
ねる。片や取手に向かう関東鉄道常総線、もう1本が真岡鐵道だ。
世に数多とある第三セクター路線の中では、早くから話題作りに取
り組んできた。とりわけSLの運行は長年の実績を誇り、「SLも
おか」号が週末を中心に運行されている。20年以上の間、運行が
続けられており、しかも都心から100kmの圏内にその路線があ
ることが、他のSL運行路線と比べて身近に感じやすいところだ。

身の上は決して華やかではない。開業こそ明治末期で歴史ある路線
ながらも、周辺路線と比べると地味な立場に甘んじてきた。水戸線
の発達とは裏腹に廃止対象路線のリストに入り、真岡鐵道への転換
が決まった。転換後は運行本数の増加や新駅の追加を進め、真岡駅
はSL運行開始後に機関車を模した形態の駅舎へ生まれかわった。

このように話を進めるとSLしか話題がない路線のように見えるが
日頃利用する路線として目を向けると、同規模の路線と比較しても
存外多めの列車が設定されている。朝夕は1時間あたり1~2本と
通勤通学にも利用しやすい間隔が確保されている。駅の係員がいる
真岡駅、益子駅、終点の茂木駅ではレンタサイクルも用意されてお
り、散策や観光に便利だ。益子は焼き物、茂木は「ツインリンクも
てぎ」の近接地として、知る人ぞ知るスポットが沿線に点在する。

フラリと旅立ってみて単に行って帰るだけでは芸がない。ならばと
ちょっと上級者向けルートを提案する。宇都宮まわりでJR烏山線
と那須烏山市営バスに乗ると、市塙駅で真岡鐵道と接続している。
なかなかの大回りとなるため、日帰り旅としては少しばかり大がか
りなスケジュールを組むことになるだろうが、これはこれで都心を
抜け出して日頃と違う雰囲気を味わう好機となるだろう。下館への
ルートも多彩だ。日常の深みにはまり込む前に、旅に出てみよう。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

サポートをお願いいたします。いただいたサポートはたまなび倶楽部の運営費として活用いたします。