見出し画像

【百線一抄】041■求むいでたちあらいだし-甘木鉄道

こまめに地域の利用者を拾うように駅を設けて利用しやすくする。
ひいては利用しやすくするためなら駅そのものを移動させる。そう
することで利用価値を高めることに成功し、小規模ではあるけれど
手堅く利用者を集めている路線がある。その線は甘木鉄道甘木線、
福岡県南部を走る、15キロ弱の第三セクターによる路線なのだ。

わりと着工が遅めの印象があるのは、元来沿線地域では複数の路線
がすでに主立った拠点を結んでおり、明治後期には甘木が結節点と
なるように各方面を結ぶ路線の建設が展開されていたから。大部分
は街道上の併用軌道や軽便鉄道として開業している。大正時代には
間もなく陸軍飛行場の建設が進み、完成後は民間機も運行された。
だが、従来の路線では物資輸送の面で輸送力が十分でなく、国が新
規で路線を敷設することになった。これが後の国鉄甘木線となる。

大刀洗陸軍飛行場は戦後、農地や工場に転用された。沿線周辺の各
地域を結ぶバス路線が充実していくなか、甘木線の列車本数は余り
にも少なく、昭和30年代で2時間に1本ほど、40年代後半には
県内のローカル線としてもかなり割り切ったダイヤとなる。なによ
り、朝の3本の後は16時頃まで列車がないという設定であった。

ひいき目に見ても便利とはいえない状況が長かったこともあり、ひ
とたび整理の対象としてリストに載るのは必然だった。工場からの
出荷もトラックに移行したことで貨物輸送もなくなり、朝夕だけの
列車が走る路線の廃線も止むなしの様相を示した。それにも関わら
ず、沿線自治体や住民は存続を求めた結果、第三セクターによる運
行継続が決まった。沿線自治体と沿線企業などが出資しているが、
そこに福岡県や佐賀県は関わっていないという構成となっている。

小郡で接続する西鉄天神大牟田線と基山で接続するJR鹿児島本線
も重要な接続路線だが、新設によって拠点とした駅もある。小郡の
ひとつ隣、大板井駅である。ここではすぐ隣を大分自動車道が寄り
添うように走っており、高速バスのりばが隣接している。本数も多
めで、福岡空港や博多・天神に直結している。肝心の列車側も充実
しており、平日朝夕約15分毎、日中1時間あたり2本を大部分で
確保している。地元目線で持ち味を活かした地域密着路線なのだ。

それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。

サポートをお願いいたします。いただいたサポートはたまなび倶楽部の運営費として活用いたします。