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非 IT 企業のエンジニアとして働く

日本のエンジニア界隈を見ると Web 系や SIer 系の話題はよく見かけるが、非 IT 企業で働くエンジニアの話は聞こえてこない(そもそも数が少ないからね...)。

非 IT 企業のエンジニアというと社内 SE を想像する人もいるだろう。ここでは、従来的な社内の業務システムの管理を行うエンジニアではなく、企業のデジタルトランスフォーメーションを進める事ができるエンジニアの話をする。

デジタルトランスフォーメーションとは企業のビジネスモデルやビジネスプロセスに IT を適用させていく事だ。全世界の人々がインターネットに接続できる現代において、無視することはできなくなってきている。

タイの日系非 IT 企業のデジタルトランスフォーメーションを進めている真っ最中の私が感じた、非 IT 企業のエンジニアに求められている事を話す。

非 IT 企業のエンジニアに求められる事

・エンジニアリング能力とクラウドの知識
・デジタルマーケティングとデータの活用の基盤作りと分析
・企業のIT戦略の策定

エンジニアリング能力とクラウドの知識

特に大企業に顕著だが、IT 系の業務をほぼ全てアウトソースしている企業が数多く存在する。主にこれが原因で大企業の IT に対する意思決定が遅くなる。何をするにもアウトソースが前提で、社内政治・調整などの段取りに時間がかかる。

しかしながら、自社に実現可能性を検証できるエンジニアを抱えている場合にはこの問題を解決できる可能性がある。今日のオープンソースソフトウェアやクラウドサービス界隈の環境は以前と比べ物にならない程に発達している。その甲斐もあって、Github でちょいちょいと調べれば良いツールを発見する事でき、便利なクラウドサービスが SaaS や PaaS 等で提供されている。それらを上手く組み合わせる事で、以前と比べて遥かに簡単にアプリケーションを開発できるようになっている。

非IT企業は常に開発系のデマンドが存在しないので、むやみにエンジニアを増やす事は難しいだろう。故に、たとえベンダーロックインになったとしても、自社で開発する部分は具体性のある部分のみに抑え、極力 SaaS やPaaS 等を使い、少人数で運用は可能な設計にすべきだろう。

適切な OSS, SaaS, PaaS を選定し、その上でアプリケーションを構築できるエンジニアが内部にいる事で、容易に POC やプロトタイピングの構築が可能で、迅速に意思決定を行う事ができる。

デジタルマーケティングとデータの活用の基盤作り

デジタルマーケティングはもはや主流の広告手段で有ることは、疑いの余地はない。タイでもそれは例外ではなく、国民の大多数がモバイル端末で常に Facebook 等の SNS を使用している。

顧客・セールスデータ分析は、パーソナライズされたデジタルマーケティングを行う事にも必要であり、さらには顧客理解にも役に立つ。そのために、データ分析基盤となるカスタマーデータプラットフォームの構築が必要になる。

非 IT 企業のカスタマーデータプラットフォームを作るのは意外と困難である。Web 系企業であれば基本的にデータはクラウドにあり、即座に BigQuery などにデータを移行する事が可能だ。しかし、非 IT 企業の顧客・セールスデータはオンプレミスの基幹システムの中に入っている事が多い。さらには、大手ベンダーに開発を依頼してる事もあって、フットワークも重く、リアルタイム分析等を行うには少々手間がかかる。

バッチを使ってバルクロードする手法であれば、データベースサーバのみを考慮すれば良いので、手間はかからない。故に私はこの方法を選択した(そもそもリアルタイムで分析したいというニーズはそこまで高くない)。

embulk 等を上手く使うと、思ったより簡単に基幹システム(SQL Server)からデータをバルクロードし、アップロードできるスケジューラーを作る事ができて、非常に助かった。

カスタマーデータプラットフォームは SUBARU の事例が参考になる。TresureData を利用したカスタマージャーニーの分析を行っている。

企業の IT 戦略の策定

この辺の役割はエンジニアというより経営層に近い業務になってくるだろう。しかし、私は難しい話ではないと思っている。モダンな Web 系企業で働いた後に、非 IT 企業に来るといろんなところで(良くない意味で)驚かされるだろう。Microsoft Access や Excel で大規模データを分析する。無限続くようなメールのスレッドで複数人が会話をしている 。これらの様々な改善すべき点が山ほどある事が自然と浮かんでくる。

Web 系企業で当たり前だった事を適用・応用することによって、非 IT 企業のデジタルトランスフォーメーションは格段に進んでいくだろう。このツイートが私の感じている事をそのまま表してくれているので載せておく。

まとめ

最後にまとめるとデータ基盤系のエンジニアや、CTO に近いエンジニアはこちらに来ても活躍できるのではないかと感じている。逆に「がっつりプロダクト開発したいエンジニア」や「コーディング、テクノロジーにフォーカスしたいエンジニア」はIT企業にいたほうが幸せではないだろうか?

私が感じる非 IT 企業でエンジニアである事の面白さは

・サービス指向でシステムを構築できる
・手がつけられていない豊富なデータが存在する
・Web系企業が持っていない、アセットやプロダクトを持っている
・耕されていない畑がたくさんあって、エンジニアの心をくすぐる

私は特に最後の点を私は気に入っている。「ここに良い土壌があるから、君の良いと思う機材買って、野菜を育ててね」言われてやる気にならない農民がいるだろうか?

注意すべき点として、以下のような事が起こる場合もあるので、入社前にはしっかりと開発環境などの確認をして、自分の考えに理解がある人がいるかを確認しておくのが良いだろう。

エンジニアリングが分かる人材は業界問わず、今後ますます必要になってくるだろう。自分のエンジニアリングの能力をどこでどのように使うかはその人次第であると私は考えている。考えを固定化せずに、各個人が最も価値を発揮できる場所で仕事ができる人が増えてほしい。


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