2021.5.3

人生で初めてタコスを食べた。2回目だったかも知れないが、タコスを食べるという発想を持たずに生きてきた自分が、タコスだと思ってそれを食べたのは初めてだったから、そう決めた。

内装の施工設計をしている友人Yの紹介で出会った、建築系の人たちのタコス試食会でのことである。試食会と言っても、数人で友人宅に集まってタコスを食べるだけで、どの人も2回会ったことがあるくらいだったので、久々に気合を入れて外出した。

緊張して服を選ぶのに時間がかかったので遅刻してしまい、メキシコではスイーツと言えばプリンと聞いたから駅前のスーパーでいくつか買ったが、どうも気まずくて駅から友人宅までの徒歩8分の間に一旦オロナミンCを買って休憩。

たまに道の花壇に腰掛けているお婆ちゃんの気分を味わいながら、最後の一口を煽ろうとしたら指に買い物袋が絡まってジャケットにこぼしてしまい、服を選んでいた時間が灰色になった。

オロナミンCの痕跡を消し去ったことを確認し、先に着いていた先輩たちに出迎えてもらうと、テーブルの上にはすでにタコスの具材が並んでいた。つぶしたアボカド、サルサソース、生タマネギ、パクチー、ポーク、カットされたローストビーフ。

トルティーヤはこれから焼くのかなと思っていたら、僕がローストビーフだと思っていたものがトルティーヤだった。灰色と紫の間のような色で、どう考えても肉側の色をしていたが、ブルーコーンという品種由来だとこういう色になるらしい。

タコスの試食会なのにタコスのことを全然知らないことが悔しい。

以前竹田から数種のタコスの現状を教えてくれるネットフリックス番組を勧められたのを思い出して、勧められたものはすぐ観ておけばいいだろうがよと思った。

そういえば、iPhoneのメモに「勧められた○○」というフォルダがあって、本、映画、音楽など気の遠くなる量の誰かのオススメが保存されているが、そのメモを記し始めて以降一度も見返したことがない。

死ん読だ。冒頭に書いた友人Yも、ホドロフスキーを5年前から「好きだと思うよ」と言い続けてくれていたが、最近になって「君には教えても見ないからもう教えない」と言って別の友人とホドロフスキーの話で盛り上がられたことがある。

オススメという行為には、そういう人間関係の根本に関わるナイーブな側面があって、一旦メモしておくというその瞬間の真面目さは、結局その後の不真面目さと表裏一体かも知れないと思った。

勿体ぶらずにすぐ見た方がいいんだよな。豊に5年前勧められた『ファイトクラブ』も、成順に6年前に借りた『ムーンパレス』も、なんか良い体験にしなくちゃというプレッシャーに負けて未だ手をつけずにいる。今年は、見てしまう、読んでしまう、が目標。

タコスを囲みながら、友人がお互いにかけた音楽をシャザムし合っているのを見て、僕に足りない力を持っているな、と感じた。

そして初めて食べたタコスは、複雑な味で最高だった。

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