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中年の危機① まずは観覧車に乗ってみた

成人期発達研究の父と呼ばれたユングは、人生を一日の太陽の運行に見立て、40歳を「人生の正午」と呼んだ。そして、人生の午前から午後への移行期である「中年の転換期」を、人生最大の危機としている。

若く勢いがあった人生の午前とは違い、少しずつ老いを感じ、自分の限界も見えてくる時期。これまでの生き方を振り返り、午後の時間をどう過ごしていくのか深く考えざるを得ない時期。


厳格な宗教家の両親のもとで育ち、子どもらしいわがままも許されない環境の中で人生の午前を過ごした。自分の意見を押し殺して生きてきた。本当は夢も目標もあったはずなのに、何を言っても聞いてもらえない絶望感から、自分の望みが何なのかすら分からなくなっていた。大人になってからも、しみついた習性は抜けず、大げさに言えば、他者を喜ばせるために生きてきた。

「人生の正午」を迎えた当時、前半を振り返りながら、絶望的な気持ちになった。自分のことを犠牲にして、他人の踏み台になるような人生はもう嫌だ。自分の人生なのだから、私が主役でありたい。そう強く感じながらも、自分が何をしたいのか、何をしているときに喜びを感じるのかが分からず、精神的にもがき苦しみ、のたうち回っていた。


ようやく思い付いたのが「観覧車に乗る」こと。他人から見たら「こんな些細なこと」と思われるかもしれないが、何もねだらず、わがままを言わない「大人のような子ども」だった私にとって、「観覧車に乗りたい」などと言えるはずもなかった。本当は乗りたかったのだ。そうだ、今なら誰の許可もいらず、乗りに行けるのだと気がついた。

人生初の観覧車は、横浜のコスモクロック21。キラキラ光る海を眺めながら、幸せな気持ちに包まれたことを今でも覚えている。人生の午後にして、人生がスタートしたような高揚感。もちろん観覧車ぐらいで、中年の危機を脱することはできないが、こんなふうに、自分のやりたかったことを見つけ、どんどん実行していったらよいのだ。主体的な生き方をしてもよいのだ。小さな前進だった。

#中年の危機 #ユング #AC #アダルトチルドレン








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