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夕方。
強い雨がざーっと降った。在宅ワークでパソコンの前に張り付いていた私は椅子から立ち上がり、窓辺に立った。
「雨粒が大きい」と思わず一人呟いた。
あまりにも粒が大きいので確かめてみたくなった。窓を開け外に手を差し出す。
案の定、手がびしょびしょになった。
私は夫にメッセージを送った。
「雨すごいね」
再び机の前に戻り、行き詰まっていた仕事に手をつける。
「うーん」と唸って左手に額を乗せた。
やはり進まない。
それでもなんとか、ここまでは終わらせたい、という気持ちがあり、画面とにらめっこを続ける。
雨が止んだことにも気づかず、相変わらずパソコンと机の上だけで目線を動かしていた。仕事が進まず焦り、苛立ちが募るばかりだ。
そこへ突然、着信音が鳴った。ビクッとしてスマホの画面を見ると、夫からだった。
こんな時に何の用だよ、とイラっとした。しかし息を吐き、気持ちを切り替えてから電話に出た。
努めて明るい声を出そうとする。
「はーい?なに?」
「玄関の方の窓から外見てみ。」
夫が弾んだ声で言った。
私は立ち上がって、疑い深く窓に向かっていった。
「あ、虹だ」
今日の夕飯には夫の好物のニンニク料理を作ろう。
そう思った。
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