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ゆたぼんと村上春樹小説の共通点について

  ゆたぼん、たまにネットニュースでネタになってくれるから好きなんですよ。(というかネットニュースで書かれている文章からしか僕はゆたぼんという人格の輪郭をとらえていない、やれやれ)でもね、僕、気づいたんですけど、ゆたぼんの人生って、村上春樹小説の世界観にとてもマッチしているというか、歴代村上春樹小説の主人公たちと共通点がとても多いんですよね。

  今回は、「ゆたぼんのこれまでの人生と歴代村上小説の主人公たちとの共通点」について述べるとともに、ゆたぼんの今後の人生を予測していきます。

注) 今回の文章では、村上春樹の複数の作品についてネタバレを含めながら展開していきます。中には、核心的なネタバレも入っていますので、村上春樹作品を今後読む予定がある人はブラウザバックをお勧めします。また、ゆたぼんの動画は1つも見たことありません。


ゆたぼんと村上作品主人公たちの共通点1:一見モラトリアム的だが、実は自分1人ではどうにもできない重大な問題に巻き込まれている


  村上春樹小説にありがちな設定として、「主人公は普通に社会人として働ける年齢でありながら、モラトリアムな境遇にいる」というのがあります。「ダンスダンスダンス」では、主人公はフリーな物書きの仕事をしていて、その仕事から1カ月ほど離れるところから物語が動き出します。「ねじまき鳥クロニクル」では主人公は10年ほど勤めていた法律事務所を辞め、主夫として毎日を過ごしていました。「海辺のカフカ」では、15歳の主人公が、序盤に中野の家を家出して四国に向かい、そこに滞在します。(当然不登校扱いになります。)

  こんな感じで、主人公たちはみんなフルタイムで働いていなかったり、普通の社会人よりは社会から距離を置いている人が多いです。学校に通うという行為も社会的な行為の1つと考えると、その意味では不登校していたゆたぼんも同じですね。

  そして、村上作品では、そんな状況の主人公たちが、壮大な物語の渦に巻き込まれていくのです。フィクションだからこその不思議な現象、史実を基にした人間の業や、読者を悩ませる難解な展開…。ゆたぼんも、少年革命家として、Youtubeを通して、普通の人が経験しないことを経験したり、まだ幼いのにSNSなどで様々な批判を受けたりすることなど、様々な問題に巻き込まれていると言えるでしょう。

村上春樹の入門編なら、「羊をめぐる冒険」か「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」がおすすめ。



ゆたぼんと村上作品主人公たちの共通点2:根源的悪(ゆたぼんの父)に人生を狂わされながらもそれに立ち向かわなくてはいけない


  中~後期の村上作品には、物語の裏テーマとして「根源的悪(絶対悪)」というものが存在する作品が多いです。初期には3作目の「羊をめぐる冒険」にもこのテーマが見られ、「ねじ巻き鳥クロニクル」は、悪と正義の戦いのクロニクル(年代記)とも言い換えられるほど、色濃く「悪」との闘いが書かれる物語です。悪ってつまりフリーザ様ですね。「シンダベジータジベタにウメータ」3回連続で言えるかな?

  村上作品の「根源的悪」は、特定の悪の人物がいるというより、この世に息している「悪という概念そのもの」を書いているため抽象度が高く一読しただけだとすぐに理解することが出来ませんが、視点をゆたぼんにしたとき、その立場にいるのは誰か分かりますね。そう、ゆたぼんの父です。

ゆたぼんの父渾身の一作

  ゆたぼんの父は中村幸也といい、中卒で元暴走族で無免許心理カウンセラーをやっている人みたいです。2015年に著書「あきらめる勇気」が「日本タイトルだけ大賞」にノミネートされています。 そして、ゆたぼんが世間に知られ始めた2019年から、ゆたぼんの名前を利用して自分の意見をネットなど様々な媒体で主張したり、衆議院選挙に立候補したり(最下位で落選)と様々な活動を行っているそうです。


  ゆたぼんの父親が「根源的悪」だとまでは言うつもりはありませんが、これを見ると、ゆたぼんはホントに不登校になりたくて、自分の意志で自分の人生を生きてこれていたのか疑問に思います。

…………

  そして忘れることが出来ないのは、最近のゆたぼんが高校受験のために勉強してる(らしい)という事実。そして、最近Xに投稿していた「親父は消えた」発言、、、。今の彼が、キャラ変ビジネスで、ただの「人生は勉強や!」パフォーマンスをしてるだけなのか、父親の意志とは別の方向に向かい始めたのかは分かりませんが、彼が本当に父親の呪縛から解放される途中(*注2)と考えると、それは村上小説で書かれがちな「根源的悪との対立」に他なりません。

  最も明確な例として、「ねじまき鳥クロニクル」を挙げます。これは主人公の岡田トオルが正義側(この世のねじを巻くもの)、彼の妻の兄である綿谷ノボルが悪側(この世のねじを緩めるもの)として、様々な出来事を通じながら対立していく物語です。ゆたぼんが岡田で、ゆたぼんの父が綿谷です。

  綿谷ノボルは家柄も良く、東大とイェール大で学んだ研究者でありながら、テレビのバラエティに多数出演、選挙にも出馬しており、富も名声も力も持っている人物です。一方の岡田トオルは、1で前述した通り無職の30歳です。そんなただの人である岡田が、様々な体験や苦難を乗り越え、綿谷に立ち向かう力をつけ、最終的には一騎打ちという形になります。口論でも頭脳明晰で弁の立つ綿谷は強大で、社会的なステータスも綿谷が圧倒的ですが、でも何も力を持っていない岡田も、自分の頭で考え、対抗する力をつけていくのです。その境遇、まさにゆたぼんだと思いませんか。
彼も、父親のビジネスの一環として、自分の存在を利用されてきたことは事実としてあるでしょう。しかし、少年革命家として活動しながら、一方で、自分の目で見て、自分の頭で何年もこの世界について考えてきたゆたぼん。その結果、彼は今では立派な「青年革命家」となり、人生は勉強や!と言えるようになった。父親の呪縛に立ち向かい、打破している最中なのです。(*注2) がんばれ!!ゆたぼん!!!!

(*注2)について
「父親の呪縛からの解放」は、15歳の「田村カフカ」が主人公の「海辺のカフカ」のテーマでもあります。また、同作で出てくる主人公の父親は「根源的悪」側に立つものと考えることもできます。カフカ君の母親と姉は、カフカ君が幼いころに家を出ていき、残った父親は「猫殺し」として罪のない猫をさらって殺しをしていました。その場合、やはり15歳の田村カフカ君と、15歳のゆたぼんを重ねることが出来ます。カフカ君は筋トレ、ゆたぼんはボクシングに励んでいる所も類似点ですね。
「海辺のカフカ」では、物語の展開内でメタファーが多様されているため、「根源的悪との対峙」というテーマが一見不透明ではあります。

ゆたぼんと村上作品主人公たちの共通点3:様々な不思議な体験をした上で、今現在、勉強して高校合格を目指すという形でこの世界に「戻ってくる」


  1と2を踏まえた上で、その補足的な内容。ゆたぼんは、不登校という、普通の同年代の人とは違う、モラトリアム的な状況にいながら、過激なYoutube活動で注目を集めるという、普通の人がしないようなことをしてきて、そこで色んな苦難に会いながら成長し、彼の父と対峙して、今では勉強して高校受験を目指すという形で、最終的には同年代の人たちと同じような道に「戻って」きました。今文章を書いている2024年2月5日でのゆたぼんを、小説の最後のページと考えると、これも、村上小説では結構ある展開ではあります。彼の小説では、最後は「明白なハッピーエンドではないけど、危機は去り、頭を悩ませた謎にもなんとなくの答えが与えられ、全て元通りでもないけど一応元通り、希望が見えるっぽい状況に戻りました、めでたし」みたいなラストになることが多いと思います。
(全部、あくまでゆたぼんのSNSの投稿を本当のこととして判断するならの話です。「再び学校に行き始めたゆたぼん」を演じてるだけだったら、父親がゆたぼんのキャラ変を指示してるだけなら、普通にバッドエンドです。)

ネタじゃなくて本気でやってると信じたい、信じたい。


ゆたぼんと村上作品主人公たちの共通点4:途中で暴力的なイベントを乗り越える必要がある


  ゆたぼん、ボクシングの試合してましたよね。ボクシングってスポーツなので、暴力でも喧嘩でもないのですけど、世間一般の人から見ればボクシングって暴力的なスポーツだとイメージする人も多いと思うので、ここでは、ボクシングを暴力行為の一種として扱いますね。


  ゆたぼんが世に出始めてから現在までをゆたぼんが主人公の小説だと考えると、途中でいくつかボクシングの試合をしてきています。そして、村上春樹の小説にも、途中で暴力性のある出来事があることが多いです。どの小説にも、誰かが殴られたとか取っ組み合いになったりするシーンはあると思いますが、村上小説の暴力的なシーンは、彼の独特かつ圧倒的な描写力によって、とても痛々しく、印象的なんですよね。「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」では、上巻の中盤で、主人公の家のドアが破られとんでもなくヤバそうな大男が突如登場するシーンがあるのですが、そっから「明らかに主人公ヤバい」っていうハラハラさがあるのですが、結果的には、主人公は腹の下を少しナイフで切られただけで(それでも十分痛いけど、)命に別状とかなんもなかったんだけど、その描写がめちゃめちゃ痛そうなんですよね。

  それ以外にも、色んな作品で、直接間接関係なく、すごい深遠な暴力性が印象的に、時に強烈に書かれるのが、村上作品の1つのアクセントにもなってるんですよね。ゆたぼんのボクシングがそういった暴力性を痛烈に表現しているのかは知りませんけど。


ゆたぼんと村上春樹作品の共通点5:物語中盤で旅に出る(日本一周)

  ゆたぼんアンチが皆歓喜した、「ゆたぼんスタディ号全国一周」。全国の不登校の人たちに触れ合うとか言っときながら、途中でお金足りないからクラウドファンディングとか、「ただ遊びたいだけじゃねーか」とか叩かれまくってましたよね。

  村上作品の主人公も、東京から北海道、中野から四国、のらくろの巣の中とか、井戸の底とか、色んなとこに旅に行きますね。そんなところです。

ゆたぼんの今後を占う


村上春樹には、ぜひゆたぼんをモデルにした小説を書いて欲しいですね。
ゆたぼんは今後、口癖が「やれやれ」になると思います。というか、もうすでにやれやれが口癖かもしれない。ご清聴ありがとうございました。



*村上春樹作品とゆたぼんについて、10個ぐらいのネットの文章を読んで参考にしました。あざした。特に、「はてなダイアリー ねじまき鳥クロニクル書評」は大いに参考にさせていただきました。リンク載せておきます。

https://www.bing.com/ck/a?!&&p=c5c0c6c8a9db2814JmltdHM9MTcwNzE3NzYwMCZpZ3VpZD0xMDRlYWIyNS04YWI3LTYxMTctMGZkMi1iYTRiOGI1ZDYwMWEmaW5zaWQ9NTMyNw&ptn=3&ver=2&hsh=3&fclid=104eab25-8ab7-6117-0fd2-ba4b8b5d601a&psq=%e3%81%ad%e3%81%98%e3%81%be%e3%81%8d%e9%b3%a5%e3%82%af%e3%83%ad%e3%83%8b%e3%82%af%e3%83%ab+%e8%80%83%e5%af%9f&u=a1aHR0cHM6Ly9zb25oYWt1aHUyMy5oYXRlbmFkaWFyeS5qcC9lbnRyeS8yMDEzLzA5LzIzLzA3MTM0Mg&ntb=1

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