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RAKUGOBIYORI(らくご日和)

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噺家・玉屋柳勢( タマヤ・リュウセイ )のブログ。寄席のこと、自主公演のことに加え、歌舞伎のことや趣味のことまで。
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記事一覧

トリを終えて(池袋演芸場二月下席)

まずは、お越し下さったお客さま、池袋演芸場の皆さま、ご出演下さった師匠方、先生方、前座さん、弟弟子、協会事務局の皆さまに心より御礼申し上げます。 また、楽屋へお気遣い下さいました皆さま、本当にありがとうございました。 お客様からは、「寄席としての醍醐味を味わえた」「流れが素晴らしかった」など、多くのお褒めの言葉を頂きました。顔付けして下さった河村さん(池袋演芸場支配人)のおかげです。 さて、 改めまして、 2月下席、池袋演芸場昼席のトリ、 無事勤めることが出来… ま

トリのご案内

この度、 2月下席、池袋演芸場昼席でトリを勤めさせて頂くことになりました。 アタクシにとってはこれ以上ないくらい有難い顔付け。 お知らせ出来て本当に嬉しいです。 昨年の暮れに協会から連絡があり、トリが決まったことを師匠・市馬に報告しました。 「良かったなぁ。見てくれる人は、ちゃんと見てくれてるんだな。(2月下席は)元々休みの予定だったけど・・・出るからな!」 と喜んでもらえたようで。 地味ながらもコツコツやっていることを師匠はわかってくれていたんだなぁ、と嬉しく胸がい

正楽師匠のこと

紙切りの林家正楽師匠がお亡くなりになりました。 初席でご挨拶したばかりでしたし…信じられません。 アタシの二ツ目時分の名前『市楽』は正楽師匠から頂きました。 二ツ目昇進が決まって楽屋で「名前どうしようかね?」なんて話しをしていたら、正楽師が「キミに『いちらく』をあげるよ」 正楽師が以前名乗っていらした『一楽』を紙切りでなく噺家のアタシに?と驚いていると、 「市馬さんの弟子なんだから、『いち』は市馬さんの『市』ね」 これで『柳亭市楽』に決まりましたから、アタシにとって

中村鷹之資さんの翔之會で…。(於:浅草公会堂)

歌舞伎役者、中村鷹之資さんの勉強会、翔之會に行って参りました。 池袋の独演会で申し上げたお手伝い、そして101らくごでお話ししました大向うで、です。 大向うはお芝居を引き立てる物ではありますが、大向うが下手ですと…。 これは責任重大だな、ということで一朝師匠に相談しました。 一朝師は二ツ目時分に歌舞伎座で笛を吹いてらした方ですから、良いアドバイスが頂けるのではないかと思いまして…。 アタシ「今度大向うをやることになりまして…」 一朝師「あそうなの。演目は?」 アタシ

馬風師匠と寄席の神さま

九月上席は鈴本演芸場の交互の出番で 6日やかん 7日善光寺由来 8日つる 9日松竹梅 10日七段目 を勉強させて頂きました。 寄席は日々様々なお客様、何が起こるかわかりません。 実は9日にちょっとしたハプニング?がありました。 なんと馬風師匠が出番直前にトイレに行きたくなってしまったのです! どうも帯を締めたらお腹を刺激してしまったそうで…。 いや、我々は可笑しくて仕方がなかったのですが、馬風師ご本人は大変です。 馬風師「どうしよう…。キレる…キレる…」 前座

人間国宝、五街道雲助師匠のお稽古では。

はじめに…『粟餅』は「う〇こ」のネタで、『にせ金』は「キン〇マ」を連呼する噺…です。 「雲助師匠が人間国宝に」 そのニュースを聞いたアタシは飛び上がって喜びました。 雲助師はうちの協会でお稽古をつけてもらったことが無い人なんているかしら、というくらい皆がお世話になっている師匠です。(注1) 師匠はその芝居中にお稽古を付けて下さることもあり、寄席の初日には雲助師匠にお稽古をお願いする二ツ目が大体何人かいて、先輩「お稽古頼みに来たの?誰?」アタシ「雲助師匠に。上げのお稽古

二月歌舞伎座~鷹之資さん『船弁慶』

最近、You Tube等で日本舞踊をよく見ます。 繰り返し見てしまうのが、故人では上方舞の吉村雄輝さん。 役者の梅幸さん、富十郎さん、三津五郎さん…。 現役では当代猿之助さんの踊りが好きです。 あぁいいな、と思う人は皆ピタッと綺麗に止まるんです。 観ていて本当に気持ちが良いです。 舞踊という動きの芸術。その基本は、動かないことなのかも、なんてことを近頃思います。 そして、きちんと止まる為には、まずきちんと立つこと。 能の稽古仲間で、長年、合気道をされている方がいら

新春浅草歌舞伎で『吃又』を。

新春浅草歌舞伎・二部を観劇して参りました。 正月恒例の若手公演、3年ぶりの開催です。 お目当ては義太夫狂言の『吃又』。 今は亡き吉右衛門さん演じる又兵衛に感動し、この芝居が大好きになりました。 師匠から「物見せよ(見張れ)」と命じられ、花道の付け際に座り、グッと息を詰めて揚げ幕の向こうを見る。 真っ直ぐな思いが現れたその眼に、一瞬で心が奪われたのを思い出します。 最近では義太夫狂言の出る機会が減り、寂しく思っていましたが…。 今回、又兵衛夫婦を演じる歌昇さんと種之

2022年を振り返って

みなさま、2022年も残すところあと数時間となりました。 今年のランキングを発表いたします。 以下じぶえもん新聞第2号(2022年12月28日)より。 「毎年恒例の最も掛けたネタランキングが柳勢より発表された。 昨年は『源平盛衰記』、トリネタ偏では『阿武松』が1位となった。 今年は真打三年目。寄席の若手真打の出番が多く、時間調整ができ、十五分程度でできるネタが圧倒的に増えた。 寄席の若手真打の浅い出番には「会場を温める」「時間を調整する」など基本的な役割が要求される。

寄席の『浅い出番』とは。『お血脈』『風呂敷』『甲府ぃ』(玉屋噺の会のご報告)

真打ちになって2年半。 寄席では、主に前座さんと二つ目さんの次の出番、真打ちの最初の出番を頂いております。 俗に『浅い出番』と言われますが、これで中々大事な出番なのです。 寄席は毎日様々なお客様がいらっしゃいます。 ご常連の方、初めてのお客様、観光やバスツアーでいらした方・・・などなど。 トリが変わればお客様の層が変わるのは当然ですが、同じトリでも10日間毎日違います。 陽気な日、重たい日、新作がよくウケる日、まくらはよく笑って頂けても落語本編ではウケない日。 同

十月大歌舞伎・第一部を。(『荒川十太夫』)

十月大歌舞伎初日の第一部を観劇。 後半の『荒川十太夫』のことを。 結論から申し上げます。 すっごく良かった! 胸にグッときちゃいました。 これは講談を原作とした新作です。 それも神田松鯉先生が掘り起こされた作品だそうで、 アタシはお弟子さんの伯山さんのCDで聴いたことがあるだけ。 講談としても珍しい部類の作品なのではないでしょうか。 (御一門ではそうでもないのかしら) 今回主演の松緑さんが大の伯山贔屓。 よく芸術協会の寄席にもいらしているそうで、 今回の企画が実

提出した「参加の意図」を。 /文化庁芸術祭「玉屋噺の会」

このたび、自主公演「玉屋噺の会」は、令和4年度(第77回)文化庁芸術祭へ参加いたします。 応募の際に文化庁へ提出した「参加の意図」「公演のあらすじ・概要」は以下のとおりです。 「参加の意図」 話芸そのものでの挑戦、噺家の未来を見据えた挑戦、の二本柱。 「売りたい誰か」による商品としての落語・落語家・落語会が散見される昨今。誰でも気軽に落語をし、会を開催できるのが現状。 その中で、落語界の伝統やしきたりに忠実に、精進を重ねる演者がまずは豊かになるようにと、落語を磨くとともに

圓窓師匠のこと

落語協会から連絡がありまして、圓窓師匠がお亡くなりになったそうです。 アタシが入門(約18年前)した頃には、圓窓師匠は腰を悪くされてあまり寄席には出演されていませんでした。 うちの師匠や圓太郎師匠の世代はよくお稽古をつけて頂いていたそうです。 アタシは直接お稽古を付けて頂いてはいませんが、 持ちネタでは『甲府ぃ』、『三年目』、『短命』、『叩き蟹』、『佐々木政談』辺りはネタ元が圓窓師匠です。 他にも、一朝師匠の『尻餅』、さん喬師の『そば清』、 宿屋の主が養子で紐を引っ張

金翁師匠のこと

5年くらい前だったでしょうか。 金翁師匠が、若い頃に手掛けた新作の台本を落語協会に預けた という話を、孫弟子のときん兄さんから聞きました。 アタシは師匠の元にお伺いし、 これから台本を読ませてもらい、今でも出来そうな作品があったらやらせて頂きたい そう師匠に申し上げました。 すると、 「ああ、どんどんやって。ただ作家の書いた作品なので、その人や遺族の許可を取らなくてはいけないので、高座に掛ける前に知らせてほしい。 それから、自分の前でもやってもらいたい」 そう