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睡魔奮闘記

今日は一粒万倍日。蒔いた一粒の種もみが万倍になって返ってくるという、とても縁起の良い日だ。今日始めたことは後に大きな結果を連れて来ると言われており、何かを始めるには勿論、上手くいかないことの軌道修正や再出発にも絶好の日なのだ。それから、本日9月9日はオオサンショウウオの日でもあるらしい。

オオサンショウウオの姿が数字の「9」に似ていることや、繁殖のため9月ごろにオオサンショウウオの活動が活発になることから、「9月9日」を『オオサンショウウオの日』として、京都水族館が2018年4月に一般社団法人 日本記念日協会へ申請し、認定されました。
引用:京都水族館公式HPより

そんな記念すべき日に、わたしは何を蒔こうかしらと考えていた。時刻はもうすぐ午後の5時半。夕方、そして夜になれば、だんだんと「今日も1日おつかれさまでしたモード」になっていく。そうなれば、身体も心も自然と活動からリラックスへと準備を始めてしまう。残されたチャンスは今しかない。今何かをしないと。一から始めることは思いつかなくても、何か行動という種蒔きを…

という訳で、noteに今までの眠すぎた時の体験談を書くことにした。何故それを書こうと思ったのかといえば、理由は特にない。今何故か思いついたのと、今後noteに自分が眠気を我慢した時のことについて書く機会はたぶん無いだろうと思った、というのが強いて言えばの理由である。正直わたしにもわからないが、せっかく思いついたし、夕方は短いので早速書いてみる。


①眠すぎて先生を睨みつける

正確には、「睨みつけようと思った訳ではないが、眠気に負けないように目を必死に開けようとしていたら、そんな顔面になってしまった」である。

ちょうどその日は中学校の参観日だった。お昼ごはんを食べてから最初の午後の授業。それはまさしく魔の睡魔タイム。1番後ろ、窓際の左角の席だったわたしは、「どれどれ、今の子たちはどんな感じでノートを取っているのかな」とでも言うような父兄たちの眼差しを感じながら、授業開始10分くらいで早々にやってきた睡魔と戦いを始めていた。

寝てはいけない。参観日という緊張のイベントのなかで、うっかり寝てもし先生に見つかってしまったら、名指しで注意されてしまうかもしれない。そうしたら「まさかの参観日に寝る?」「こんなに知らない人が来ているイレギュラーな状況で寝れるの?」と、なんとなくいつもの授業の居眠りよりも背負うものが大きい居眠りになりそうな気がする。おそらく来ているだろう母も、参観日に娘に寝ていて欲しくはないと思う。

必死に板書に励んで、睡魔を追い払おうとする。その日の授業は図形が多く出てくる内容で、よれよれの頭で定規とコンパスを駆使しながら、眠気の割には綺麗に文字と図形を描いた。

いつもはそこまで眠くなることはないのに、その日に限ってやたらと眠かった。緊張が逆に睡魔を呼んだとも考えられる。(大きめの会場の企業説明会で、うっかりウトウトしてしまったことがある。緊張と慣れない場所や雰囲気のストレスからの疲れのせいだと思う。そういうことにさせて欲しい。)いっぽうで参観日とか関係なく、授業はちゃんと聞きたかった。(真面目)

幼い頃から、「人の話を聞く時は相手の目を見ましょう」と教わってきた。そして出来るだけそれを心がけてきた。その日も教えを忠実に守り、他の友達が前を向いているのを良いことに、1番後ろの席から、絶対に人に見られてはいけない形相で、思い切り先生にガンを飛ばしまくった。

目が半分くらい閉じかけているのが自分でもわかる。でも仕方ないのだ。抗えない。こうすることでしか、正気を保てない。人が半目で寝ている時の顔は本当にこわい。心なしか先生が怯えていた気がする。がんばりを認められたのか、一瞬落ちかけても先生は何も言わないでいてくれた。

授業が終わったら一気に眠気が覚めた。ノートにはミミズ文字の呪文と、コンパスと定規を駆使して書いた渾身の魔法陣(コンパスで書いた円なのに、何故かよれたり曲がったりしている。)が並んでいて笑った。


②仕事中にお客さまの前で

レッドカード、一発退場を宣告されそうなタイトルである。

当時、キャンプ場の用具売り場&お土産ショップで働いていた。平日はお客様の数もまちまちで、お客様が来ない日は数字の処理業務や在庫整理などをする。

その日はぽつらぽつらとお客様が入って、言ってしまえば暇だったので、上司に提出する書類を作成しつつ接客をしていた。

電卓を打ちながら、ファイルに閉じられた用紙に数字を書く。

お客様が来たので接客。また作業に戻る。

順調に作業していたら、午後の2時前くらい。来てしまった、お客様と共に、招かれざる客、睡魔が。

その日スタッフはわたしひとり。なんとしても起きていなければならない(というかどんな状況でも仕事中に寝てはいけない)。睡魔と格闘しつつ、店内の様子を伺う。特に売り場がわからないとか、困っている様子はなさそう。手元の作業を続行する。

あ、だめだ。ぼーっとしてきた。いや、寝ちゃだめだ。万が一寝てしまったら、「ここのキャンプ場のスタッフは仕事中に寝るのか」と思われて、わたしだけの責任に留まらず、キャンプ場の皆さんに迷惑がかかってしまう。キャンプ場そのものの信頼にもかかわる。ひとりのスタッフとして雇われているのだ。必死に言い聞かせる。

とりあえず苦肉の策で、電卓を少し強めに叩く。あ、意識が飛びそう。耐えるのだ。舟をこいではだめ。少なくとも、今このお客様がここの空間にいる時は、きちんと座って作業をしているように見えないと。(ポーズだけでもちゃんとしている風に見せることに切り替えつつあった。)

飛びかける意識のなか、数字を計算して鉛筆で書く、を繰り返す。頭と手を動かす。寝たら死ぬぞ。寝たら死ぬ。ん?可愛い羊がいる…1頭?あ、もう1頭…もふもふだなあ。あったかいなあ…かわいいなあ…

ハッ!!!として現実に戻ると、手元の書類に平仮名で「ひ つ じ」とよれよれの文字で書いていた。自分では電卓に表示された数字を書いているつもりだった。頭では起きていようとしながら眠りに落ちると、こういうことになるらしい。鉛筆で本当によかった。眠い時に羊を数えたら、もう現実には戻れないだろう。本当に焦った。

幸いお客様には見られていなかったようで安心した。本来数字しか並ばない場所に「ひつじ」と平仮名が書かれているのがたまらなく面白くて、しばらく1人で笑いを堪えていた。その後はさほど眠くならず業務を終えることが出来た。勿論「ひつじ」は綺麗に消しゴムで消した。


わたしたちは時に、眠ってはいけない場所で眠くなったり、笑ってはいけない場所で笑いが込み上げてしまったりすることもある。そんなピンチを乗り越えながら、今日もなんとかかんとか生きているわたしたち。えらい。本当に、生きてるだけでえらい。お疲れ様です。

今日わたしが蒔いた一粒の種もみは、中身がすっからかんのようにも見えるけれど、久しぶりにnoteを更新出来たことが、思いのほか心に実りをくれている気がする。

皆さまも、素敵な一粒万倍日、そしてオオサンショウウオの日をお過ごしください。




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