愛すべき小さなユリゲー Butterfly soup と古き良き少女漫画の思い出

 Butterfly soup という、お気に入りのノベルゲームについて書くつもりだ。

作られていたのは知っていたけどすっかり忘れていた続編の2をつい先日ダウンロードし、今は楽しみに取っているのだが、ここでは最初に発表された1を紹介したい。だがたぶん私の感情と思考は書いている間に浮遊して、何を書きたかったのかわからなくなり、当初の目的はどうでも良くなると思う。まぁいいか、日記だし。

元々ノベル系ゲームあるいはADVがそれほど好きではなく、(あえていうなら、ほとんどのゲーマーにとって名作の一つであろうシュタゲと一連のシリーズぐらいしか、今すぐ思い出せない)自分がこのゲームを知ったのは、
MOD関連の海外掲示板で、「今やってるゲームについて教えて!」みたいな雑談スレッドに、自分がやりとりしたことがある誰かが書き込んでいて、「あいつがいいというなら、やってみるか」とリンクからたまたまたどったたのだった。

このゲームを百合作品と書いていいのか、様々な理由(ファンによっては、そのカテゴライズに怒る人がいるかも知れないし)で迷ったんだけど作者自身が間違いなく百合カテゴリーに入る(そのジャンルであることを否定しない)とIGNのインタビューで語っている記事を知ったので、私が百合ゲーとカテゴライズしても問題ないだろう。

あまり意味のない補足かもしれないが、自分は百合といわれるジャンルの娯楽作品、漫画、アニメ、映画、小説等を、意図的に選択して触れることは殆どない。つまりそのジャンルの固定ファン層でも、なにか特別な意識があるわけでもない。好んで探して見ることもなく、一方で、創作物内で描かれる百合抵抗もない。

ただ理解しているのは、男性が男目線で描く百合っぽい描写と、女性が描く百合(作者がレズビアンの場合もあるしそうでない場合もあるだろうが)は、なぜかわからないが、「かなり違う」経験則で感じている。男が男向けに作った作品の百合描写は、私にとってはあざといのだ。あまりにも作り物っぽく嘘くさいといったほうが正解か。

このノベルゲーではアメリカのアジア系女学生達直接的な性描写ではなく、友情、恋愛感情、そして日常が、個性的なタッチの絵と共に描かれている。 

 メインの登場人物(女学生たち)は同好会のようなベースボールクラブに、様々な理由で入る。作中でも比較されている「ソフトボール」ではなく「野球」チームに入るというのは、作者にとって重要なはずだが、ここでのベースボールの描写は、男目線でいうと、なにか違うスポーツのようにも思えるぐらい、あまりリアリティーはない。言葉は悪いが、どうしても野球ごっこ、草野球に思えてしまう。やはりそれは、一般的な男が野球という団体競技で感じる、遊びであろうが技術を磨き勝ち負けを追求する、マッチョなスポーツ印象とは少し違う。つまり、学生たちによるスポ根ものでも、その活動自体がメインテーマでもないと思う。

 この作品をPCでプレイした当時、リアルな俳優が演じるのではないゲームやアニメで、本当に心が揺さぶられるという体験を、私は長い間忘れていた。まさしく時間つぶしで、昔お気に入りだったはずのADVをプレイしても、オススメアニメを見ても、感情がさほど動かなくなっていた。飽和状態だったのかもしれない。

だが、この作品をプレイしている途中で、私は何度も笑っていたし、そして気がつけば泣いていたなぜかわからないが、とても愛しく懐かしい気がして、「この感覚は覚えている。なんだったろう、、」と考えて、はっきり思い出したのだ。

自分が思春期から、おそらく20代前半、社会人とか大人の責務に縛られることなく、一番正直に生きていた、(そして、周りにそんな人が自然に集まっていた時に)、それでも同性の友人=男どもには、いくら語ってもあまり理解してもらえず、それについて語らなくなった創作物の数々だ。 

それは当時、若い男が一人で本屋で購入したりコンビニで買うのは、エロビデオを借りるのと同じくらい、時にはそれ以上に、自分にとっては恥ずかしいモノだが、ページをめくるたび感じた心の震えと浮遊感は、他の物ではかわりが効かない。 それは私にとっての、古き良き日本の少女漫画だった。

性的な関係を持ちたい、あるいは持つようになった異性に、自分のその趣味を教えることは、ほぼなかった。それは「自分にとって,あまり人と共有したいと思わない楽しみ」であり、「男と女の関係になることがないと、自分もおそらく相手も確信している異性」とのみ、私は「少女漫画」についての情報や意見交換を心から楽しめた。

一番最初は、中学生の頃だろうか、姉がたまたま読んでいて共用のTV部屋の机においていたのをなんとなく読んだのだっけ。それから異性の先輩、同級生に教えてもらった、たくさんのオススメに、気がつけば浸かっていた。 

くらもちふさこさんや、坂田靖子さんや、内田善美さんや、大島弓子さん、他あまりに多くて名前が思い出せない、女性向けコミックという、マガジン、ジャンプやチャンピオンの、青少年向け漫画の興奮とも、あるいは様々なジャンルの小説とも違う、絵で描かれた至高の文学作品を知ったとき、私は世の中にこんなに素晴らしい創作物があるんだと、夢中になったのだった。

このノベルゲームは、あの感覚だ。なんとなく胸が切なくなり、少し心が浮遊し、漂って、もうしばらく、そこにいたくなる。今書いていても、もう自分の頭の中は、2をプレイして早くあの感覚を味わいたいと思っている。まとまりそうにも、まとめる気もなくなった。ただ浮遊しよう




この記事が参加している募集

心に残ったゲーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?