きみの声聴いてた

【詩】

 

靴ばかり見ていた
地下鉄のつり革
傘もささずに
どしゃ降りのなか

空ばかり見ていた
鼓動数えながら
構えもせずに
眼差しのなか

きみの声聴いてた
在るものと無いもの
泣き叫ぶよに
誰にともなく

何年も求めて
影ばかり追いかけ
公園の池
畔のヘビイチゴ

くりかえし聴いてた
あかね雲の先
1987年
西の街に焦がれて

ダイヤルを回した
坂道の公衆電話
桂花が鼻の奥
ツンと痛んだ

線路沿い歩いた
誇りを抱えて
時計の針が止まり
大丈夫?と訊いた

桜の回廊
夕闇の窓の灯
青いままだよ
嘘、本当だよ

 

tamito

#詩

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