『未来』3月号掲載8首+α

無意識の夢と現のあわいにてラピスラズリの蝶が舞っている

肉体は魂の舟 遺伝子の川を漂うGeneのさざなみ

至福の日々を過ごすきみに花束を天使の集うスピノザの海

最期の地は何もない極地なり灰色の風が吹いている

無能力は生のすべてを阻害する絶対的な悲しみあふれ

悲しみの果てには瑠璃の悲しみの彫刻があり集められゆく

朝方のぼやけた意識の心象の花野で猿が僕を見つめる

月光がきみの御髪をかがやかす時は止まりて波音きこゆ

海彼通信コメント
◼️黒塚さん、生死の認識論だろう。七首目は夏目漱石『夢十夜』のようで面白い。一度読んでみては。一方で「絶対」といった言葉が歌に合うか、考えてみてもいい。

月担工房12月号
田中翠香選

それぞれの風の中にいるわたしたち(いつまでも風は吹き続ける)