受け容れてみせるから、あなたの好きに呼んでほしい

剣みたいに、鎧みたいに
鍛えて 戦って 蹴落として 比較して
負けないために 壊れないために
強くなりたくはない

大したことじゃないの
見知らぬ地で3日待ちぼうけをくらうことも
喉奥をふさがれて鼻呼吸すらできなくなることも
パジャマのまま駅前のコーヒーチェーンに行くことも

それは私が強いからじゃなくて
ミジンコみたいに小さかった私が殻の中で愛されながら小さな私を殺して殺してぐちゃぐちゃに溶かして待ちぼうけも窒息も他人の目も飲み込んだからで
(最近だと観覧車とジェットコースターは飲み込めたけどマンモスの頭は飲み込めなかったのが悔しい)
あの殻は愛だったって 思うから 私は

私は大きくなりたい
溶けながら 揺らぎながら
飲み込んで 受け容れて 愛していたい
海みたいな、月光みたいな

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 起きたらSからラインが入ってた。ブログで私の話をしてくれたと。それだけでめちゃめちゃうれしかった。私はSの言葉が好きだから、彼女の言葉で私のことを書いてくれたのがまず、それはもう、うれしかった。丁寧にリンクまで貼ってくれてたから布団から出ないまま読んだ。18のころの話と、この前会ったときの話だった。(Sは大学1年生のころ同じ軽音楽部で同じバンドでギターを弾いてくれて私は歌ってた)
 当時いつも私の歌が好きだよって言ってくれてたのは本当だったんだなあってうれしかった。(ちょっと信じられてなかった)私が覚えていないことを覚えていてくれてうれしかった。(誰もに忘れられたことはなかったことになってしまうじゃん)私もSの弾くギターが好きだったって思い出してうれしかった。ギターのことよくわかんないんだけど。

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 わかってもらうために生きるのはもうやめたけど、わかってもらえたと思える瞬間があることは喜びだ。Sに私のすべてをわかってもらえたと思ったわけではないし、そう見えてたのかなるほどって思ったとこもある。けど、けど!!! Sから見た私めちゃめちゃ輝いててそれだけでハッピーじゃんやったぜって気持ち。かわいく書いてくれてありがとって気持ち。ここ赤線引いときたい気持ち。

 18のころ身に着けていた豹柄のスキニーが、偉そうな言葉遣いが、武装だったのかどうか自分では正直わからない。無意識のうちの武装だったかもしれないんだけど少なくともあのスキニーは似合ってたと思うの!
 ただわかるのは、たぶんあのバンドのひとたちが、常に強そうに偉そうに振る舞う私を許してくれて、私の歌が好きだって言ってくれるひとたちが、柔らかく包んでくれていたから、私はあの部活での最初の1年を壊れずに乗り越えられたんだろうってこと。私の中で強いものは硬いもので、硬いものはすぐに壊れてしまうから。

 これはSからの見え方を改めてもらうためじゃなくて自分のため兼今の自分と近い場所にいる人たちのための言語化なんだけど。
 私が得た財産だと思ってるのは似合うものを選べるようになったこと、でなくて、日々揺れる気分に合わせてドレッシーな赤いワンピースも膝丈のAラインスカートも4XLの古着のシャツも選べるようになったこと。今そのときの自分の感覚に合わせてお前ともキミともあなたとも言う、メシともご飯とも食事とも言う自分を認められるようになったこと。
「お前とメシ食いたい」って感覚、あんまりならないけど、たまにそうなったときにそう言えるようにちゃんと自分の中に置いてある。「お前とメシ食いたい」って私に言われたらびっくりしてね。

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 無敵だったあの日、Sと会った日からちょっと時間が経って、最近ちょっと怖いことがあって、それは自分が自分でいられなくなること。自分が生まれた(って自分で決めたっていうか殻から放り出された)日に決めた純粋なたったひとつが、2か月半の間にいろんなものに触れたりちがう解釈をしたり見せ方を考えたり疲れたりして、ぼやける瞬間をたまに感じている。概念に輪郭を与えるために必要なのは言葉で、でも言葉には解釈の余地があって、自分しか知らない概念を保ち続けるにはどうしたらいいんだろう。

 言葉を吐きながら、ぼやけたら立ち返って、自分として生きる日々を積み重ねること、かなあって思っている。
 だから立ち返って冒頭の詩を書いた。私の純粋。私の愛。
 愛として女として、じゃあなんのために、何を使って、どうするのか。
 ってことを考えてる現状、生後2か月半の満月の夜。

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