顧客選定

こんにちは!小笠原です。長い長いメールで失礼します。

最初にお断りしておきますが、仕事の用件ではありません、Facebookで顧客十戒を読んだユーザーよりメールを頂きましたので、ご連絡を差し上げた次第です。

と申しますのも、そのメールの中に、

「お客様には、選ぶ権利があります。しかし私達は、お客様を選べません」

という大変な誤解を見かけたのでした。

これはまた補足編を配信しなければなりませんでしょうか?どう思われます?


建築系のようなニュアンスのメールでしたので、建設会社や工務店でしょうか、それとも設備会社や建築士でしょうか。

少なくとも、顧客を選ぶゼネコンではないように思いますが

建築業界ではゼネコン、広告業界では電博などの大企業でしたら「顧客を選ぶ」というか、それなりの予算を持っていなければ、発注できませんから、自然に顧客選定できるような仕組みになっています。

余談ですが、これは、マーケティングの実務を請け負っていた頃の私も参考にさせて頂きまして、断りたい相手から依頼があった時には、ワザと電博並みの金額の見積書を出していました。そうやって顧客を選んでいたわけです。


その金額を見て「なんだ!この金額は!」と怒りの電話をかけてくる擬似客もいましたが、こちとら最初から断るつもりですから、蛙のツラにナントカ(笑)で、
「電博さんから見積書を取ってみて下さい。それくらいの金額が妥当でしょう」

「え?大企業と比べるなって?小さい会社だから安く頼めるって?確かに弊社は零細企業ですが、一寸の虫にも五分の魂がありますように、社是があります」

「小さな会社だから安く済むとは限りません。そういうことでしたら、小さな会社というより、企業規模にかかわらず、安く発注できる先を探してみるようお勧めします」

これで、まぁ、お終い。


特に、見積金額に多いと思いますケド、仕事が欲しいばかりに、無理な金額で引き受けて苦労したというか、従業員のみんなに苦労をかけたツライい経験がありますからね。無理な仕事は、絶ッ対に引き受けないようにしていました。

無理が通れば道理は引っ込むといいますが、その反対に、道理が通れば無理は引っ込むわけです。

話を元に戻して、BtoCならば顧客選定しにくいかも知れません。

タクシー業界では乗車拒否がご法度ですし、マク○ナルドのような大衆食堂や水商売、コンビニ、小売店、ネット通販などは顧客選定できません。

ただし、3つの例外があります。一つは、業務妨害レベルのマナー違反。大衆浴場の「刺青お断り」が典型的ですね。

もう一つは、特殊な業態。店舗でありながらも小売店(会員)のみ入店できる問屋とか、高級路線のショップ&レストラン。銀座のクラブ、一見さんお断り、フレンチのマキシムなどが典型的。


そういえば、むかし、まだ20代の頃、ポルシェビルに入っている銀座のクラブへ連れて行ってもらった時、ママさんらしき気位の高そうな和服美人から、

「ここへ若い人が来るのは珍しいのよ?本当は、若い人が来られるような金額のお店じゃないの。オホホホホホ」

とズバリ言われたことがあります。その時「銀座のクラブなんか一生涯来ねー」と決めましたっけ

そうした格やプライドを重んじる店舗はヨーロッパに多いようです。さすがは階級差別を伝統とする国々らしく、

「カネさえ払えば買えるんだろう」

という東アジア特有の拝金主義が通じない店舗が多いようです。考えてみれば当たり前で、店舗のオーナーも人間ですから、プライドがあります。高級路線となれば特に。


そのプライドをカネで踏みにじられてまで売るつもりはないという主張は道理といえば道理で、道理が通れば無理は引っ込むわけですね。

いつだって商品を持っている側のほうが強いわけですから、売上と何を天秤にかけますか?って話です。

またまた余談が長引きました

さて、最後の一つが重要。さらに3つあります。

BtoCで顧客選定は難しいかも知れませんが、BtoBでしたら容易です。

実際、自分達と同レベルの知識がなければ販売しないという業種もありますし(危険物の取扱などがそうですね)、紹介がなければ販売しないという業種もあります。一見さんお断りはBtoCだけの特徴ではないようです。

そうした、業種業態の独自性を顧客選定の道理にすることができます。


二つ目。

上記のプライドと関連するかも知れませんが、円滑に仕事を進める上で必要な尊厳や矜持を取引条件にする企業もあります。

誰あろう弊社がそうです。

ホームページの丸々1ページを割いて「お取引できない場合」と、その理由を開陳しており、その中に、

「高圧的あるいは友好的ではない人物が営む事業」という条項があり、

「こちとら客だぞ!というような尊大な態度の人物とは、建設的なディスカッションが不可能です」という理由を添えています。

顧客を断るというより、あとから後悔するくらいなら、最初から取引しない方がお互いに得ですから。


そして最後に、顧客選定の重要性。これが最も補足したい内容です。

顧客を選ぶのは、うぬぼれでも傲慢でもありません。というか、選ばなくてはなりません。

なぜなら、顧客を選ばないということは、お金を払ってくれるなら誰でもいいという証になるからです。

「誰でもいいからカネをくれ」ということは、買う側にしてみれば「それなら安けりゃドコでもいい」ということになります。だから価格を叩かれることになるわけです。

誰でもいいということは、誰でも買えるありきたりの商品を売っているということ。


強みも差別化もヘッたくれもありません、突き詰めると「お客さんは現金支払マシン」だと思っている証拠でもあります。

マーケティング戦略は、誰に売るか決めるところから始めます。

誰に?とは、マーケットを決めること。マーケットをセグメントすること。

人には氏名がありますから、最終的には、個人になります。ターゲティングを突き詰めると、個人名へ行き着くわけです。

それを踏まえてメールを振り返ってみますと、建築系なのに、

「私達は顧客を選べません」


ということは、

「お金を払ってくれるなら誰でもいいんです。私達は顧客が欲しいんじゃない、お金が欲しいんです」

と宣言しているも同然。その危険性を補足しきれていないように思いました。

建築系なら、少なくとも、個人向けか、法人向けくらいは選定できるはずです。

スカンジナビア航空が顧客を法人に絞ったことで成功した話(真実の瞬間)は有名。

長い長いメールになってしまいまして恐縮です。

最後まで読破いただきましてありがとうございました。


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