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美嘉「君空」読書感想文

“ ケータイ小説 ” というジャンルが誕生したのは2000年代。

女子中高生が携帯に打ち込んだ文章を、ネット上にアップしたものが元となっている。

特徴としては、横書きの文章。
読みやすくはある。
内容は難しくはない。

“ ケータイ小説 ” はブームとなる。
人気の作品は、本として出版された。
薄っぺらい本ともいわれた。

ブームから10年を経たが“ ケータイ小説 ” は進化している。
ケータイという枠を超えて、作品として確立している。

本だって、もはや薄くはない。
最近発行された本は、文字数は15万ある。

以上を、回覧新聞の記事で読んだ。
ケータイ小説ブームの先駆けとなった “ スターツ出版 ” の社長のインタビューだったと記憶している。

ほう・・・。
文字数が15万・・・。

やっぱり読書は、スラスラ読めてもつまらない。
ときどき頭を抱えるくらいがいい。

それならいっちょ。
“ ケータイ小説 ” に挑んでみる (*゜ω゜)ゞ


本の文字数

この官本室にあった「君空」は、ケータイ小説だとはどこにも表記されてない。

が、スターツ出版だ。
まぎれもないケータイ小説だ。

「文字数は15万に進化した」というのが読む気にさせた。

読書の目安として “ 文字数 ” がある。
読んだ本の文字数は、おおよそになるけど数えている。

まずはボリュームを測る。
行の文字数×行数×ページ数。

次に文字の密度。
ページをペラペラとめくった目算で、50%から80%の見当をつけてボリュームに乗ずる。

とすると、15万文字の小説とは、そこそこの小説となる。
1日がかりで挑むか、日をまたいで攻略する。

500ページを超えるような分厚い小説だと、文字数は20万は超える。

同じ500ページ超えでも、昭和の小説によくある小さめの文字で、かつ、文字の密度が濃いと30万文字は超える。

20万から30万となると、読破に日数がいる。
ドンと構えて攻めなければだ。

200ページくらいの近年の小説だと、10万はいかない。
8万か9万。
このくらいだったら、一気に攻めて半日というあたりか。

5万から7万が、新書やライトノベル。
7万は超えないかなと。

6万に満たない文字数の本だと、3時間あれば打ち破れる。

借りたこの「君空」は、389ページ。
おおよそ20万字が数えられた。
多めの文字数だ。

が、ページはペラペラとめくれる。
一気読みで半日ほど。

いや、ボリュームよりも、内容はどうなのか?

単行本|2007年発刊|394ページ|スターツ出版

感想

本を開いてから、サブタイトルに『恋空アフターストーリー 』とあるのに気付く。

“ 恋空 ” という前作の続編らしい。
が、この続編から読んでも、差し支えなかった。

その前作は、著者の実体験を元にした140万部を超えるベストセラーとのことだ。
まったく知らなかった。

あらすじについては、読む前から予想はついていた。
どうせ、お涙ちょうだいだろう。

どうせ、甘酸っぱい恋愛だろう。
で、登場するのは、10代の若いカップルだ。

どうせ、難病があったりして、結婚も目前にしていて、少しのすったもんだがあって、愛を叫んだり、1杯のかけそばが出てきたりするのだろう。

それか、交通事故か、幽体離脱するか。
あとは、友情があり、ひどい親がいて、つらい過去などがほどよくブレンドされる。

果たして、ほぼ想像した通りだった。
このあたりはパターンとなっていて、進化は認められない。

男子高校生が登場して、ある日に癌が発生。
入院して、闘病生活して、以前につき合っていた彼女と再会してと話は進んでいく。

恐ろしい本である。
もし、この本で「泣けなかった」と言おうものならマズいことになる。

「人間じゃない!」とか「人の心がない!」と、恋愛至上主義者から指弾されること間違いない。

が、以外にも。
わかりきっている結末なのに、ちょっとホロッときた。

以前はこんなことなかったのに。

ネタバレあらすじ

桜井弘樹は、高校2年生。
16歳。

活発な性格。
女子からは「つき合いたい」と望まれることも多い。

ある日、突然にして癌と診断される。
在学中は入院はせずに、通院して治療を続けることにする。

高校を卒業すると同時に入院。
闘病生活を送る。

家族は、毎日のように見舞いに訪れる。
親友も来て励ます。

ある日。
美嘉が病室に現れる。
2人は、以前に交際していたのだった。

別れてからは、2年以上の空白の期間があった。
が、また2人は、交際をはじめることなる。

入院から2年が経った。
桜井は20歳となる。

成人式を迎えたが、もちろんベッドの上だった。
容態は、日を追うごとに悪化している。

今日も彼は、ノートをひらく。
癌と宣告されてから、胸中を書き綴ってきたのだった。

そのノートには、家族や友人や美嘉に対して、感謝や祈りの言葉が連なっていた。

もうすぐ11月となる頃。
夜中だった。

ベッドの桜井は、痛みと息苦しさに喘ぐ。
脇にある花瓶に手を伸ばして、黄色の花びらを1枚むしりとった。

花びらの香りを嗅ぐと、幸福を感じもした。
生きたいとも願いながら「おやすみ・・・」と目を閉じる。

小さな花びらは手を離れて、床に舞い落ちていった。


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