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営業起点で行う事業開発業務 ~営業マネージャーこそBizdevすべき~ #BtoB事業開発アドカレ

■ はじめに
皆さん、こんにちは。dely株式会社の田中 ジミー 基樹です。
「ジミー」はさもミドルネームのように名乗ってますが、高校の時からのニックネームです。

dely入社時の名刺

dely株式会社には2018年に特命係長(仮)という謎ポジションで入社し、レシピ動画「クラシル」のマネタイズを広告領域で何でもやるという仕事をしていました。
社会人になってからの大半のキャリアが営業を過ごしてきた僕が、営業数字を追いながらどのように事業開発業務に取り組んできたかを書いていきます。
営業職から事業開発・Bizdev領域にチャレンジしたい方や、営業部門の管理職などで売上を伸ばしていく立場の方がどのように事業開発に取り組んでいくべきかの参考になると幸いです。

この記事は 「BtoB事業開発アドベントカレンダー」 の16日目の記事となります。
前回はMEDIX野倉さんによる「MEDIXにおける新規事業開発のポイント」でした。
ぜひハッシュタグ「#BtoB事業開発アドカレ」をつけて感想などシェアをお待ちしております!


自己紹介

改めて皆様、こんにちは。dely株式会社の田中と申します。

delyでは上述の特命係長(仮)として数ヶ月クラシルの広告枠の収益改善やタイアップメニューの企画・開発を行いながら営業活動を行った後、「クラシル」「クラシルチラシ」「TRILL」と3つのメディアで営業部の部門長を務め、今年4月からは新規事業である「クラシルリワード」のメーカー向けソリューションの事業開発責任者を務めています。

キャリアの大半を営業職として過ごして来ていますが、「営業数字を伸ばすには売れるものが必要→売り物も作ってしまおう」というスタンスで仕事をし、気付けば事業開発的な動きを取っていたということが多いです。

※前職のフリークアウトでも新規事業のbizdevと兼任しながら営業責任者として事業部・プロダクトの立ち上げ〜グロースを行っており、この成功体験が営業兼bizdev的思考を培った気がしています。

営業部門の人間が事業開発を推進していく意義、そして具体スキームについて話をしていきます。

本題の前に:事業紹介

今僕自身が携わっている「クラシルリワード」について説明をさせて頂きます。

クラシルリワードは2022年7月にdelyがリリースした国内No.1のお買い物サポートアプリです。
新規事業ではありますが、半年で成長率235%と大きくユーザー数を伸ばしているサービスです。

「店頭への移動」「電子チラシの閲覧」「商品の購入、レシートアップ」などの日々のお買い物の中でポイントを貯めることが出来、ポイントは電子マネーやAmazonギフト券など様々な特典と引き換えを行うことが出来るとてもお得なサービスです。

delyにはスーパーマン的PdMやマーケターが多数在籍しており、そのスーパーマンたちがクラシルリワードを爆発的にグロースさせ続け、リリースから1年ほどでお買い物サポートアプリとしてダウンロード数・月間利用者数国内No.1となっています。
※ちなみに自社自慢ですがdelyが運営するレシピ動画「クラシル」もライフスタイルメディア「TRILL」も各ジャンルで国内No.1のユーザー数を誇っています

僕自身はその中でメーカー商品の店頭購買を促進させるソリューションである「マストバイキャンペーン」の立ち上げを行い、メーカー様向けに最適なソリューションとなるよう営業部・開発部と連携しながら売上グロースに奮闘しています。

今年の夏にベータ版をリリースし、サントリー様「金麦<ザ・ラガー>」の6万本購買キャンペーンやMizkan様「味ぽん」での店頭購買促進など、大手メーカー様での取り組みも複数実施頂き売上は右肩上がりで伸びています。

売上が順調に伸びているともちろん人手が足りなくなるので、delyでは人材積極採用中です!以下がBizサイドのオープンポジションとなるので是非ご覧頂ければと思います。

前提:そもそも”事業開発”はなぜ必要なのか

前置きが長くなりましたが、そもそも何故企業は「事業開発」を行う必要があるのでしょうか。

自分は、企業が売上 / 収益を継続的に上げ続ける上で、既存のプロダクト・メニューのみでは限界が来た時に大なり小なりの新しいサービスが必要となる。そして、その時にいわゆる「事業開発」が必要になると考えています。

よく見るミルフィーユグラフ。大半のプロダクトには市場の限界があるので、新規サービス・事業を作り続けないといけない

部署単位でも新規メニューのリリース、もっと引いて会社視点で見ても新規サービスのローンチや新規領域・業界への参入を行い続け、売上を伸ばすことがビジネスを継続成長させていく上でも必須となり「事業開発」が必要となります。

プロダクトを有している会社の売上数字を支える部署にとって「事業開発」を行っていくことは避けて通れない宿命であり、その中核である営業部のマネジメントレイヤーこそが「売上数字を上げるため」に事業開発を積極的にすべきと考えています。

事業開発は何から手をつけるべきか

では、もし明日から「事業開発を行う=売上を伸ばすための新しいソリューションを考える」としたら何から行うべきでしょうか。

ステップは3つあり、①市場構造分析→②競合プレイヤー分析→③アプローチ企業の策定です。それぞれ解説していきます。

①市場構造分析:ビジネスがどのように成り立っているか調べる

ファーストステップはターゲットとなる市場の構造分析です。
事業開発を行う多くのケースとして、経営レイヤーと協議し大まかなターゲットとなる市場候補をピックアップした状態や、既存ビジネスでパイプのある(もしくは隣接する)業界や企業をターゲットとした状態から始まることが多いと思います。

サプライチェーンバリューチェーンの分析を行い、業界構造とプレイヤーのビジネス構造を理解しましょう。

ターゲットとする業界がそもそもどのようなサプライチェーンの連鎖で成り立っているのか、何故そのような業界構造になっているのか。

その上で各領域の主要企業をピックアップしバリューチェーンを分析することで、どのようなビジネスモデルで売上 / 収益を上げているのか、市場・業界の概況がつかめると思います。

このサプライチェーン分析とバリューチェーン分析を行う目的は「自社がサプライチェーンの中でどの領域に参入出来る可能性があるのか」を測るためのものです。

自社のアセットを活用した際に「サプライチェーンの中のどこであれば参入余地があるか」また「仮に参入する領域でバリューチェーンを展開するとしたら実際にビジネスモデルを構築出来るのか(そして競合優位性を構築出来るか)」を主眼に置いてサプライチェーンとバリューチェーンの調査・分析を行いましょう。

②競合プレイヤー分析:競合となる企業の強み・弱みを見る

①で参入すべき領域をおおよそ選定したら競合企業となり得るプレイヤーの分析を行っていきます。
売上が大きい企業が何故顧客から支持をされているのか、競合優位性は何なのか。競合優位性を構築している要素やアセットは何なのか。

まずはネットに落ちている各プレイヤーの数値情報やプロダクト情報などをまとめていきましょう。

競合比較表のイメージ

競合分析を行うことで、各プレイヤーはどのようなクライアントを取引先の顧客とし、何社と取引を行っているのか。クライアントはいくらくらいの発注単価を支払っているのか。
また、競合が顧客に価値提供を行うにあたって必要となってくるバリューの構成要素が定性・定量それぞれ分かってくると思います。

また、仮に自社でサービスを構築した場合に競合との差別化は可能か(競合の強みと弱みは何か)も考えておくと、自社のアプローチ対象とする企業群も策定しやすくなります。

もし競合となるサービスを使用出来るのであれば、可能な範囲で触っておきましょう。顧客が何を価値として感じて利用を行っているのか、自身で体験することも重要です。

③ アプローチ企業の策定:足掛かり市場を見つける

競合分析を行う中で各プレイヤーの顧客属性が掴めてくるので、次は各プレイヤーがどのような顧客属性に強いのか、また何故それは何故かを仮説立てていきましょう。

プロダクトの特徴によって顧客の会社規模(売上・従業員数など)の大小や、得意な業界・領域などがおおよそ分布出来るかと思うので、それらを元に顧客セグメントを作っていきます。

各顧客セグメントの中から自社アセットの優位性、競合特徴を比較し戦える領域を探しましょう。そこが最初の足掛かり市場となります。

競合プレイヤーの顧客群から自社アセットの優位性で勝てる場所を選んでいく

自社のアセットを活用した際にどのようにすればリプレイスが可能かを考え、ターゲットとする顧客セグメントへのアプローチ仮説を練っていきます。アプローチ仮説は後述する顧客インタビューを重ねながらブラッシュアップをしていきます。

また、同時に足掛かり市場となり得る顧客セグメント群を見つけたら、ざっくりで良いので想定される発注単価×見込み顧客数の計算を行うなどTAM/SAMの目安を計りましょう。

TAM/SAMが少なければ参入出来たとしても事業として十分な売上/収益が見込めなくなってしまうので、①TAM/SAMの広げ方を考える(足掛かり市場からの水平展開や垂直展開を検討する)②それでもダメなら参入する市場の見直し、という感じです。

アプローチ仮説の壁打ちを行う

顧客にインタビューを行う。行いまくる。

参入余地がある!と判断したらアプローチ仮説を元にプロダクトとしての骨子をまとめ、ひたすら顧客インタビューを行います。

顧客解像度の具体的な上げ方はBtoB事業開発アドカレで稲田さんのnoteに非常に美しくまとまっているので是非読んでください。

前項の①〜③でまとめた領域に何故参入するのか、その中で競合と比較して自社はどのようなバリューを発揮出来るのかの仮説を説明した上で、クライアントは競合プレイヤーに何故どのようなメニューを発注しているのか、そしてどのような事が出来れば自社への発注余地を頂けるのか。
仮説を基に対象となり得る顧客群にヒアリング&インタビューをしていきます。

この顧客インタビューを行う中で前項の①〜③で考えた仮説が正しいか否かが肌感を持って分かってくると思います。
インタビューを行い仮説をブラッシュアップし続け、ここでプロダクトのベータ版を作り上げましょう。

また、プロダクトのベータ版を作っていくにあたり、ここの顧客インタビューはPdMや開発の主要メンバーに可能な限り同席してもらうことを強くオススメします。

ドキュメントにまとめて連携するなども可能ですが、全ての情報や現場の肌感をテキストデータで共有することは難しいので、PdMや社内開発メンバーと温度感を揃えるために何件かの顧客インタビュー同席、難しければインタビューの録画・録音を共有するなどは必ずしましょう。

チーム内で顧客解像度にバラツキが出てくると、プロジェクトメンバー間でも不要な議論や調整などコミュニケーションコストが後々発生してきてしまいます。

なお、インタビューを続ける中で「実際に市場への参入余地が難しい」、「競合に勝てる余地がない」、「自社アセットが顧客にとって魅力に感じてもらえない」、など様々な事が分かってくると思うので、場合によっては参入領域の見直しや市場の再選定も必要になってくるかと思います。

その際は再度前項の①〜③に戻りましょう。

最後:顧客から導入の意思決定を頂く

顧客インタビューを行う中で自社のアセットを活用したプロダクト仮説に対して、良好な反応を示してくださる貴重なクライアントがいらっしゃれば、プロダクトのベータ版を使って頂きフィードバックを頂きましょう。

ここのフィードバックはサービスを導入頂く、ということを念頭に以下の点に絞りながら行っていくと良いかと思います。

・意思決定基準は何か(Decision Criteria)
→競合からのリプレイス意思決定にあたって何のKPIを見ているのか

・測定指標はどのような数字か(Metrics)
→KPIとしてどの程度の数値基準を求めているのか
→競合はどのような数字で戦っているのか

・意思決定プロセスがどのようになっているか(Decision Process)
→上記のKPI数字を基にしてどのような議論が今後行われるのか
→意思決定を行う中で関与する方はどのような部署・立場の方なのか

・決裁権者は誰なのか(Economic Buyer)
→最終ジャッジは誰がどのような基準で行うのか
→決裁権者と合意を結ぶにあたりどのような要素が必要になるのか

ここは営業としての経験が特に活きてくるところですが、MEDDICなどのフレームワークに則りどのようにすれば導入決定を頂けるのかをシビアに見て頂きフィードバックを頂き、改善出来るところはプロダクトやメニュースペック(価格・仕様など)にどんどん反映させていきましょう。

フィードバックはプロダクトの使用感なども勿論大切なのですが、会社・部署として「新たな価値提供を行い、それを売上/収益に繋げること」が重要です。
競合と比較し顧客に対して適切な価値提供を行えるプロダクトにアップデートしていければ、発注という形でクライアントも返してくれますし、まだ適切な価値提供を行えないプロダクト=発注に繋がりません。

意思決定基準となるKPI指標に応えることが出来、顧客の各ステイクホルダーにも評価頂けるプロダクト・ソリューションが提供出来たのであれば、他のクライアントにも提案出来るクオリティになっているはずです。

ここから先は事例の創出や事例を基にどのようにクライアントをスケールさせていくか、市場を開拓していくのか、という話になっていきますが、どちらかというと営業戦略寄りの話になってくるため、本noteではソリューションのベータ版を実施頂くここまでのステップで区切らせて頂きます。

まとめ

以上
事業開発を行うにあたってのアプローチ方法について、僕なりに記述してきました。

書いていくと営業戦略を練っていく際の考え方や手法とも近しい部分もあったりと、営業職の方は新サービスを販売する際などにやっていらっしゃるスキームも多いのではないかと思います。

本noteの内容を改めてまとめると以下です。

事業開発のステップ論

①自社/市場/競合分析を行いアプローチ可能な顧客群を策定する
②アプローチ仮説を元にした顧客インタビューを行う
③顧客インタビューを重ねる中で、クライアント意思決定基準を把握する

営業起点で事業開発を行なっていくメリットは、このステップを行っていく中で顧客インタビューやクライアント意思決定基準の把握がセールスサイドで出来るため、本格的に営業を行う際に重要となるエッセンスを一気に抽出出来ることにあります。

また、新規のソリューション開発を行うことで営業KPIの変数が大きく上昇する可能性もあるため(アプローチ先の顧客の幅が広がる、クライアント課題に対する打ち手が広がり受注率が上がる、アップセル・クロスセルで顧客単価が引き上がるなど)、数字を積み上げていく上での営業戦略・戦術の選択肢が大きく広がります。

継続的に営業部の数字を上げ続けるには営業戦略と事業開発は切っても切り離せない関係にあり、営業マネジメントレイヤーがこのアクションを取れるようになると新規サービスのPDCAサイクルが非常に早く回るようになってきます。

今回は自身の経験を元にまとめた内容となりましたが、最初に事業作りを行う際には以下の本を参考にしていました!
詳細ステップが細かく載っているので、気になった方は是非手に取ってみてください。

そして最後に、この記事を読んでdelyのBiz領域に興味を持ってくださった方、もしいらっしゃればカジュアル面談などで是非お話ししましょう!お待ちしています!

この記事は 「BtoB事業開発アドベントカレンダー」 の16日目の記事でした!

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全ての記事はこちらから
BtoB事業開発アドカレ 1/2
BtoB事業開発アドカレ 2/2

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