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作業療法士という職業

【作業療法】について


今回、作業療法士という職業についての説明をします.

前回までで【作業】という言葉が【人が生活で行う全ての行為】だということをお話ししました.

「歩くこと」はもちろんのこと「着替えや食事」「旅行や釣り」なども全て【作業】ということです.


以前のnoteでも書きましたが、「音楽療法」や「園芸療法」というような「○○療法」という言葉には、

・「音楽」を使って何か良い効果を与える(音楽療法)

・「園芸」を使って何か良い効果を与える(園芸療法)

というようなイメージがあると思います.

ただ、そのようなイメージで考えると、

【作業】=【人が生活で行う全ての行為】

である【作業療法】は何に焦点を当てるものなのかちょっとわかりにくいですよね.


確かに【作業】は【人が生活で行う全ての行為】であり、私たち作業療法士はまさしく人の生活全てに関わる専門家です.

しかし、毎回の対象者に【生活で行う全ての行為】に対して支援するわけではありません.

私たち作業療法士がいう【作業】には、

「人が行う全ての行為の中でも、特にその人の人生や生活にとって何らかの価値があるもの」

という意味も含まれています.

もちろん1人の方の生活が全て良くなるように1日何時間もかけて支援する事ができればそれが良いのですが、現在の制度では一般的な作業療法士にはなかなか難しいのです.


それではどうするかというと、

「その人のどこを支援するとこれからの人生が過ごしやすくなったり、楽しいものになるのか」

ということを基準にします.


私たちは日常何気なく生活しているのであまり意識していませんが、多くの人は【何か】をすることで

 人生に張りがでたり...

 楽しかったり...

 生きていてよかったなって思えたり...

していると思います.そりゃいいことばっかりじゃないでしょうが、何一つ楽しめることの無い人生を送っている人は少ないと思います.もちろんその【何か】は一つとは限りませんし、ほんの些細なことが人生の支えになっていることだってあると思います.


私たち作業療法士は

その本来誰もがもっていなければならないはずの人生を楽しめる【何か】を

【作業】と呼んでいます.

そして、

【どんな人であっても、人生を楽しめるように】

支援する職業なんです.


急に壮大な話になってきましたかもしれませんが、実際に2018年の新しい作業療法の定義は

「作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である.作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.」

となり、障害のあるなしや医療だけを用いる、手作業や工芸などをする、という言葉も入らなくなっています.


つまり、リハビリテーションの本来の考え方

・他の機能を使って出来るようにする
・違うやり方で出来るようにする
・道具を使う
・周りの環境を変える
・周りの人の助けを借りる

などを通して

【病気や障害を負った場合でも,その人がやりたいことができる】

【病気や障害を負った場合でも,その人が送りたい人生を送ることができる】

ように支援する、ということです。


また

対象になった人が、そのやりたいことをもう一度できるようになりたいと思えることや人生を楽しもうと思えるための手助けをする

ということも含まれます.

簡単に言うと

「より良い人生のためにどうすればいいのか」

について、共に考え、支援する専門家なんです.


実際に

元通りになることが難しい障害を負ってしまった方は、なかなか現実を受け入れることが出来ず、元通りにするためのリハビリを続けている、ということがあります.

しかし、本当に必要なのは身体が元通りに戻ることよりも、元々の生活でしていたことが出来るようになることだと思います(もちろん身体が元通りになればそれが最善ですがそうならないことも現実には起こっているからです).

そこで、元通りの状態に戻れるようになるのかどうか、どこまで改善するのか、を見極め、どんな生活を目指すことがいいのかということに本人が目を向けられるように、身体的な機能や病気や障害、脳の機能や精神面、家族や社会環境、など総合的な部分も含めて、支援するのが作業療法士の役割です.

そうすると、

・1人でトイレに行けるようになる
・お風呂の床から立ち上がりやすくなる
・杖なしで歩けるようになる
・娘さんの誕生日にケーキを作れるようになる
・畑作業が出来るようになる
・旅行に行けるようになる
・家族の人が楽に介護を出来るようになる
・ベッド上で寝返りできるようになる
・学校や先生にどうやったら授業に取り組みやすくなるか伝える
・復職のためのメモの活用法を伝える
・部屋の間取りを変える

などなど、身体的なことから精神面、住宅環境から家族のことまで本当にいろんなことをします.

そして、これらは全て課題を解決すること自体が目的ではなくて、それがその人の今後にとって大きな意味をもつものになっている、ということが作業療法士の役割になります.


どうですか?

伝わりましたでしょうか?


もし、興味を持った方がいたら、ぜひ作業療法士の世界に飛び込んでほしいと思います.

お前、そんなんじゃ何言ってるかわかんねーよ!って方もぜひご意見下さい.


そして、興味は持たなかった方も、作業療法士っていう職業があるんだということだけでも覚えてもらえたら嬉しいです.


いつか、

これを読んで作業療法士を目指しました!

って人に会えたらいいなとこっそり思ってます.

ありがとうございます! 少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです.