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量より質

「本の選び方がわからなくて」
 え、どういうこと?

 なぜこの本を購入したのか記憶にないのだが、買ったまま置き去りにしていた本がある。ここしばらく、会社でお昼ごはんを食べたあとに読んでいる。
 数日前、向かいの席に座った人から「なに読んでるんですか?」と尋ねられた。
「こういう人、こういう経験をしたときに読むといいかもねーって本を紹介してる本です」
 なんとも雑な紹介の仕方をしたもんだ。
 まあとにかく、本を紹介する本である。副題に「女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド」(ブックガイドは太字で波線付き)とあるので、私の説明は間違ってないはず。
 とにかくめちゃおもしろい、本を紹介する本だ。

 「ナナメ上から」とあるのを知り、やはり私はナナメってるんだなぁと納得。著者のものの見方や考え方、話の展開が、自分とよく似ている。

 多数派が、自分たちが多数派であるというだけで「こちら側が”正常”」という顔をし、少数派に対してデリカシーのない質問をする光景は私たちにも既視感があるだろう。
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~発狂していても、世界でそれが正しいとされているならば、人は自分が発狂していることに気づくことすらない。

(「その普通の本能、世界が変われば「異常」に転じる」より)
~本当に「ただ愛してる」だけならば、それはなぜ、結婚という形をとったのだろうか。
「ただ愛してるだけなので、婚姻届を出さず同棲し続ける」「ただ愛してるだけなので、恋人関係を続ける」というのでも、別に日本語としておかしくはない。
「愛」と「結婚」はもともと、接続関係にない。
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 私たちが<あたりまえ>だと思っているそれは、誰かの都合によって作り出された、まったく<あたりまえ>なんかではないことかもしれない。

(「私たちが結婚したい本当の理由は『不定形な関係』への耐えがたさ」より)

 けっこう納得できたり、共感できたりする点が多く、自分の思考をより深めたいからと、書かれている本を読みたくなった。実際、書かれてあったものを1冊購入した。(「神さまを待っている」畑野智美 ← 読了)

「へー、タナカさんはどうしてこの本を買ったんですか?」
「さぁ、なんで買ったのか記憶になくて。読んでみても、なぜだか思い出せないという」
「普段はどうやって本を選んでますか?」
「本屋さんで気になるタイトルとか表紙のものを手にとって、中をぱら読みして、文体が気に入ったら買う。とか」
「へぇ、そうなんですね」
「そういうもんじゃないですか?」
「私、本の選び方がわからなくて」
「へ?」

 彼女によると、本の選び方がわからず、手元にある数少ない本をずっとループで読んでいるんだそう。
「繰り返し読めるってことは、毎回新しい発見があるんですね」
と言ったら否定された。
「いや、本当に本を選べないから、本を読みたいってなったら手元にあるものを読むしかないって感じです」
 私も昔からの数冊を繰り返し読んでいるけれど、新しい本も年に20~30冊くらいは買う。新しい知識を得たかったり、気になる疑問を解決したかったり、単純に知らないことを知りたかったり。この家に住んで1年半、たぶん50冊以上買った。引っ越し、困る…。

 金曜日、仲よしの古本屋カフェ(定休日)にお邪魔して作業していたのだが、置いてある本をあれもこれも見て回った。引っかかる本を数冊見つけ、来月のお給料日まで残っていたら買おうかなと脳みそにメモをとる。
 私が本を読むのは、読みたいから。
 同じ本でもかまわない。でも、ときに新しいものと出会いたくなる。そのとき興味のある事柄に関連した本を見つけると欲しくなる。
 最近、ライターとして苦手としている構成を身につけるため、編集の本を数冊購入。来月出版される3000円の本も予約した。お金……。でもプロであるなら、能力を向上させる努力は必要だもん。
 心理学や人間に関する本は昔から買うことが多い。建築家や建築についてのものもよく買う。写真集も、今は数冊しか手元にないが、実家を出るまでは50冊以上あった。料理の本も同じくらいあったのを5冊に減らし、今また20冊くらいまで増えた。ああ、捨てた本をもう一度買ってたりする。なんという無駄。
 哲学、ノンフィクション、エッセイ、そして少しの小説。今はマンガを除いても70~80冊くらいある。引っ越しに備えて、持ちものは少なくしておかねばならんというに。

 子どもの頃から本は身近にあった。絵本から始まり、少年少女文学全集、アルセーヌ・ルパン、シャーロック・ホームズ、ふたりのイーダ、灰谷健次郎、赤川次郎、北杜夫、星新一、レイモンド・チャンドラー、ロバート・P・パーカー、沢木耕太郎、死体は語る、BCな話、藤原伊織、吉田修一、伊坂幸太郎、嬉野雅道、小倉ヒラク。
 まだまだ読んでない本はたくさんあって、読みたい本もたくさんある。でも、たくさん読むことを目指してはない。
 気に入る本を見つけ、最初から最後まで味わいたい。

 どうやって選んだってかまわない。読んだあとに、捨てずにおこうと思える本と出会えたらそれでいい。
 ある意味、選び方がわからなくても、ずっと手元に残したいと思える本と出会えた彼女は幸せなだと思うな。




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