Published 6:55 am
Photo｜Shintaro Tanaka｜Industry City, Brooklyn｜2022.04.09
掲載｜ニューヨーク情報共有

◇エリックのコミックと、リンチのインランドエンパイア

ブルックリン・サンセットパークのインダストリーシティでBrooklyn Independent Comic Showcaseが行われ、友人のエリックが自身が原作を手掛けるコミックを売っていました。普段はバーテンダーとして知っている彼が、コミックの原作を手掛けてるなんて、この催しに出ると先週聞いたときに初めて知りました。

ちなみにイベントはSt. Marks Comicsの主催です。老舗のコミック専門店で、かつては名前の通りイーストビレッジにありました。以前取材したことがありますが、ファンにとってはお宝満載かつ居心地のいい店でした。家賃の高騰、市場の変化などの理由で2019年2月に閉店を発表したときにはかなりガッカリしました。その後、コミックの作家たちやコミュニティーの後押しもあって、昨年7月にインダストリーシティで再開しています。

さて、エリックのことですが、先週聞いたところでは、昔から話を作るのもコミックも好きでしたが、コミックの制作は3年ぐらい前から始めたとのこと。クラウドファンディングでお金を集めて、すでに2作品を世に出しています。

今回販売していたコミック（第1作目）は、SiFi、現代ドラマ、ゾンビもの、中世ものなど幅広いジャンルの８話からなる短編集。原作はエリックで、絵を描くアーティスト、色をつけるカラーリスト、吹き出しの文字を描くレタラー（そんな役割があるのを初めて知りました）は雇ってこの一冊を作り上げたそうです。

なんというか、話の内容、クオリティーはもちろん、本自体の質もすごくちゃんとしている。こんなにすごいの？って思いました。なによりも、最近始めたばかりで、これだけのものを形にしてしまう実行力はあっぱれだと思いました。

いくつかの仕事や趣味をシームレスに行き来している友人が自分の周りには多くいます。みんな、共通して持っているのは、やりたいと思ったら、すぐに実行してやってしまう瞬発的な行動力、既成概念にとらわれないやわらか頭を持っていること。そして人をうまく巻き込みながら、それを形にしてしまうのも共通する要素です。

映像関係の仕事をしている友人は、仕事とは別に、ユーチューブのウェブドラマシリーズを作りはじめて、世界の映画祭にどんどん入選しているし、音楽家の友人は、まったく畑違い（ものづくりという意味では共通しているけども）のアニメ制作に興味を持って、日本にいる友人たちと一緒にストーリーや絵を作っているそうです。先日出席した「ニューヨークエンタメの会」でお会いした皆さんも、どんどんいろいろなことを実現していて、お話しを聞いて刺激になりました。

昨日、すごく久しぶりに1日休みだったので、IFCで上映していた、デビッド・リンチ監督の「インランドエンパイア」を観に行ってきました。難解だといわれるリンチ作品の中でも、意味が分からない度ではトップクラスの同作。その解釈はともかく、僕がリンチ監督を好きなのは、作りたいもの、撮りたい画、思い付きを次々に映像にしているということ。まさに、やりたいことを実行に移している人の代表格ともいえる人かもしれないと思います。

自分のやりたいことをやるって、簡単なようで難しく、難しいようで簡単。ついつい考えすぎて行動力が鈍る自分にとっては、エリックのコミックも、リンチのインランドエンパイアもいい刺激になりました。

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