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台湾ひとり研究室:台所編「義母ごはんレシピ:蚵仔大腸麵線(牡蠣とモツ入り煮麺)」

台北の若者が集う西門町に、麺線を専門に出す老舗がある。最近はめっきり行かなくなったけれど、コロナ前は連日行列ができる人気店。聞けば、この界隈は気軽に食事のできるお店が多くないから、西門で何かを食べるとなると皆がこぞってそこへ行くという。店員さんがおたまでザクッとすくって入れるひと椀は、なんとも手際がよく、並んでいる間も見飽きない。味はというとさすが人気店だけあっておいしい。ただし、個人的には完全なる手前味噌だと大いに自覚した上で、義母のほうが断然においしいよ、と行くたびに思ってしまう。

麺線とは、要するに煮麺のこと。温かい汁に入った細麺で、例の人気店も義母もスープには鰹節を使っている。日本のそうめんの麺は白いけれど、人気店も義母も「紅麺線」と呼ばれる赤みがかった麺を使っている。ただ、台湾にも白い麺はある。大哥の友達が連れて行ってくれた、北港の老舗の麺は白い麺を使ったひと碗。大好きなTKGを思わせる組み合わせで、個人的な台湾ごはんのランキング上位にのぼるヒット作だった。

ところで、義母が麺線を作るたびに言うセリフがある。曰く「外で食べると、ひと椀 70 元するでしょ? しかも大腸しか入ってない。うちで作ると、いろーんなものが入ってひと鍋 600 元よ。それで何杯食べられる? やっすいんだから!」。店舗の家賃や人件費といった厳密な原価計算を度外視した話ではあるのだけれど、なんとなく、そうか、と納得してしまう。

もう一つ。曰く「この鍋にはね、肉類も魚類も野菜も炭水化物もぜーんぶある。だから1食分の栄養価としてはこれで十分よ」…中年期のど真ん中をゆくヨメ的には野菜がもっとあってもいいと思うけど、それはナイショ。

義母がこれを作ると、お相伴にやってくる人がいる。以前は義弟の友人で、残り分は持って帰ってくれるから、鍋は毎度、空っぽになっていた。2 日目のほうがおいしいんだそうな。その友人が結婚して子どもができ、最近は少しばかり残るようになったなあ、と思っていたら、入れ替わりのようにして、今度は大哥のいとこたちが集まるようになった。義母の繰り出す「おいしい」というカードは偉大だな、とつくづく思う。

材料 寸胴鍋ひと鍋分
〈出汁〉
-水   ひと鍋分
-玉ねぎ 1〜2 個
-排骨  300g
-鰹節粉 適宜

〈麺線〉
-麺線 1袋。店によって違う。試しに市場で買ったら 350g あった。
-牡蠣 900g
-大腸 600g
-肉羹 300g
-エノキダケ 1 袋
-オイスターソース 大さじ2
-紅蔥酥(フライドエシャロット) 適宜
-蒜頭酥(ガーリックチップ) 適宜

〈たれとトッピング〉
このあたりはお好みで。ちなみに義実家では以下が出てきます。
-香菜
-刻みニンニクの入った醬油膏
-辣椒
-胡椒。ちなみに白。

作り方
ざっくり言えば、スープに材料を順次入れていくだけ。前後はあるようでなさそうだが、牡蠣を加えるのは工程の最後のほう。

1 皮をむいた玉ねぎと排骨を鍋に入れ、ベースになるスープを作る。

2 麺線を水洗いし、塩気を取っておく。この処理をするかどうかは、麺線をそのまま食べてみて判断する。

3 1 に 2 を入れる。

4 大腸の下処理。半分に切って内側の脂身を削り取り、5mm幅に切って 3 に加える。店によって獣臭がするのは、この脂身が原因にある。このひと手間で味がガラリと変わる、らしい。

5 オイスターソースを加える。入れると味に深みが増す。あっさり好きなら入れなくてもOK。

6 エノキの石づきを切り落とし、半分に切って、ほぐしながら鍋に加える。

7 牡蠣の下処理。水洗いして、汚れを落とす。80度くらいに沸いたお湯に入れて、1分ほど待つ。牡蠣がぷっくりした感触になり、写真中央のようにヒダが縮れてきたら、お湯から上げて鍋に加える。

8 肉羹、紅蔥酥、蒜頭酥を加える。順不同。

9 ひと煮立ちしたら完成。

10 器に盛り、たれをかけ、刻んだ香菜をのせていただく。


日本で作るならこうアレンジ
・ そうめんと具材の入ったスープは別鍋で進行させ、最後に合体。
・ 牡蠣はできるだけ小ぶりの、加熱用を。
・ 肉羹は肉団子やさつま揚げで代用する。

勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15