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台湾ひとり研究室:映像編「中国語で歴史ドラマを楽しむコツ」

ドラマのジャンルには、ラブコメ、刑事物、ヒューマン、サスペンス、アクションなど、いろいろある。言語学習の初級者に最も取っ付きやすく、また題材的にも適しているのは、やはりラブコメかヒューマン系だろう。中国語学習という点からみれば、最近ではそれ以外の題材も結構増えてきている。それは歴史物だ。私自身、ラブコメに始まり、かなりのドラマを中国語で見てきた。個人的な興味から、中国歴史ドラマにも挑戦し、割と数多く見てきている。それがいつの間にか仕事になったりするのだから、人生とはわからないものだ。

さて今回は、中国語学習者がどんなとっかかりで歴史ドラマを観ればよいかについて、考えたことをまとめておく。

例として取り上げるのは《步步驚心》。日本語版では『宮廷女官・若曦(ジャクギ)』という。現代の女性が、ひょんなことから清朝の時代にタイムスリップし、皇帝の後継争いに大きくかかわる人物として生きていくお話。中国では2011年に放送され、その後、中華圏でも大ヒットを飛ばした。日本語版ももちろんいいが、中国語の学習には簡体字版か繁体字版とセットで観るのがおすすめだ。 

背景を押さえる

歴史物のドラマに必要なのは、やはり背景を理解すること。これがないと、発言の意味がまず理解できない。《步步驚心》でいえば、皇帝の後継争いであること、皇子内で派閥が存在すること、その派には誰がどういう立ち位置でいるのかを押さえておこう。たとえば対話のシーンで話題になっていることがなんのことなのか、あるいは言外に含まれている意味の理解につながる。ドラマの公式サイトは初心者向けに書かれているので、要チェックだ。

次にチェックしたいのは、Wikipediaだろう。たとえば康煕帝の項を見ると、どういう皇帝だったのか、またモンゴル王侯と狩りをするのは年間行事として定着していたことなどが記されている。特に《步步驚心》との関連でいえば、国内政策の最後の部分で記される内容を読むだけでも大きなヒントになる。

さらに、少し中国語が理解できるようなら、中国語版のWikipediaを見てみよう。九子奪嫡の項では、まさに《步步驚心》の舞台背景が書かれている。こうした背景知識があるとないとでは、やはりストーリーやその他の見え方が違う。これらがつかめたら、ドラマの理解もずっと深まるだろう。

日本語字幕版を活用する

超級者ならともかく、中国語だけで中国の歴史ドラマに太刀打ちするのはなかなか難しい。どうしてもわからない表現が出てくるだろう。おすすめしたいのは、日本語版と中国語版の両方、同じシーンを観ること。それで、自分が理解できていなかったのはどこだったのか、どの表現に引っかかっていて筋が見えなくなったのかなどがわかる。これを重ねていくと、確実に力になる。

歴史ドラマの表現を知る

日本の時代劇にも独特の表現が存在するように、中国語の歴史ドラマにもさまざまな表現が出てくる。「奴才告退」「喳」といった表現は、現代ドラマではまずお目にかかれない。さらに、なぜ「公公」という言い方をしているのか、彼らがどういう役割を担っているのかにも、また深い理由がある。

言語表現のほかにも、壮大なセット、宮廷の様子、それぞれの衣装、髪型、動作、お茶の飲み方などなど、ドラマならではのオモシロさがある。このあたりは実際に見て楽しんでほしい。

《步步驚心》は、装いは歴史ドラマだが、軸になるのはラブ&ヒューマンだ。中国語の力でいえば、おそらく中級後半レベルくらいから中文字幕版に挑戦できる。なかなか手強いけれど、中国の歴史のオモシロさ、奥深さがわかる作品なので、辞書を引き引き、わからないことは誰かに確認しながら観てみてほしい。

勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15