見出し画像

【都市とアニメ】都市開発の違いから見る『メトロポリス』と『パトレイバー2 the Movie』

11月中旬に寒さからの体調不良ゆえ、予定より少し遅れてコラム掲載を。

石川県金沢市の金沢建築館にて、アニメの背景美術に特化した企画展「アニメ背景美術に描かれた都市展」が11月19日(日)まで開催されている。
そして11月18日(土)に金沢21世紀美術館にて映画上映会「21世紀を予見したアニメ」が開催される。
これは各々のイベントを楽しむ見方を提案するコラムであり、
映画上映される『メトロポリス』(2001年公開)、『パトレイバー2 the Movie』(1993年公開)の2作品に注目して都市視点からの一例を説明する。

展示・イベント | 谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館

金沢21世紀美術館にて映画上映会「21世紀を予見したアニメ」


1.ジオフロントシティとウォーターフロントシティという区分

『メトロポリス』は「ジオフロントシティ」、『パトレイバー2 the Movie』は「ウォーターフロントシティ」として都市計画区分ができる。

両方とも都市計画用語であり、日常では聞き馴染みのない言葉である。
ジオフロントシティは地下開発都市、ウォーターフロントシティは水上・水辺開発都市と定義されている。

『メトロポリス』は高層ビル群のイメージが強く、ジオフロントシティと呼ぶことに違和感を覚える方もいるかもしれない。高層ビル群に注目されがちであるが、本作は高層ビル群の地上世界と地下世界の2つによって形成されており、都市の根底にある部分は地下である。
よって、本作はジオラマフロントシティの一例といえる。

2.ジオフロントシティとして見る『メトロポリス』

『メトロポリス』(2001年公開)は、いつとも知れない未来、超高層ビル群が立ち並ぶ地上部層とエネルギープラント・スラム街が広がる地下部で構成される巨大都市が舞台となっている。
地上層に上流階級、地下層に下流階級やロボットが居住し、各々が対立している物語である。

日本においてジオフロントシティは現実の実例がなく、遠い未来の技術または架空の技術により成立するものとして、アニメなどの架空世界として多く見受けられる。
本作は、遠い未来の架空都市としてジオフロントシティを描いた作品だ。

ジオフロントシティの利点は自然災害の影響を受けにくいと言われている。天候・気候に左右されないこと、地下の強固な岩盤により地震に対しても有利なことがその強みである。

ただ本作では、自然災害の影響を受けにくいプラス面が一転し、下流階級やロボットが年中労働させられる環境が整備されたマイナス面として浮き上がる。未来技術が「怖さ」として目立つ設定になっていると考えられる。

3.ウォーターフロントとして見る『パトレイバー2 the Movie』

『パトレイバー2 the Movie』(1993年公開)は、2002年冬の東京および東京湾周辺が舞台となっている。
日常の中、突如として戦闘機のミサイル攻撃により横浜ベイブリッジが崩壊。その後、続発する事件から東京が「戦場」へと変貌していく物語である。

現実にある「東京アクアライン」着工(1987年)を機にはじまった東京湾開発をベースに、本作は10年先の近未来の架空都市としてウォーターフロントシティを描いた作品だ。

ウォーターフロントシティは、活動しにくい水面や海上を整備することで土地利用価値が上がることに利点がある。ただし、都市成立には橋梁や鉄道などの高質なインフラが必要不可欠であり、二つで一つの関係性である。

本作では、序盤からウォーターフロントシティの要である橋梁(横浜ベイブリッジ)が崩壊、生活を脅かし日常の平穏が一転する。
都市壊滅への一手として「怖さ」が目立つ設定になっていると考えられる。

4.都市という舞台装置

2作品について都市区分から解説した。ジオフロントシティとウォーターフロントシティと各々が違う都市ではあるものの、ここから共通点が浮かび上がる。

『メトロポリス』ではジオフロントシティの利点ゆえの「怖さ」、『パトレイバー2 the Movie』ではウォーターフロントシティの利点が無くなることでの「怖さ」として、それぞれの都市機能の利点を軸に物語のディテール(詳細)が伝わってくる。
視聴者に対し「不安」を煽る舞台装置として、都市背景が機能していると考えられる。

都市とアニメ考察の1つではあるが、往年の名作の見方の違う一面を紹介した。既知の作品群が、都市背景に視点を向けることで知らない一面を見ることが出来ると考える。

週末のあと二日ではあるが、「アニメ背景美術に描かれた都市」やアニメ上映会を見て、人それぞれに意外な一面に出会えれば、紹介した筆者としても嬉しい。
現地へ行けない方は、この記事を元に「都市とアニメ」の繋がりは面白そうだぞと知ってもらえれば幸いである。

【イベント情報】今週末のご案内

展示されているアニメ背景美術に描かれた都市の展示は日本では今回がはじめての試みとのこと。
石川県「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」が最初の試みであり、国内での今後の予定は決まっていない。数少ない体験になるかもしれないので、僅かな期間ではあるが、11月19日までの会期中に訪れることをオススメする。

展覧会の概要・休館情報などは下記公式サイトにてご参照いただきたい。
展覧会の概要については以下に。
会期は11月19日までと週末で終了する。

【公式HP】谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館 企画展「アニメ背景美術に描かれた都市」 

展示・イベント | 谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館

明日開催のアニメ上映会イベントも紹介。
金沢21世紀美術館にて映画上映会「21世紀を予見したアニメ」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?