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著作権その1 「うたってみた」

タイトル画像は著作権学習サイト「JASRAC PARK」より引用

JASRACとは

 オつかリさまです
法曹関係の方ですら「人類には早すぎる(法律)」と恐れる著作権。
法律について知るには「条文を読め」が基本ですが、著作権は下手に条文を読むと間違えて理解してしまうトラップがそこら中にあります。
 最近では特に画像生成AIに関して「法律が時代についていけていない」と批判を受けることも多くなってオリますが、決してそんなことはありません。
AIに関しては2018年に著作権法が改正され、著作権法30条の4によってAIの著作権利用(学習)について世界に先駆けてルールが定められてオリます。

 では、今回はまず音楽(楽曲)関係の著作権について解説していきます。
日本三大批判されやすい団体の中でもおそらくトップクラスであるJASRAC。(あと2つはJAとNHK)
 JASRACは正式には日本音楽著作権協会(にほんおんがくちょさくけんきょうかい、英語: JApanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers)という名称の一般社団法人です。
 法人格が一般社団法人ですので一銭たりとも利益を出すことは許されず、徴収したさまざまな著作権利用料は「全額」権利者に配分されています。
(年間の収入予測に従って権利者(音楽作家)に分配する著作権使用料(率)を決定しますが、うっかり「儲けて」しまった時は権利者に追加配分します)
そして分配した著作権使用料の中から使用形態に応じた手数料を権利者がJASRACに支払います。
それがJASRACの「売上」で、料率は平均で分配額の11%程度です。
 もともと日本の音楽著作権管理団体はJASRACのみだったのですが、紆余曲折を経て現在は株式会社NexToneが設立されて2団体競合となってオリます。
ちなみにNexToneは上場企業ですので、著作権管理の業務(つまり徴収した著作権使用料の中)から利益を上げることが事業の目的です。

著作権を管理する手法


 音楽作家(作詞家・作曲家)は自らが所有する著作物の著作権に関して、管理する手法を選ぶことが出来ます。
※著作権は所有権(土地所有)などと同じく譲渡(販売)することが出来る権利なので、音楽作家ではなく法人(レコード会社など)が所有している場合も多いです
 管理手法の一つ目は「自ら管理する」。
メリットは管理団体に委託(信託)した場合に比べ、配分された著作権使用料の中から管理団体に支払う手数料(平均11%程度)が必要ないことです。
 デメリットは使用の契約や使用料の徴収を全て自ら行う必要があることで、JASRAC管理曲であれば地球の裏側のライブハウスで演奏された楽曲の使用料も徴収して勝手に自分の口座に振り込んできてくれますが、自己管理であれば当地の言語で交渉・契約して海外送金してもらうことになります。
使用者(ライブハウスのオーナーなど)が使用報告を「わざわざ」当人までしてくれなければ使用されたことを把握することも難しいでしょう。
これは国内での使用も基本的には同じです。
カラオケやサブスク等での配信利用なども一つ一つ、自分で交渉・契約することになります。
 もう1つはJASRAC・NexToneに楽曲の著作権を預けて、管理してもらう手法です。
使用者との個別の契約・使用料の徴収などは全てJASRACが行い、権利所有者は自分の著作権が利用された使用料の配分が振り込まれるのを待つのみ。
例え年間の著作権使用料が「1円」であっても振り込まれます。
もちろん細かい使用明細(最近まで紙ベースで「巻物」と呼ばれていたようです)も送られてきます。
※JASRACと権利者の間に結ばれている契約は「信託契約」と言い、契約中は著作権はJASRACに移転され、JASRACは代理人ではなく「権利者本人」として利用者との契約や権利侵害者への対処(訴訟等)を行います。
 頑なに自己管理や事務所管理される音楽作家もいらっしゃいますが、よほど小規模(自分が知っているライブハウスでの演奏程度まで)の利用でなければ管理団体に任せた方が受け取る使用料は大きくなると思います。

「歌ってみた」を公開したい

 ここまでが著作権管理の説明ですが、ここからは「利用者」としての著作権の利用法を説明していきます。
歌ってみた(演奏してみた)
 楽曲を歌った動画(音声)をネット上で公開する場合ですね。
これ、むちゃくちゃ簡単な場合があります。
条件にあてはまれば何もしなくていいんです。
その条件は「JASRAC・NexToneなど著作権管理団体の管理楽曲であること
公開する場所が管理団体と契約しているSNS等であること」 
 の2点のみです。
管理楽曲であるかどうかはJASRACなら検索システム「J-WID」、NexToneであればこちらの検索画面から検索出来ます。
歌ってみたい楽曲がどちらかの団体の管理局であれば、アップしたいSNSが管理団体と包括契約しているかどうかを調べます。
JASRACであればYouTube・TikTok・ニコニコ動画などとは包括契約を結んでオリますので、当該SNSであれば無申告でアップ出来ます。
ちなみにJASRACが包括契約を結んでいるSNS等のUGCサービス一覧です。
NexToneはこちら
UGCとはUser-Generated Contentsであり、ユーザーが生成したコンテンツのことで動画や音声を指します。
SNSやブログなど、コンテンツを公開出来るサービスがUGCサービスです
 JASRACと包括契約を結んでいるUGCサービスは動画製作者に代わってサービス側がJASRACにまとめて使用料を支払ってオリますので、アップロードする時に個別に許諾を得る必要はありません。
ただし、JASRACと契約を結んでいないX(Twitter)では楽曲や歌詞をアップするにはJASRACの個別の許諾契約が必要となります
 Twitterなど契約を結んでいないサービス上に「うたってみた(歌唱・演奏動画)」や「テキストによる歌詞そのもの(の一部)」を公開するには2つ方法があります。
 まず一つ目はYouTubeなどJASRACと契約を結んでいるサービス上に公開して、Twitterからそのリンクを貼ること。
リンクを貼る行為やリツイートは著作権を侵害しませんので問題ありません。
 もう一つは個別にJASRAC(JASRACと契約していない楽曲であれば権利者本人)から許諾を契約によって得ることです。
JASRACの場合は簡単な手続きで契約することが出来ます
非商用使用の場合は使用料も低額です。
こちらのnote「JASRACさんに聞いてみたよ!」もとても分かりやすいのでご参考まで。
 なお、JASRACは音源(原盤権)を管理していません。
原盤権は演奏者・レコード会社などが所持・管理しているので、YouTubeなどでもCDやカラオケに合わせて歌ったもの(他者の演奏が入っているもの)は違法になる可能性が高いです。
※最近はVtuberとカラオケ大手のコラボも増えているので、音源の利用が特別に許可されている場合もあるようです。
 YouTuberが取材の時に店のBGMに神経質になるのはこのためです。
JASRACとの包括契約によって楽曲自体の著作権はクリアされてますが、演奏者の権利である原盤権は個々の権利者の許諾が必要になります。
※法的にはBGMなどは「写り込み」と言って条件を満たせば著作権が及ばなくなるので許諾を得る必要はないのですが、YouTubeなどでは機械的に著作権侵害とみなされて収益剥奪などのペナルティを課されることがあるので皆さん出来るだけ避けておられるようです。
※YouTubeのジャッジはよく問題視されますが、実際法律に従っていないと思われる事例も多いです。
YouTubeでアウトだったから」法的に問題があるとは必ずしも言えません。
ご注意ください。

店内で歌の練習・街角ピアノ・甲子園のブラバン

 さて、ネットなどにアップせずに歌う・演奏する行為は著作権の支分権の一つ「演奏権」が関わってきます。
演奏権は著作物を無断で「公に」演奏されない権利です。
では「街角ピアノ」などは何故著作権侵害とみなされないのか?
実は演奏権は以下の条件を全て満たした場合、著作権利用の例外として許諾が必要ない(つまり無断・無料で演奏出来る)と著作憲法に定められてオリます。
・営利目的でないこと
・聴衆または観衆から料金を徴収しないこと
・実演家に報酬が支払われないこと

 つまり甲子園のブラバンや路上ライブなどは許諾なく著作物を利用出来るということになります。
※いわゆる弾き語り・投げ銭は理屈としては「報酬」にあたると考えることも出来ますが、JASRACとしては明確な見解は出されてオリません(つまり黙認と考えることも出来ます)。
 店舗などで合唱や演奏をすることも、それが「生演奏」をうたったレストランであれば実演家が無報酬であっても「(店による)料金の徴収」にあたり、許諾が必要になる可能が高いです。
それと違って、店舗などを「場所」として利用して歌の練習をする場合などは許諾は必要ないと考えられます。

 繰り返しますが、著作権は法律の研究家や専門家ですら「人類には早すぎる」と言うくらい難しい法律です。
ただ一般に言われる「著作権侵害じゃないか」の半分くらいは問題がないと考えられるものが多いです。
特にイラストなどは「パクリ」と炎上するものの9割以上は全く問題がないと思います。
 画像生成AIによる画像の学習についても特に絵を描かれる方から抵抗が強いですが、これはわざわざ「AIによる学習」が著作権侵害にあたらないように新たに法律も定めてオリ、法的には問題がないとされてオリます。
※「法的に問題がない」はニアリーイコールで「問題がない」です。
マナーやモラルは「ローカルルール」ですので他者に押しつけないようにしましょう
 

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